第13話、セガバンダイができかけフロリダに行き英語版エヴァのビデオを買う

【平成9年(1997年)1月の巻・上】


 覚えているでしょうか。セガバンダイという会社が誕生していたかもしれないということを。家庭用ゲーム機の「メガドライブ(ジェネシス)」やさまざまな業務用ゲーム機を引っさげ、世界を席巻して任天堂にまけないゲーム企業として知られたセガ・エンタープライゼスと、「ウルトラマン」「美少女戦士セーラームーン」「機動戦士ガンダム」といった作品の玩具を一手に取り扱い、業界でも飛び抜けた存在になっていた玩具メーカーのバンダイが合併する、という話が、平成9年(1997年)1月23日に飛び出しました。


 ゲームという最先端のテクノロジーを持ったセガと、多彩なキャラクターを動かしているバンダイが合併すれば鬼に金棒、あのディズニーとだって戦っていける企業になるんじゃないかといった評が、当時の報道には漂っていました。それこそ日本のディズニーになるといった声も聞こえてきましたが、個人的にはそうした雰囲気に対して懐疑的だったようです。


 「新聞に目を通して読んでいくと、バンダイのことをキャラクターをたくさん保有した企業とかいった認識にぶち当たって悩む。『ウルトラマン』にしたって『セーラームーン』にしたって、バンダイが持っているのは版権とゆーか商品化権みたいなものであって、絶対にキャラクターそのものじゃないと思う」。


 そして、「合併したからといって、そう簡単にいろいろなキャラクター商品を作って売り出すなんてことも、元の著作権者抜きには語れない話であって、そのあたりを突き詰めずに(自分だって突き詰めてないけど)、『バンダイのキャラクターがセガの技術を結び付くからすっげー製品が出来るぞ』なんて結論を、安易に導き出して今回の合併劇を『大競争時代の始まり』なんて持ち上げないで欲しい。しかし1日開けても結論の見えない合併劇って、やっぱり無理筋、なんじゃない」と言っています。なかなか手厳しいです。


 結論から言えば無理筋でした。それは、セガという会社の持つ風土が、長く玩具業界で商売をして来たバンダイの企業風土と合いそうにないといった不安が渦巻き、反対の声がバンダイの中に起こって揉めに揉めた挙げ句、5月27日に合併解消が発表されてセガバンダイ誕生の可能性は消え去りました。


 ただ、あくまでも社風の問題であって、両社が持っていた特色が合併によってうまく融合し、シナジーを生み出していたら現在のゲーム業界地図、エンターテインメント業界地図はどうなっていたでしょう。やはり想像してみたくなります。日本のディズニーになれたのでしょうか。ウェブ日記では当時、以下のように考えていたようです。


 「彼らが合併によって近づいたと標榜したディズニーは、決して『夢』の『流通事業者』ではない。彼らはまさしく『夢のクリエーター』だった」「101匹わんちゃんとプーさんとダンボとそしてミッキーマウスにドナルドダック。ほかにも星の数ほどのキャラクター資産がディズニーにはあり、未だ圧倒的な人気で世界中の子供と元子供の上に君臨している。セガに何がある? それからバンダイに?」


 それぞれの企業に夢を生み出す力がなかった訳ではありません。セガにはソニックがいて『サクラ大戦』もありました。「バンダイのグループにはキャラクターを生み出す能力を持った映像会社や音楽会社がある」とも書いてあります。ただやはり、次々と新しいキャラクターを生み出しては長い歴史をかけて浸透し、そしてなお新しいキャラクターを生み出し続けているディズニーに比べて、セガのキャラクターは数が少なく、バンダイも人気キャラクターを商品化することがメインで、創造とは一線を画していました。


 あと、「今回の合併が、お互いの失敗を塗固せんがための無定見なものではなく、お互いの潜在力をお互いに引き出しあって、ディズニーが目指した『夢』を生み出す『ワールド』(決して『ファクトリー』などではない。ましてや『ブローカー』などでも)を、この日本に作って欲しい」と書いたように、前向きというよりはどことなく後ろ向きでの合併模索だったことも、懐疑に拍車をかけました。


 結果として合併がご破算となり、バンダイはナムコとの合併を選び、コンテンツ力と技術力を融合させて大きく発展していきました。現在、新しい自前のIPを創造しようとしてプロジェクトを立ち上げつつ、ガンダムを始めとした自前のIPを発展させようとしています。日本のディズニーに近づいていると言えるかもしれません。


 そしてセガは、家庭用ゲーム機から撤退し、サミーと合併して存在感を残す方へと向かっています。セガバンダイは成り立ち得ませんでしたが、そこで理想とされた形は20余年を経て幾つか実現しているのかもしれません。それでもやはり見てみたいセガバンダイの可能性。誰かトラックにはねられ転生したら、セガがバンダイと合併した異世界だったという小説でも書いてみませんか?


 さて、実はこの月には、フロリダ州の経済活動などをアピールしたい現地の事務所に招かれて、アメリカのフロリダを何人かで訪れていました。まずはオーランドへと入り、フロリダモール」に行ってNIKEのエアマックスがやはり大人気となっていることを知り、ビデオ屋で『新世紀エヴァンゲリオン』の英語版を25ドル、『攻殻機動隊』の英語版を20ドルくらいで買ったようです。


 当時の日本のビデオやDVDの値段を考えると破格の安さですが、物色している間に現地の人をあまり見かけず、「ジャパニメーション」がアメリカで人気だとはいっても、実際は違うのかと感じたようです。いやいや、ニューヨークでもロサンゼルスでもないフロリダのモールにエヴァや攻殻が置いてあるだけ凄いといった見方も出来ます。今はどうなっているのでしょう。


 フロリダではユニバーサルスタジオに行きシーワールドに行きNASAがあるケネディ宇宙センターに行ってと、テーマパークばかり回っていましたが、フロリダはといえばのディズニーワールドには言ってません。それはまた別の機会になります。主目的はフロリダの経済や技術の紹介で、ヘリコプターのシミュレーターを作っている会社を見たり、低所得者向けと高所得者向けの老人ホームを見て回ったりして、現地の技術や経済について触れました。低所得者向けのところなら月額2万円とか3万円で入れたらしく、この年になるとそうした施設のありがたみを妙に感じてしまいます。


長くなりましたのでこの月は上下に分けます。


平成9年(1997年)1月のダイジェスト・上編でした。

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