とあるレストランで、立てこもり事件が発生。
運悪く人質に取られたのは、まるで少女のように華奢でか弱げな女性。犯人にきつく締め上げられ、喉元にナイフが突きつけられる。
そんな緊迫した状況の中、ある美しい青年が彼女の身代わりを申し出る。
この事件、一体どうなる——!?
まるでニュースの実況中継のような、不穏な空気でスタートするこの物語。
最初の緊迫感が、読み進めるうちに何やら違う方向へ……??
人質の女性と青年の何とも軽快で楽しい会話に、気づけば読み手は甘ーい痴話喧嘩のど真ん中へと引きずり込まれていきます。
痴話喧嘩で事件解決なんて、文句なしに最高!思わず拍手喝采とちょっとした冷やかしを贈らずにいられない、幸せいっぱいな掌編です。
レストランにて強盗事件が発生。女性が人質にとられると言う緊迫した状況の中、一人の男が立ち上がり、代わりに自分が人質になると言う。
強盗達から女性との関係を問われ、男は言う。
「……僕の、妻です」
……なんて書くと、スリルとサスペンスが飛び交うする緊張感のあるラブストーリーを想像するでしょう。違います。
これから始まるのは痴話喧嘩です。
男の一言から、突如始まる不毛な言い合い。強盗はどうするんだとか、命の危機だとか、そんな常識的なツッコミなんてなんのその。こっちの方が大事なんだと、二人の喧嘩、と言うかもはやノロケは続きます。
ほんの少し前にあった緊張感など、木端微塵に打ち砕く、ある意味はた迷惑で、ある意味大手柄な、前代未聞の痴話喧嘩。どうか皆様、優しい目で見守ってあげてくださいね。
そのレストランは、緊張に包まれていた。逃亡中の銀行強盗犯が、女性を人質に立て籠ってしまったのである。
拳銃や爆弾のスイッチを手にして、人質にはナイフを突きつけている強盗。このままでは女性が危ない。その時……
「待ってください! その人の代わりに、僕が人質になります」
突如声を上げた男性。しかし、ここからがどうにもおかしなことに。
犯人と交渉していたはずなのに、どういうわけか人質交換を名乗り出た男と、人質の女性がケンカを始めてしまう。もう、ものすっごい痴話喧嘩を。
途中からだんだんと、強盗犯なんてどうでもよくなってしまいました。それよかこの二人の痴話喧嘩の方が気になる。
ノロケとも思えるような内容の喧嘩を、赤裸々に続ける二人。もう聞いている方が恥ずかしい。だけど全く治まる気配はなく、むしろヒートアップしていき、ついには……
緊迫した雰囲気をぶち壊しにする痴話喧嘩。こういうのを、ラブコメって言うのでしょうね。
暖かい目で、腹筋に力を入れながら、ご堪能下さい。