第4話『異能警察官・鈴木礼二』

と、俺が死を覚悟した、その時だった。

ナイフが振り下ろされ、奴が俺の顔を真っ二つにしようとした直前!

奴の動きが止まった。


「…⁉︎⁇」

何かの物体が、奴の真横から飛んできて、

『足』に当たった。

目では見えなかった───

────小さいことだけはわかった。

そして血が吹き出ていた。

「…がっ、て、てめえ、誰だ!」

奴も俺もその何かが飛んできた方向を見る。いや、何か、ではなくて、『銃弾』だ。


「『誰だ』はこっちの台詞だ…俺はこの街の警察官をやってるモンだが、テメェは一体誰だ?ガキンチョの癖してこの街の平穏を脅かすんじゃ…ねぇ!」

その方向には、1人の中年男性がいた。

銃を。構えていた。

…雨が降り出した。


さらに一発、二発!

銃弾は奴へ向かう!

「クソッ」

奴は逃走を図る───しかし中年男性は追わない。どころか銃を下ろした。

「覚えときやがれ!」

「ああ、忘れるまでな…さて」

俺は、安堵した。

この人が誰かは知らないが、とにかく応援によって助かったのだった…。

お礼を言おう。…がしかし、警察官と言っていたような気がする。

…警察官…?


「‼︎」

「犯罪の匂いがしてやってきたんだが…普通じゃないな、君、なんで追われてたんだ?」

「し、失礼します!」

「……えっ?」

俺は、一目散に逃げだした。

よく考えたらさっき俺を襲った奴と同じ方向に走っていたのだけど、そんなことはどうでもよかった。


「え、ちょ、君!」

「ありがとうございましたー!」

「待ち…待ちなさい!君の家は、あの角の一軒家じゃないだろうな!ちょっと待て!」

モロにバレていた。

そうだ…今、警察に捕まるのはマズい。

今、警察のお世話になればどうなる?

僕は、こんな気が動転している状態で、後の裁判でも使うような証言をしてしまう。

それはマズい。


一旦、どこかで冷静にならなくては。

俺は全速力で駆け出した。

小学生の活発さをフルに利用して。

すると、中年男性には追うのは難しかったようで、すぐに姿が見えなくなった。


いや、相手が悪人なら、あの銃を使えるのだろう。ただし俺はそうではない。


…でも、そんなこともいつまでいってられるだろうか。

『羅生門』を思い出す。


俺には親戚がいない…お父さんは天涯孤独で、お母さんは病弱で周りが不干渉の態度を取っているから、つまり誰も頼れない。


かといって、何かの施設とかに頼るのはゴメンだ…というか俺は弱者として誰かの前に立ちたくない。


脳が拒否している。今の状況を。

未来のことを考えることを。

実際にはさっきの警察官に頼れば今後の人生も大丈夫なんだろう…でも、俺の脳がそれを嫌だと言っていた。


とにかく、今後の目標は、

①どこか人のいない場所に逃げること。

②生き抜くこと。

その後の人生についてはその後だ。


と、俺はそう決めた。

なんとなく、ここでこうしなきゃ、

その後全部ダメになるような気がして、

俺はそんな狂った選択をしたのだった。


────────────────────


できることなら、

人に迷惑をかけずに生きたい。

それができている人間がどれだけいるかと言われたら1人もいないだろうけど、度合いというものがある。


要は、お腹が空いた。

だが万引きはしたくない…家には帰れないし、警察に頼るつもりもない。


ということで俺は、少し離れたところにある『山』に篭ることにした。


そう、自然から食料を調達する。

こんなサバイバルをする日がくるなんて思ってもみなかった。


いや、サバイバルが嫌なら警察に行けばいいのだけど、今はダメな気がした。


ともあれ俺は腹が減ったより以前に喉が渇いたので、とりあえず水源を探すことにした。

向かおう、音のなる方へ。

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