不自然なほどに、平和で、平等で、争いのない世界。
バベルの塔でレンガを積み上げる職人の独白は、天上がどうなっているのかを見たいという欲望、いや、執念に近い何かです。
高い高い塔を作る過程ではどんどんと人が落下していき、死んでゆく人々を悲しむことも悼むこともなく、ようやくたどりついたそこで告げられる、神様の言葉は……
作品全体通してメッセージ性の塊ですが、前半の職人の思想パートと、後半の神様の語りかけパートで、あえて真逆のようなことも書いてあり、「ひとりの人がこんな風に真逆のことを考えて1つの作品にできるのか」と、感心しました。