きっかけはフクロウ

ゆうけん

きっかけはフクロウ


「そういえばカクヨムやってたよね?」


 突然、姉が切り出したこの言葉は意外であった。

 なぜならば、彼女のカクヨムへの関心は低く、一年前にアカウント登録はしているが、まったくアクセスしていないようだったからだ。


 一方、私はほぼ毎日利用して、面白い作品を読ませてもらっている。そこで応援コメントや近況ノートで交流し、ユーザーさんとのやり取りを楽しんでいた。


「トリのぬいぐるみ。欲しいんじゃない?」


 トリ?ぬいぐるみ?なんの話だ。


 いまいち要領を得ない顔をしている私に、姉はスマホの画面をを見せた。そこには、アンケートに答えた方にマスコットキャラクターのぬいぐるみプレゼント、という一文が。画像にはあのトリが表示されていた。


 欲しい。これは是非、手に入れたい。


 早速、カクヨムアプリのアンケートを入力。

 半年前に図書券が当たったが、住所や氏名の入力に抵抗があり無視したが今回は別である。なにせトリのぬいぐるみが貰えるかも知れないのだ。


 私は鳥類が好きなのである。ついでに、ぬいぐるみも大変好きである。


 鳥類の素晴らしさを語り出したら止まらない。

 シマエナガの妖精のような可愛らしさや孔雀の豪華な美しさ、ちょこまかと動き回るセキレイの面白さ、ハシビロコウの凛々しさ。森の賢者と呼ばれるフクロウ。日本を象徴する鶴……。

 しかも、食べても美味しいとくれば無敵の生き物であろう。肉が美味いのは当然として、流線型が美しい卵は美味しい上に栄養価も高い。これほど美と実用性を兼ね備えた生き物がこれまでに居ただろうか。鳥類の可能性は無限大である。


 そんなことを考えながらカクヨムホームにアクセスする。




 ―――

 カクヨム3周年記念選手権。10日間「書く・読む・伝える」チャレンジ!

 1日目のお題は「切り札はフクロウ」

 ―――




「わぁあぁぁ! どうしよう姉ちゃん! いきなりお題出されても、すぐになんて書けないよ!」


 この反応は当然であった。私の遅筆は実にあきれるレベルなのだ。現在、公開している小説も半年以上更新していない。カクヨムで楽しんでいるとは言え、ヨム方ばかりである私にとって難題であった。


「え? なに? ユウも参加したいの?」

「あ、当たり前じゃない!」


「あんなに公式企画に興味無いって言ってたのに?」

「今回は別! だってトリだよッ!?」


「あ~。ユウは昔から鳥好きだったもんね。鳥人間コンテストに出場したいって言ってたもんね」

「言ってたっけ? いや、言ってないと思うよ」


 両腕に羽もどきのフサフサを付け、バサバサと上下に腕を振りながら、滑空台から第一歩で海に落下する哀れな姿を想像する。

 様式美的な『笑い』という意味なら合格だ。だが鳥人間コンテストには完全に不合格で……違う!今、思考しなければいけないのは、こんなことじゃない!


「あぁ……どうしよう。切り札はフクロウって何書けばいいか」

 頭を抱える私に姉は笑いながら言った。


「どうせなら、このやり取りをエッセイ風に書いちゃいなよ」


 そ、それだ!

 ナイスアシスト!これが私の切り札!


 約1年7ヶ月ぶりに新作小説を投稿した本作。

 フクロウのぬいぐるみが欲しいが為にとった苦肉の策でした。


 こうして、フクロウは私にカクさせる切り札となったのです。






 ―――

 ◆スケジュール(1日目)

 作品募集期間:3月8日 12:00~3月10日 11:59

 ―――


 すでに期日を過ぎていると、気付いたのは数日後のお話。

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