聖札戦争 2

@ProjectSakura

2日目 夜

 あるせかいに、10この「いえ」がありました。

 そのおさたちは、あるひ、ころしあいで、じぶんたちのおさをきめようと、いいだしました。

 そのあんは、とおり、くりすますの、つぎのひに、10このいえをだいひょうする、まほうつかいたちが、たたかいを、はじめます。

 ばしょは、にほんの、ゆうえんちの けんせつ よていち。

 タロットカードの まりょくを ふうじこめた このばしょで、なのかかんの たたかいが はじまるのです。


「つまんない」

 アンナ・ボアズは退屈そうに足をぶらぶらさせ、ゲームセンターでもう何回目かというゲームを起動させていた。

 外見は少女と見まごうほどに若く、それにしては時たま鋭い視線を空にやる。

「来ないよね、敵」

 横には、「女教皇」レベッカがいる。魔法から生まれたガーディアン。落ち着いた服装でそこに佇んでいる。

「来ない方がよいと思いますが」

「全然、うごき、ないの?」クリスマスプレゼントを期待しているのにまだもらえない子供のように、アンナは怒り気味でレベッカに聞く。

「・・・」静かに何も言わないが、さすがに何も言わないとまずいと思ったのか、「はい」

「つまんない、つまんない、敵が来ないのもつまんない!」

 足をばたばたさせて叫び始める。

 そんなに騒ぐと聞こえますよ、とは言わない。周囲の音はすべて封じ込めてある。罠も完璧だ。

「みんな、うごかないのかなあ」

「・・・・・・」

 レベッカのサーチ能力は22枚のカード中でも随一である。タロットカードの「女教皇」が示すとおり、そのサーチ能力はどのカードも叶わぬほどのものであった。少なくともアンナ・ボアズはそう思っている。戦いは自分がするからいい。

「私たちは2番目で勝てればいいんですよ」

「だよね。賞金ももらえるし」

 しばらく退屈な「間」が流れる。

「ねえ、それってタロットの2番目だから?」

「私たちは3番目じゃないですか」

「え? 「女教皇」は2番でしょ」

「「愚者」がいます」

 ぽかーん、とアンナは口を開けてレベッカを見ている。「ああ、そういうこと」

「「世界」の前に入れる考えもありますね」

「なんで「ゼロ」なのに20番の「審判」の前に入れるのよ」アンナはやっと退屈から離れられるかと思ったのか、少し興味深げに話す。

「要はどっちから始めるか、ですね。ゼロから始めるのか、Ⅰから始めるのか」

「レベッカはどう思う?」

「黄金の夜明け団の教義によれば」黄金の夜明け団はタロットを語る上で欠かせない組織である。

「そういうのはいいんだもん」うんちくは要らない。退屈が紛れたのかアンナは笑い、「タロットって不思議。人によって、2番目なのか、3番目なのか分かれる」

「わたしはどっちでもいいんですよ」

「そう?」

「ええ。この戦いに勝てれば」

「・・・やっぱりつまんない」

 ふーっ、とため息をついてアンナは、またぶらぶらと足をぶらつかせ、全参加者中最高クラスの魔法力を爆発させる機会がないのを「つまらながって」いた。


 おしまい


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