4日目 知ってしまえば

サンタクロース

「チアキー?おはよう」


俺は眠気眼を擦り、目を開ける

目を開けた先にはシースルーの

ネグリジェ姿のユウキがいた


俺が買ったソレは肌が透けて見えて

もはや裸よりも扇情的で


…というか、シースルーって胸大きいより

小さい方がエロい気がするよね?

俺だけかな、どうなんだろう


なんとか違うことを考えようとしても

思考がまとまらない


…うん、下半身がすこぶる元気で

マズい事になってる

「あーおはようございます」

モソモソと布団をかけなおし

それを誤魔化そうとするが


ユウキはそれをまた寝ようとしてると

勘違いしたのか

「起きろー寝るなー」


布団を剥がそうとしてきて

必死に俺は抵抗する


ちょっと待って、もう少し待ってよ

俺のマグナム頑張って

ホルスターに収めてるから


チラチラと透けたレースの隙間から

見えそうになって

それに気を取られ、布団を剥がれる


「もう、いい時間なんだから起きて?」


ユウキはそう言い残し

リビングに行ってしまった


気づかれなかった事に安堵したが

男としては、それはそれで悲しい気もする




……マグナムは見栄張りました

精々ニューナンブM60くらいです


デリンジャーって言ったやつお前後で裏な?


シャワーを浴びて、着替えを済ませ

ユウキはクリスマス特集の

テレビを眺めている


「お待たせしました」

「今日はどうする?」


クリスマスイブだというのにプランすら無い

道理でモテない訳だと


見栄張ったところでボロが出るのは目に見えてるので正直に話す。


ユウキは少し考えて

「サンタさん待つ?」


そんな事を言い始めるが

いや、夜まで暇するって事ですかね?


それともお前なんかとカップルだと

思われたくないから、外出ないって事?


「いや、サンタさん夜来るし、寝てないと来ないよ?」

何なら寝てても来ないけど


レゴブロックを欲しいって言ったのに

靴下の中にバイオハザードが入っていた

…その時から、俺はサンタを信じていない。


一文字も合ってねぇから

せめてマインクラフトくれよ。




それを聞いてユウキは残念がる


「なんだ、せっかくだからおもてなししようと思ってたのに」


そして不思議そうに俺に聞く


「でも夜だけだと配りきれなくない?いっぱいいるよ?」


奴らは複数人で構成された

サンタって組織なんだろ?


正体も人数すら分からない秘密結社とか

多分、そんな感じ



「取り敢えず、嫌でないならユウキにプレゼントを選びたい」


「なんで?サンタさんくれるから良いよ」


…純信すきるでしょこの子

サンタなんて空想の産物がやって来る訳無い


しょうがなく俺は苦しい言い訳をする。


「…俺が実はサンタだって言ったら?」


……嘘にしても言い訳にしても

適当にもほどがあるが


だがそんな俺の嘘に

ユウキは目を丸くして、驚いたように


「チアキはサンタなの?」


…信じちゃったよ

もう冗談とか言えないじゃん






「だ・か・ら・私・に・色・々・く・れ・る・の・?・」


そんなふうに、当たり前のように言った。


俺はそんな言葉を聞いて馬鹿らしいなんて

そんなこと無いと言おうとした


ただ、自分勝手に

クリスマスだからプレゼントを贈らないと

なんて思っただけで




…でも、誰しもが大切な人に

なにか贈りたいと願い

クリスマスにサンタになるとすれば


だから、サンタは神出鬼没で


だからこそ

一晩でサンタはプレゼントを配りきれる


そんな風に自分すら誤魔化して


「まぁ、そんなところ」

「だから、プレゼント選びに行こうよ?」


「俺はサンタ見習いだから」

「言われないと何が欲しいか分からない」


見習いどころか

俺は悪い子供のところにやって来て

酷い仕打ちをする黒いサンタがお似合いで

そんなことも分かっているけど



それでもユウキは嬉しそうに


「分かった、一緒に選んであげる」

「早く一人前になれるといいね」


なんて、そんなふうに笑うから

また、嘘をついてしまったなんて

何処かが痛むけれど



ユウキが笑って、喜んでくれるなら

全部の終わりその時までは

どうか無罪って事で

許してくれないだろうか?


恋人でも、友達でも

ましてや王子様で無くてもいい

それでいいから、どうかせめて


俺はこの少女を泣かせたくはないから



…駅からほど近いモール街を歩く

クリスマスの空気に浮かされた街は

どこも、喧騒だらけで


誰も俺達なんて気にしてない

…そう思ってないと、恥ずかしくて死にそう

俺はその原因たる右手を見て

「はぐれちゃうから」

そんな事を言われて握られた

それが、言葉通りなのは分かっているが


それでも、他から見ればそんな事は

分からなくて恋人のように思われてるだろう


だが、違うんですよと言って回った所で

なんの解決にもなりはしなくて

だから、黙ってそのまま歩く


…こんだけ言い訳しないと手すら

繋げないとか、マジヘタレ過ぎて泣きたい


恥ずかしさを誤魔化すために

隣を歩くユウキに聞いてみる

「プレゼントって何が欲しいの?」


真実の愛だの、かけがえのない幸せだの

金で解決出来ない物以外なら

大体、買ってあげられるだろうか?

…何度も言うようだけど、俺の金ではない


ユウキは顎に手を当てて考えている

「うーん…考えてみたら特に無いかも?」


「思いつかないか」


俺も今何欲しいと言われたら、正直困る

いつからか、何となく手に入る物と

そうでない物の分別が付くようになって


大抵、欲しいと望むのは後者で


そんな俺を見て、ユウキは思い付いたように

「じゃあお互いバラバラにプレゼント探してくるっていうのは?」


「別に欲しい物じゃなくてもお互い様で」




悪くない提案だった

お互い様なら、多少ハードルは

下がった気がする。


「ユウキがそれで良いなら、そうしようか」


彼女は嬉しそうに

「じゃあ決まりね?」

「待ち合わせはここ」


丁度モールの真ん中位に位置する公園


俺は財布から現金を出して


取り敢えず何を買ってくるにしても

10万円位あれば間違えなく足りるだろう


「じゃあ、また後でね?」


そう言ってユウキは走り出し


それを見送った俺は公園のベンチに腰掛ける


取り敢えず一息ついて

どうしようかと考えてみるが


いくらお互い様といえ

余りにも的外れな物を送るのは気が引けて




プレゼントの定番と言うと

ブランド物?宝石?

あとは指輪とかネックレスとかの貴金属

ぱっと思いつくのはこんな所だが


しかし、どれもピンと来ない

一般的な高校生ならいざ知らず

相手は、ユウキだからな…


そもそも、ブランド物や宝石なんかが価値があると思えるのは、それが高級とか

良いものだとかの共通認識が存在するからで


ユウキから見てしまえば

高級ブランドのバッグも

おばちゃんが持ってるエコバッグも大差ない


それに何より問題なのは

バッグ入れるほど物を持ち歩いていない


…そして、指輪は言うまでもなく却下


そんなもの喜々としてプレゼント出来るなら、こんなに悩みはしない

「プレゼント…難しいなコレ」


洋服や下着は必要だから選べただけの話で、ユウキが何をあげたら喜ぶのか見当もつかず


取り敢えず、考えていても仕方が無いと

デパートに入る


何かしらっぽい物が有るといいけれど…

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