四位の場所
「頼むっ 茶雷!」
「ごめん壱図、マジ悪い、今日急いでんだよマジで」
「そんな事言わないでくれ。超困ってるんだよ。話聞いてくれ」
「あのさ、ここ玄関口だぜ?でもって見ろよ俺を。
リュックしょってんじゃん?下駄箱に片手突っ込んでんじゃん?
もう学校から出撃準備スタンバイナウなのよマジで。
ガチ帰宅モード入っちゃってんのよ!」
「こっちだって緊急事態の非常事態なんだよ!」
「おおかた彼女がらみだろ?オーライ大丈夫、
一度くらい怒らせたって一か月もすりゃ元通りさ」
「一か月だって?そんなに長く冷たくあしらわれ続けろというのか?
イヤだよ!俺そんなの耐えられない!」
「なら自分でどうにかしろよ。毎度毎度俺に振りやがって。
”謎解きマシン”じゃねーっての俺は」
「そんな・・・」「じゃーな」
「茶雷!」「なんだよも~」
「”メガ豚(とん)カツカレー”って知ってる?」
「・・・知ってるよ?知らねーわけねーだろ。
”カフェ・オレンチ”の名物ランチ、平日限定5食。
1680円つーバカ高なのに連日瞬殺の幻の逸品だろうが。
昼休みに学校を出られねえ高校生にゃ無縁の話だ。
が、俺はいつかやるぜ、やってやる!脱獄してでも!俺のタマシイに賭けて!」
「じつはあそこのマスターが親父の知り合いでさ。一食くらいなら」
「おい壱図!」
「えっ?」
「おめー俺をなめてんのか?」
「えっ?」
「この俺を”見返りがなきゃダチを助けねー冷血動物”とでも言いたいのか?」
「えっ?」
「俺友人の鑑よ?フレンドミラーよ?なんでも聞いてくれよ!来いよカモン!」「えっ?」
「ふっ”友情は無償”さ、そだろぉ?」
「えっ?」
「さあ話してみろよ。いったい何があった?」
「話すより、見てくれた方が手っ取り早いと思う」
「スマホ?・・・ああ、メッセか。・・・なになに」
いちず:こんつぎどこ行く?
かのじょ:あんまお金かかんないとこがいいね~
いちず:じゃーE4はナシか
かのじょ:梨梨、あっこの100均行くと私ヤバイ
「・・・おいおい壱図くんよ、デート計画のノロケ見せてどうしようってんだよ?
E4って・・・あーイーヨンモールか。」
「そう、先月はそこへ行ったんだ。100円ショップで
彼女目の色変わっちゃってさ、三千円使ったよ」
「何をどんだけ買ったんだよ!?
イヤ教えなくていいけど。で続きは、と・・・」
いちず:じゃどうしよ
かのじょ:・・・・・・決めた!
いちず:なに?
かのじょ:今週土曜日 午後1時!
いちず:りょーかい!どこ集合?
かのじょ: 惜 し く も 四 位 の 場 所
いちず:?????なにそれ
かのじょ:キミならわかる!ばいばい♡
いちず:わかんないよ
かのじょ:
いちず:ちょマジで教えて
かのじょ:
いちず:おーい
かのじょ:
いちず:みえてる~?
かのじょ:
「・・・え意味わかんね。なにこれ?」
「だろ?そう思うだろ?でもそれだけなんだ。
そこで終わりなんだよ!それっきり彼女電話にも出ない!
既読もつかない!そして今日は金曜日だ。
明日土曜日の午後一時までもう時間が・・・」
「茶雷、教えてくれ!俺はいったい
ど こ へ 行 け ば い い ん だ ?
」
「なるほどね~全部つながったわ。つまり
このメッセのヒントから
”彼女の考えたデート場所を当ててみろ”って事か」
「そうなんだよ、で、どう?わかりそう?」
「ヒントは”惜しくも4位”か。
4位・・・3位に届かなかった?
・・・何かのランキングだな。名勝とか?」
「いや、うちの市内には大した観光名所なんてないぜ。
そりゃ神社や寺とかちょこちょこあるけど、
わざわざ観光客が来るようなもんじゃないよ」
「となると特産品とか名物か?焼きそばとか餃子とか
B級グルメコンテストで4位に食い込むような」
「それもないな。街道沿いにはハンバーガー、
牛丼、ラーメン、ファミレス。みなチェーン店ばかりだ。
この地域独自の、それも全国で4位になるようなグルメはない」
「ふーん。となると”別のヒント”が重要ってわけか」
「別のヒント?”惜しくも4位”だけじゃないのか?」
「彼女はいくつもヒントを残してるよ。まず一つ
”お金のかからない場所”っての。
これで映画館、カラオケ、さっきのイーヨンモールもだが、
そういうのは除外される。電車やバスで遠出も無しだ。交通費がかかるからな」
「なるほど、でもそれじゃ漠然としててつかみどころがないよ」
「そこで次のヒントだ。
”今週土曜日 1時”
このタイミングで市内で開催されるイベント、検索してみたか?」
「もちろん!だけど数が多すぎるんだ。
町内会の催しとか、公園でフリマ、地元消防署のAED教室とか、
とても絞り込めないよ」
「そうか・・・うーん参ったねこりゃ、どうも」
「・・・やっぱりだめか。ありがとう茶雷。もういいよ。
俺、明日はあてずっぽうでどこかに行ってみる。
そこに彼女がいりゃあ超ラッキーってことさ」
「やけになるなよ。彼女はフェアな勝負を仕掛けてる。
まだ何かあるはずだぜ」
「何がフェアなもんか!大体何なんだよアイツ!
いっつもいつも俺を振り回して!
たまにはビシッときつく言ってやらなきゃ」
「おいおい落ち着けイージーだぜ。精神的DVとかマジ勘弁だっつーの」
「だけど!」
「俺たちはまだ彼女の出した”最後のヒント”を検討してねーだろ」
「最後のヒント?」
「最後に言ってきたんだろ?
” キ ミ な ら わ か る ”と。
俺ではない、ほかの誰でもない、
壱図、お前ならわかると彼女は言ってるんだ。
つまりもう答を持ってるんじゃないか?お前」
「どういうことだ?」
「思い出せよ。今まで彼女と何回デートした?どこへ行った?」
「そりゃあ・・・ええと・・・・スポーツ観戦とか」
「なんだって?」
「・・・野球とか・・・サッカーとか」
「おんまえな、それ最初に言えよ!もう決まりじゃねーか」
「待ってくれ!それはないよ。だってプロ野球とかJリーグじゃないんだ。
僕らが行ったのは市営運動場の高校の地区大会なんだよ。
運動場の入場料だけで観れるから」
「だからそこで4位になるような強豪校ってことだろ?」
「茶雷、知らないのか?うちの市は地区レベルで最弱なんだよ。
そりゃ順位はつくけど結局どの高校もドングリの背比べ、
全国どころか県大会も初戦敗退するようなとこばかりなんだ。
強豪校なんていやしない」
「・・・・・・」
「実際試合もひどいよ。
野球ならコールド試合、サッカーなら10点差。
それでも彼女は”今日は気合入ってたよね~”とか
”今日は良かったよね!”とか」
「・・・ぷっ、くははは」
「なんだよ?何がおかしいんだ?」
「くくく・・・あ、わりい、マジわりい。
でも、ぷっ・・・わかったぜ壱図。彼女の”答”がよ」
「本当か!」
「ああ。なるほどね~・・・それでか、そういう事か。
なあ、ちょっとスマホで調べてほしいんだが」
「調べる?何を?」
「うちの地区の高校で、全国、いや県でもいい、
4位になれるような学校をさ」
「だからそんなのないって」
「運動部じゃない 吹 奏 楽 部 さ」
「すいそうがくぶ?ブラスバンドって事?」
「どんな学校でも応援団の伴奏係として吹奏楽部が駆り出される。
ガ チ 演 奏 を 間 近 で 聴 き た い 者 にとっては
絶好のチャンスってわけさ」
「!!!そうか!」
「賭けてもいいが、うちの市内には
”コンクールで4位になるような”凄腕の吹奏楽部を擁する学校がある。
そして明日土曜日午後一時、たぶん文化祭だと思うけど、
演奏会が開かれるんじゃないかな・・・っておい、壱図!」
「あ!・・・もうあんなところに!
おーい!親父さんに”メガ豚(とん)カツカレー”の話!
頼むぜマジで~!聞こえてるか~おーい!
・・・行っちゃったよ・・・ったく友情もくそもね~な~
・・・じゃ、帰るか」
おしまい
壱図くんと茶雷くんと謎の彼女 椎慕 渦 @Seabose
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