第2話
「あのっ! もしよかったら……仲間になってもらえませんか?」
焚き火を囲んでいたうちの1人、上半身が裸で、その逞しさがが伝わるほどである筋肉質のマッチョに、彼女は尋ねる。
「た、戦えない……! 私は、戦えないんだーっ!!」
戦えない……のか?
顔を暗くし、嘆いている。
「そ、そうなんですか……」
残念そうに落ち込んでる彼女。
やっぱり、この人……どこかで見たことある気がする……この顔立ちに、この逞しさ。
じっくり考えてみるが、やはり無理だった。
「次を渡ろう」
と、彼女はトーンを上げて言う。
焚き火を囲んでるうちのまた1人、茶色いニット帽をかぶり、その隙間からちらほらと飛び出ている白い毛に、髭を生やした老人だ。近づくと、老人の方から声をかけてきた。
「いらっしゃい。売り物を見ていきますか?危険な場所にあって、手に入れるのがとっても難しい珍しい品物ばかりですよ。」
落ち着いたトーンでニコニコしながら話す老人はどうやら道具屋らしき老人のようだ。
「へえー……行商の人かな? ちょっと見ていこうかな」
少し好奇心が湧いたそうで、彼女は道具屋らしき老人が差し出した品物を見ると、目を丸くして声をあげる。
「……えっ!?」
「この人が売ってる道具……ほんとに普通は手に入らない世界中の貴重な品物ばっかり……あなた……いったい何者なんですか?」
好奇心の塊のように瞳を輝かせて、無我夢中で問い詰める彼女。
俺、そうゆう品詳しく無いからわからないんだよな……まぁ、彼女をこんな風にさせるんだ。きっと凄い品なんだろう。
「私ですか? 世界を旅する行商人ですよ。それ以外にも何かやらなきゃいけないことがあったような気がするんですが……頭がぼんやりしてよく覚えていないんです。」
うーん、と唸るように考える道具屋らしき老人はそう言うと、マッチョと同じ時のように顔を暗くする。
ん? ちょっと待てよ……この人もどこかで見たことある気がする……
なんだろう、この突っかかるような感覚。前にもあったような感覚。気持ち悪い……
ダメだ、やっぱり思い出せない。
この付近を歩き回り、手当たり次第に声をかけていったが、仲間は見つけられなかった。
仕方なく俺たちは魔王城に向かった。
やっぱり、声をかけた人みんなどこかであった気がする……
一体どこで?
気づいたら魔王城の階段前に来てた。
この異様な雰囲気……さすが魔王城だ。改めて思う。
「この扉の中が魔王城だよ……準備はいい?」
固唾を飲む彼女。
階段を登りきった俺たちは、大きな入り口を前にする。
入り口は少し歪んだ鏡のようなもので閉じられていた。そこには反射した、かすかに服の色だけが把握できる俺と彼女の姿。
「ああ。」
心の準備はできた、幸運を祈ろう。
「それじゃあ行くよ!!」
何故か弾んだ口調の彼女が気になり、横を見ると、企んでいるような笑みを浮かべていた。
突然ザッザッと2、3本後ろに下がる。
何をする気だ……
すると突然、助走をつけるとともに扉へ突っ込む。
「てやぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」
ゴンっと鈍い音が響いた。
「あイタっ!?」
……
弾き返され尻餅をつく。
……すごい音したけど。
「大丈夫か?」
「ち、ちがうの! 思ったより扉が硬くて!!」
顔を真っ赤にして、必死に言い訳をしてる。
そして、額を両手で覆い、何かぶつぶつと呟いている。
きっと恥ずかしがってるのだろう。
……
「それじゃあ……普通に開けるね。」
よいしょと立ち上がると再び入り口の前に立つ。
その後、彼女は押し込んだり蹴ったり、体当たりなどを試みたが、扉が開く気配はなかった。
「……あ、あれ? 扉がビクともしない!」
……まさか、魔王城に入ることすら困難なのか。
彼女を見ているのが面白いかったが、彼女だけにやらせるわけにもいかないので俺も扉に近づく。
すると扉の違和感に気づいた。
「もしかして、この扉……『凍ってる』のか?」
鏡のようだが、違う。よく見ると半透明で、入り口だけを固めるように凍ってる。
「あ! だからどんなことしても開かなかったんだ。」
納得をし、晴れ晴れとした様子だ。
「じゃあ、ロレンくんの必殺技で壊しちゃおうよ。」
目を輝かせながら提案してくる。
乗り気だ。
「ああ。やってみよう!」
勇者様が弱すぎるんだが @fuka2116
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