2番目の男
余記
暗殺者
その日、館は
殺人の予告が届いていたのだ。
この国の裏の世界で有名な暗殺者が二人。
本当の名前は知られていないが、『1番目』と言われる者と、『2番目』と言われるものがいる。
『2番目』はさほど書けるような噂を聞いた事は無い。
「いつの間にか、うちの主人が死んでいたんです。」
というのは、つい先日、暗殺されたと思われる家のメイドをしていた者の言葉だ。
いつの間にか現れ、いつの間にか仕事を完了している。
なぜ、『2番目』と呼ばれるか?というと、それより有名な・・・『1番目』がいるからなのだ。
『1番目』の仕事は、暗殺者としては奇妙な癖がある。
対象に、予告状が届くのだ。
届けられた者はたまったものじゃないと思うが、例えばこんな感じだ。
「今晩、殺しに伺います。」
ちなみに、これがうちに届いた文面なのだ。
事情が事情だけに、情報が漏れないようにしつつ、警備兵を揃える。
他、影武者となる者の衣装合わせや、口調などの打ち合わせ。
そして、影武者といえど、むざむざとやられたりしないように、護衛の配備。
「坊ちゃん。言っちゃ悪いですが、剣を
というのは、うちで最も腕の立つ武官の言葉だ。
物好きな事に彼は、『1番目』と戦えるように目立つ所で待ち構える、という事なのだ。
そして夜。
この館には、
そこに潜んで
にわかに騒がしくなってきた。
「お前が『1番目』だと言うのか?」
そんなセリフを言う武官。
『1番目』が来たのだろうか?
怖いながらも、覗き穴より見えないか?と目を押し付けようとしたところ
「坊ちゃん、危ないですよ。」
と、護衛の者に注意される。
見慣れない彼は、最近、腕が立つとして雇われた者だった。
だが、目を押し付けるような事をしないでも、見ようとしていた相手は正面まで移動して来ていた。
予想していたのとは違う姿。
女性だった。
持っている武器は、一見、普通のロングソード。
ただならぬ気配を感じたのか、大上段より斬りかかる武官。
彼女は、無造作にロングソードで受ける。
つばぜり合いになるか?と思いきや、するり、と抜けるように回転すると武官の背面を取る。
かちり
そのまま、彼女は斬りかかろうとしたが、武官が後ろに回した剣によって阻まれた。
「やるじゃねぇか」
武官がにやり、と笑ってふたたび斬りかかる。
だが、そこまでだった。
今度の彼女は受ける事をしない。
すっ、としゃがんで避けると、足に切りつけた。
「くっ!」
足を挙げて避けようとした彼が一瞬、止まった隙に
「ぐわっ!」
手を切りつける。
そのまま首へと―――
「大丈夫ですか?」
我知らず、今見た事の衝撃に震えていたようだ。
肩を抑えて、無理やり落ち着けた。
だが、なんという事だろう。
血を浴びて、凄惨な姿をした彼女。
だというのに、目を離せない。
美しい
思わず知らずのうちに、そんな事を思ってしまったのだ。
「彼女、とても
突然、護衛の者が声をかけてくる。
自分の心を見透かされた気がして、思わず
だが、その護衛の言葉はそれで終わりでは無かったのだ。
「私の妻なんですよ。」
え?
予想もしなかったひとこと。
これらの事から分かる意味が頭に浮かぶ前に、後ろを振り返る。
最後に見たのは、自分の胸に刺さる短剣だった。
2番目の男 余記 @yookee
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