KAC2二番目の交差点

永太 結

第1話

 確かこの二番目の交差点を曲がると僕の行きたいところがあるはずだ。間違いないと思うのだが、どんどんと視界が悪くなっていく。どうする、戻るか、このまま進もうか。ちょっと待て、一回止まろう。

 僕は後悔してる。高校を卒業して大学に進んだ時だ。英語を話せるようになりたいと思っていた。だから、外語大学に行ったら話せるようになり、就職にも有利だと思った。僕の周りの人も賛成してくれた。だからそれでいいと。でも、本当は違った。英語が好きなのは本当だ。ただ大学ではなく、外国に行きたかった。直接行ったほうが、覚えると思ったし海外生活を経験したかった。

 経済的に余裕のある家庭ではない。だから借金して進学することになる。海外留学なんてとんでもない。しかも英会話ができるレベルでもなく、一人で行っても不安だらけだ。文化も生活習慣も違う。変な事件に巻き込まれて怖い思いをするのも嫌だ。みんながそう言う。僕もそう思う。ある人は、海外に行ったって結局日本人同士でつるんで、英語が話せずに帰って来て、何にもならないという。そんな総合的な意見を言い訳にして、大学に進んだ。

 それなりに楽しい学校生活を送っていたが、バイト先で知り合った人のお姉さんが海外留学に行ったという話しを聞いた。その方は、ワーキングホリデービザという制度を利用したという。とりあえず三か月は語学学校に通い、英語を学んだ。それだけではない。その学校で知り合いを作り、いろいろな情報を得ることができた。そして、その国では決められた職場で決められた日数を働くとセカンドビザというものが取得できるらしい。その二年間で、お金を貯めてその国の学校に通うことにして学生ビザを取得し、さらに二年間英語を勉強し、帰国して英語を最大限利用できるホテルで働いているという。 

 そんな刺激的な話を聞いて、今の生活が嫌になった。僕がしたいと思っていた経験を彼女はした。

 そこに行かなければわからないことがある。だから、行くべきだったんだ。自分次第だったんだ。僕は一人で海外に行くという勇気がないことをごまかし、周りの人の意見が正しいと思うようにした。失敗したくなかった。安全策を取った。挑戦しなかった。自分がしたいこと、リスクを背負って挑戦したいという思いが、一番ではなく二番目になっていた。

さて、この視界の悪さは変わらないが、どうしようか。交差点に戻るべきか。そうしたほうがいい。誰か道を知っている人に、確認して出直そう。でも、僕の本当の気持ちはどうなんだ。いつも二番目にしまってある本当の気持ち。僕はこのまま進んでみたい。もう少し歩けば視界が晴れて目的地に着くかもしれない。もし辿り着かなかったら、戻ってくればいい。来た道を戻るだけだ。そう難しくない気がする。もしかしたら、あの交差点に早く戻ってこれる別の道が見つかるかもしれない。恐れることはない。このまま進んでみよう。時間はある。必ず僕が行きたいところにたどり着くはずだ。


 

 

 

 

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