仏教には愛別離苦なる言葉がある。生別死別を問わず、愛する人と離れてしまう苦しみのことだ。本作はまさにそうなりつつある。その一方で、作中でのカップルそのものはうまく付き合いが続いている。矛盾だ。そしてある意味では贅沢だ。二人とも足るを知らねばならぬだろう。 それにしても、下校とは登校よりもずっとドラマに満ちているように思える。解放感に浸るからだろうか。その時他人を想う気持ちと自分の欲求はどう満ち引きするのだろう。読者としては、二人の心の浜辺に挟まれた陸地のような気分である。