第9話:工事現場の初視察

 9月から仕事も増えて、忙しく、製図を描いて提出した。その後、吉川部長に

呼ばれて、実践勉強のために実際の工事現場を見に行かないかと言われ、仕事

をうまくこなして空いた日ができたら行って良いと言われた。


 9月20日に埼玉のマンション建設工事現場に行き、溶接の火花が出る現場を

現場監督に30分程度、案内してもらい簡単な説明を受け、その印象をレポート

にし、吉川部長に提出して、交通費を精算した。10月は東京都内の現場を半日

で見て回った。


 レポートに自分の書いた製図が現場の全員にわかるように描かないとまずいと

実感したと書いてて提出したところ吉川部長に部屋に呼ばれ、これだよ重要な事

はと言い、製図を描く者の一番の心得は誰にでも、わかる製図を描く事だと言い、

今後、絶対に忘れるなと教えてくれた。11月も現場を見学したが12月は依頼

される製図の数が多く、てんてこ舞いだった。そして1976年が終わり197

7年を迎えた、年初の日、突然、吉川部長に話があると言われ呼ばれた。


 実は、まだ、内密な話だがと前置きして東京湾に橋を架けるという話があると

言い、具体的には川崎あたりから地下に入り東京から木更津に世界一長い陸橋を

作ろうと計画なんだと言った。そこで日本の大手ゼネコンが1977年に研究会

を立ち上げ、建設省と交渉を始め、今年中に多分、建設省か許可を出して、日本

道路公団が中心になって大手ゼネコンと調査検討しながら、話を進めていく事に

なるのだが、その企業の調査検討会のメンバーに我が社から私が選ばれそうなん

だと打ち明けた。まだ、できるかどうか不明である点、また我が社が建設工事に

参加できるかも未定と言うことで、とりあえず代表になって調べてく、逐次報告

提出する事になっていると言い、ついては助手を1人つけて良いと言われ人選も

任せると言われたので、どうだ、史郎君、助手をやってみないかと話してくれた。

 え、そんな、夢のようなプロジェクトに私なんかで良いのですかと聞き返すと、

いや、まだ構想の段階であり我が社が参加することが決まれば、もっと上役の人

が出て行くことになると笑った。


 史郎は、是非やらせて下さい。そういう夢のようなプロジェクトに憧れて建設

の道を目指したのですからと喜ぶと、じゃー決定で良いんだねと年を押すので、

もちろんですと答え、ありがとうございますと吉川部長と握手をした。ただし、

この話は今のところ内密なので注意して欲しいと言われ了解しました他言しませ

んと約束した。1977年4月の企業の調査会に吉川部長と共に出席して他社の

メンバーに新任の挨拶をし、ちなみに構成メンバーは清水建設、大林組、鹿島建

設、大成建設、TK工務店のスーパーゼネコン5社と湾岸工事に強い五洋建設、

ショッピングモールに強い長谷工の7社だった。その後、1977年8月に日本

道路公団に東京湾横断道路調査室を設置された。

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