第5話:吉川部長宅を訪問

 1年目は、とにかく仕事に対する姿勢を身につけて欲しい30分前に出社は

基本だが最近の若者はできてない奴が多いと言った。来月から新人を含め1級建

築士試験合格のためのセミナーが毎週1時間あるので参加する様にと言われた。 

 スケジュールは黒板に書いてあるから行く様にと言われ、あっという間に3ヶ

月が過ぎていった。製図を描く仕事ばかりの毎日であり、それでも上司はきちん

と見ているようで伊藤君は仕事が早い割には丁寧に抜けや間違いがなくきちんと

製図が描けていると誉めてくれた。梅雨が明け暑くなり始めた7月1日、吉川部

長が来週火曜日空いてるかと聞くので、ええと答えると良かったら、横浜の家に

ビールを飲みに来ないかと誘ってくれた。


 吉川部長が、うちは女房と娘1人で男は私一人で飲む相手がいないので、たま

にはつき合ってくれと言うのでハイわかりましたと返事をした。その日も暑い日

で仕事を終えて東海道線で30分、駅から5分の吉川部長のご自宅へお邪魔した。

 ついて半袖Yシャツになると、2人の女性が出迎えてくれ、家内の幸恵ですと

言い長女の早苗ですと挨拶してくれた。今度、吉川部長の元で働くことにりまし

た伊藤史郎ですと挨拶した。


 奥さんの手料理が用意され今晩は回鍋肉と青椒肉絲という中華料理をつくった

のよと言い美味しいと良いけれどと言った。早速、いただくと、調味料の甘さと

旨さが絶妙で最高ですと言うと、お世辞が上手ねと笑った。あともう1品、焼き

餃子を娘の早苗と作りましたのと言い出してくれた。醤油にラー油を入れて召し

上がれと言われ食べ始めると旨いというと、それは良かったと喜んでくれ、いっ

ぱい作ったのでたくさん召し上がれとすすめてくれた。久しぶりにうまい餃子で

すと史郎は、いっぱい食べた。吉川部長が、うちの女房は料理上手が取り柄だと

言い娘の早苗が引き継いでくれると良いのだがと言うと私も負けてませんよと笑

った。30分位して酒が回ると吉川部長が、うちは男が私一人で、いつも肩身が

狭いので史郎君が来るのは大歓迎だよと言ってくれた。遅くなっても以前、両親

が住んでた離れの部屋があるから、そこに泊まっていけば良いと言ってくれた。


 吉川部長は上機嫌で君のご両親は良い育て方をした、出社も早く元気に挨拶す

るし仕事も丁寧で早い。最近の若い者には珍しいと言い、それは君の努力と言う

よりも、ご両親の小さい時からの躾と教育のせいだと話してくれた。ご両親に感

謝しなさいと言うので、わかりましたと答えた。ご両親は、ご健在なのと聞くの

で、松本に住んでいますと答えた。そうか何か訳ありなんだなと言い、それ以上、

詮索する気はないから無理して話さないでも良いと言ってくれた。

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