第4話:伊藤史郎の大学卒業と就職

 史郎がもう自分で資産管理しますから大丈夫ですと言うと喜んでくれ、その後、

息子の山下康男さんが史郎に名刺を渡しN証券で投資部門にいますので投資情報

が欲しかったら聞いて下さい宜しくと挨拶した。伊藤家の資産の話も知っている

ようだった。しかし独立心の強い史郎は家庭教師のアルバイトをしながら映画を

見たり浅草六区の漫才、コントを見て回った。たまに金ができるとコンサートを

聴いたり、銀座で食事をしたりと、勉強と東京を存分に楽しんで、時間があると、

ジャズ喫茶で洋楽、シャンソン、ジャズ、ゴスペル、演歌など、多くの音楽を聴

いていた。


 学生時代は学業と家庭教師と、観劇、音楽、東京見物で忙しくしていて、あっ

という間に4年が過ぎ、この頃は、ちょうど第一オイルショックで不景気になり、

就職先も少ない時代となり1973年になり伊藤史郎はN証券に口座を作った。

 1976年に卒業して建設会社の大手TK工務店に就職が決まり、就職祝いに

東京の山下邸を伊藤和子が訪ねて就職祝いのパーティーを開いた。彼はパーティ

ーは午後3時に終わり、母の伊藤和子が山下和夫さんと息子の康男さんに息子を

宜しくお願いしますと頼むと、わかりましたと答えてくれ、史郎は母を中央線の

始発駅の新宿まで送りホームで見送った。1976年4月にTK工務店に入社し、

スーツを3着新調して本社に出勤し、最初の仕事は設計図面を書く事に従事した。

 翌月に1級建築士の試験を受けるために勉強するように言われ必要な本を指示

され購入した。


 家に戻ると山本和夫さんが伊藤史郎に大金が入ったから車でも買うの家を建て

るのと笑いながら言うと、いいえ今まで通り普通の新入社員の生活をしますと言

うと驚いたように偉い、そうでなくちゃーと言った。つまり人間って欲望に勝て

なくて大金が手に入れば人が変わって偉そうになったりする人が多いのですが、

本当に偉い人は、その周り、日本、世界のために使うべきと自分で判断した時に

使うべきだと言い、謙虚に、かつ自分の考えたように生きた金を使いなさい、

そうすれば大事に使われたお金は使った人の恩に報いる様に、もっと増えて

戻ってくると言うんですよと教えてくれた。わかりました本当に使うべき時が

来るまで銀行に預けておきますと笑いながら答えると、さすが伊藤家の忘れ形見

、素晴らしいと誉めてくれた。


 史郎は配属された第一設計部の吉川茂紀部長に2年の実務経験を積めば1級建

築士の受験資格を得られるので問題集を買って勉強するようにと言われ了解した。

 経歴書を見ながら君、実用英語検定1級持ってるんだねと驚き、小さい頃から

語学は好きだったのでと照れ笑いした。免許は持っているのと言われて、いえ、

まだですというと現場回りに車を使う場合が多いので早速、免許を取りなさいと

言われ必要なら早退も許可するからと言われた。明日の晩に新人歓迎会をすると

言われ了解し、その後、自分のオフィスに入り自己紹介を数分させられた。

 出身は東京、大学は東大、特技は英語を少し使えますと言うと、どの位と聞かれ

実用英語検定1級と言うとスゲーと言う声が飛び、さすが東大と冷やかされた。


 最後に早く1人前の設計士になりたいですと言い、女子事務員がロッカーの

場所、机と備品、足らないものがあれば言って下さいと言われた。出張は、ない

と思いますが出張精算書も机に入っていますと言われ、初日は緊張したせいか、

下宿している山本家に帰ると風呂に入ってすぐに寝てしまった。翌朝、満員電車

で20分で会社につくと、早速、簡単な設計図の作成をする様に言われ1日かけ

て描き上げた。5時に終了し会社から10分の居酒屋で史郎の歓迎会が始まった。

自己紹介10分で、できるだけ、詳しくと言われ、東京で生まれ、信州、松本で

高校までいて東京に下宿して東大へ通ったと生い立ちを話し好きな事は音楽全般、

特に洋楽、ジャズ、シャンソン、ゴスペル、ビートルズと答え、映画、漫才、

落語も好きですと言った。


 女の子の趣味はと聞かれると照れながら、あまり、もてないのでと言うと答え

になってないとヤジが飛んだ。第一設計部の10人が1人5分ずつで自己紹介

してくれた。それではと吉川部長がみんなで伊藤史郎君の入社を祝い乾杯をする

のでグラスを持ってと言い、それでは乾杯と言いグラスのあけた。飲むのは良い

が飲み過ぎるなよと吉川部長が言い、9時に歓迎会は終了して、山本家に戻り、

風呂に入り床についた。翌朝も30分前に出社し1級建築士試験の問題集を読ん

でいると吉川部長が感心だねと言ってくれた。

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