第18話:エミリアに癌になり昔話を語る
マリアの死からエミリアも元気がなく、レストランの調理場にも出なくなってふさぎ込んでいた。そんな時、レフとアリサが二ヶ月に1回程度、車でポルトのコスタズメラルダ・ヨットクラブへ1~2泊の旅へ連れて行く様になった。
2005年春に少しずつ元気を取り戻し調子の良い時はレストランの調理場を手伝う様になった。この年、エミリアも元気を取り戻したかに見えたのだが、12月初旬、腹痛を訴え、近くの病院の救急へ運ばれた。診察の結果、胃がんと診断された。
2006年に入り放射線治療をし髪の毛がなくなったのを悲しんでいたが体調は思わしくなかった。 春になり体調の良い時、また海が見たいというのでポルトのコスタズメラルダ・ヨットクラブへ連れていった。レフとアリサと同じ部屋に泊まって、なつかしそうに、昔話をした。
イワンがソ連のスターリンの命令でイワンが一家でシベリアのサハ共和国のオイミャコンのいく様に命じられ、マリアと、私が、小さなレフと手をつないでを連れて長いに道のりを歩いた。途中で、何回も泣くので困ったものだった。
それでも、何とかオイミャコンについた。そこでは、凍傷にならないように、何枚も毛皮をきて、生き抜いてきた。マリアが、近くの山から、食べられそうな野草と少しのジャガイモと川魚を入れた煮込み料理が冷たくなった身体を温めてくれたのよ、本当に美味しかったわ。
マリアの手料理がなかったら飢え死にしたかもしれなかったんだよ。本当にマリアには感謝だったよ。でも、その姉さんも、天に召された。次は私の番だね、仕方ない、年だからねと薄笑いを浮かべた。早く天国に行って姉さんと昔の様に歌でも歌いたいものだよと言った。
その後は、レフ、あんたのお陰でソ連を脱出して、この暖かいポルトガルに来られて本当に幸せだよ、レストランも繁盛しているし、ファミリーに囲まれて、まるで天国にいる様だよ、と言い、こんな幸せな時間をイワンにも味わって欲しかったよと泣き出した。
レフがイワンも天国から今までのファミリーの生活を見守ってくれて知ってるよと話した。今頃、天国にたどり着いたマリアと昔の様に仲むつまじく生活を始めているよと言った。私もイワンとマリアの所へ早く行きたいよと、また泣いた。
醜く年を取っていくのは嫌だ、痛みに耐えるのも、こりごりさと言った。これにはレフもアリサも何も言えなくなってしまった。もう、疲れたから、寝ると言うと、すっと寝てしまった。翌日は、マリーナが見えるレストランの席で遠くの海を眺めていた。
本当に美しい景色だね、こう言う時間が、もてるなんて夢のようだと言った。するとレフとアリサが、また連れてきてあげるから長生きしましょうねと言うと、そうしたいが残念ながら、私には、この世に残された時間が、もう少なそうだ。
でも、この景色は忘れない様に頭の中に焼き付けておきましょうと笑った。その笑顔は、まるで童女のような素敵な笑顔だった。食事をしてマリーナ最後の夜、部屋に戻り、昨晩と同じように、昔話をし始めた。
あれは、オイミャコンの夏だったよね、私とマリアとレフとベロニカで山へピクニックへ行った時、レフが何か光るものを見つけたんだよね、スコップとジャベルで掘ってみると硝子のような光るものを見つけたんだ。最初、水晶だったら良いなと思った。
その後、幼いレフが、少し離れた場所をシャベルで掘ると、同じ様なものが見つかった。合計で十個、見つけたんだよね。三つが大きく、他は、小さかった。その時マリアは驚いて、この事は絶対に他の人にしゃべっちゃいけないよと言った。
多分、あの時、マリアはダイヤモンドだと直感したんだろうね。天の神様が、マリア・ファミリーがあまりに可哀想だと思い、私たちにプレゼントを下さったのだと感謝したのさ。その後、ウラジオストク、ヤルタとソ連を横断した。
その後、レフがブリュッセルでその水晶の様なものが、ダイヤモンドだと調べてもらい、研磨して、マリア・ファミリーの宝物をスイスの銀行に預けてファミリーのみんなに分けてくれた。そして、今、暖かく、安全な港町リスボンにたどり着いた。
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