第9話:ソチへの進出と両親との別れ

 しかし今の若手が作る高級料理として舌平目のムニエル、マリアの牛肉の煮込み、鶏肉の煮込み、ビーフシチュー、最高の具材のピロシキ、ボルシチの6つ位かなと言い、紅玉リンゴとアーモンドクリームのタルト、バニラアイスのロシア風パンケーキなどのデザートは、材料の善し悪しで決まると言った。


それに対し、わかったと言い、マリアとレフで、若手が、料理作りに慣れるまでソチのレストランで指導してくれないかと告げた。レフは、良いが、マリアは高齢で無理だと言った。その後、1984年4月から若手6人とレフが月の半分、出張という形で手伝った。


 3ヶ月が過ぎて若手達の料理の味が安定してきた。半年が経ち、そろそろ独立できる位の味になってきた。後はエゴールが良い材料を手に入れる腕次第となった。スモークサーモン、キャビア、鶏肉、牛肉、豚肉、鹿肉などは、素材次第で良くも悪くもなる。


 また、カレー、シチュー、煮込みに使うスパイスはエゴールのコネで良い品物が入るようになった。1985年9月、レフが若手達だけでもOKとの許可を出した。この頃になるとエゴールの政治力でソチの有力者達をレストランに招待して豪華料理をふるまった。


 その記事を地元の新聞に書いてもらって高級店の名前を宣伝し、富裕層、観光客の来店が増えてきた。それらの努力の結果、ソチの有名レストランの仲間入りし利益もでてきた。 エゴールがレストランの名前を統一してブランド化する様に宣伝して回った。


 1985年にエゴールの商売の腕と政治力でレストランの名前は知れ渡り繁盛した。その後もエゴールはソチのレストランで儲かったお金で1986年3軒の高級レストランを買収した。そこにマリアとレフのレストランで修行を積んだ12名の若手コックが移動して行き料理を提供し始めた。


 その中の1軒を高級ロシア料理店としてエビ、かに、サーモン、キャビア、高級ワイン、コニャック、高級なオリーブオイル、高級アイスクリームを使った最高のデザートなどを揃えた外人向け高級ロシア料理店として企画した。


 その開店記念に事地域の共産党の幹部を無料で招待して、良質の料理の材料を仕入れるルートを確保した。これが、大当たりした。ソ連、第一の観光地・ソチと言う事もあって高級料理の5星・名店として大きな利益を稼ぎ出した。


 1986年7月マリアがレフに宝石の話をして、何とか国境を越え、ヨーロッパへ行き、ダイヤモンドの原石を研磨したいと言った。困ったレフは、列車で行こうと思うので時刻表を調べておくと言った。


 翌日、マリアはエゴールに昔の友人の結婚式に出るので、数日間、出かけてくると話した。ヤルタからキエフまで6時間、キエフからワルシャワへ1日。キエフ「ウクライナ」からワルシャワ「ポーランド」への列車で、ソ連国境を越える時、ソ連の税関職員が、回ってきた。


 そして、身分証明書を見せると、何しに、行くのかと聞かれたので、病院の先生の手紙を見せて治療を受けに行くと言うと、何か申告するものはないかと聞かれ、ないと答えた。すると、すぐに行ってしまい意外に簡単に国境を越えられ、ひと安心した。


 ワルシャワからベルリンへ8時間、またブリュッセルへ10時間、約3日の旅でブリュッセルに着いた。例の物は、土産用の四つの陶器製の人形の中に忍ばせてブリュッセルに到着した。市内のホテルにチェックイン。


 レフが英語でホテルのコンシェルジュに有名な宝石店を聞くと、ゴータム社を紹介され、その店に行き、袋から10個の水晶の様な物を渡して宝石の鑑定を依頼した。依頼してから数分後、別の部屋に案内されて英語で、これどうしたんですかと質問してきた。


 我が家の家宝ですと答えると、それでは答えになってない。どこで手に入れたのかと聞くのでシベリアと言うと納得した。担当者が全部間違いなくダイアモンドの原石ですと言った。あまりに大きさに驚いていた。


 先祖の家宝なんですが研磨してもらえませんかとお願いすると良いですが、担当者が、そのダイヤモンドを持って、国外に出るのは難しいよと言われた。レフが逆にどうしたら良いかと聞いた。それで我が社で全部、研磨すると言う事で良いのですね、と確認してきたのでお願いしますと言った。

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