第7話:日本旅行とヤルタへ引越

 そんな中でもマリアとレフのレストランは地元ウラジオストクの数少ない、美味いレストランは相変わらず繁盛していた。地元の役所の上層部の人が来ても無料で豪華な食事を提供したため当局からの締め付けをかいくぐって営業を続けられた。


 この頃は共産主義にも関わらず共産党幹部の腐敗、汚職が多く彼らを敵に回すわけにいかなかった。その、おこぼれとして、同時、手に入りにくい、野菜、肉、魚も不自由なく手に入れることができ、このレストランも繁盛していた。


 マリア、ファミリーは順調に商売で儲けて続けた。もちろん国民に知らされていなかったが中国との国境紛争やチェコスロバキアの民主化(プラハの春)に対して、武力介入したりしていた。


 1979年12月には、アフガニスタン侵攻という世界を敵に回しても、強硬策を取り続けた。そのため翌年1980年のモスクワ・オリンピックはソ連をあげて開催に力を入れていたが冷戦でソ連と対立するアメリカ合衆国のカーター大統領が1980年1月にボイコットを主唱した。


 その後、ソ連のアフガニスタン侵攻に反対して日本、分断国家の西ドイツや韓国、中華人民共和国やイラン、サウジアラビア、パキスタンなどといったアフガニスタンでムジャヒディンを支援するイスラム教諸国、および反共的立場の強い諸国など50カ国近くがボイコットを決めた。


 これによって全くと言って良いほど、盛り上がらないオリンピックとなってしまった。こんな暗い時代にもマリア、レフの家族には一筋の光明が差してきた。1978年にレフの長男マキシムがレストランで働いていたイザベルと婚約した。


 イザベルは、地元ウラジオストク出身、1958年生まれの20歳、その後、2人の結婚が、決まった。マリアとレフは、レストランの儲けで、大きい家を手に入れておりマリアの家にマキシムとイザベルも一緒に、住むようになった。


 翌年1979年にはマキシムの長男ブルーナが誕生し、同じにレフの長女ソフィアとアンドレ(1957年生まれ22歳)が結婚した。住まいはレフとアリサが住んでいる家に入ることになった。その後レストランは順調に売上げを上げていた。


 マリアのファミリーは車2台を手に入れた。1980年にソフィアに長男のセルジオが誕生し1981年にマキシムに長女アマンダが誕生した。ファミリーにとっては、めでたいこと続いた。マリアはレストランとで忙しい冬の日、マリアが仕事中に倒れた。


 車で病院へ運んで病室で身体を温めて、ゆっくり休んだお陰で意識をとり戻した。病名は軽度の心筋梗塞だった。医者が寒い環境で立ちっぱなしの仕事が身体にこたえて倒れたのだろうと言い、冬場は仕事を減らすようにと話した。


 できたら、もっと暖かい地域へ引っ越した方が良いかも知れないと言った。 数週間後、マリアが元気を取り戻し顔に赤みがさし笑顔を取り戻し退院してきた。その後マリアとレフがファミリーの今後の事を話し合った。


 その結果1982年レフの妻のアリサが、こんな寒いウラジオストックを出て彼女の故郷、ウクライナ南部、黒海に面した、温暖な避寒地、ヤルタへ行こう言い出した。マリアも高齢で寒さが身にしみる様になり、その意見には大賛成した。


 そこでアリサがヤルタの実家に連絡して、移住について了解を得た。手にいれた大きな家と車2台も地域の共産党の高級幹部に売却して現金を手に入れた。その後、昔から、いろいろと世話になったユーリ家族に涙で、別れを告げた。


 別れの時はマリアは、この恩は絶対忘れないと言いレストランで儲けたお金からお礼をした。ユーリも涙ながらに別れを惜しんでくれた。1982年の7月にシベリア鉄道で7日かけてモスクワへ2日間のホテルで休息してウクライナ・キエフへ向かい、その後2日かけ南下してヤルタに到着した。


 当時、ソ連では国民が長い旅をする事に当局が神経を尖らせていた。しかし病気療養のため書いた医者の手紙を持ち歩いていた。検問を受けるとその事情を話して遠くの親戚の所へ引っ越すというと了解してもらった。そして11日かけた長旅を終えて、ヤルタに到着した。

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