第2話:水晶の様な物を見つけ、南下し毛皮製品を売る

 1943年、夏の事、イワン一家4人で、オイミャコンの郊外の森に、ピクニックをかねて、木の実や野いちご、葡萄を取りに行った。その時、レフトと妹のエミリアが、大きな岩石が多く地表に突き出ている一画を見つけた。


 イワンとマリヤが掘り返してみると、偶然に光る石が3つ見つかった。よく見ると水晶の様な輝きで、太陽に当てて見ると、素晴らしい輝きを放つではないか、直感でダイヤモンドかも知れないと思った。


 そこで、他人に知られず、自分たちがわかる様に、目印となる物と共に地中深く埋めた。日が落ちてきたので、家に帰った。翌日、ツルハシとスコップとバケツを台車に載せて人に見つからない様に、朝早く、あの森へ出かけた。


 その場所についてツルハシで、その周辺を広く浅く掘り、次にスコップで岩石や土をどけた。その後、それらを4人で、慎重に探ってみると、また別の3個の大きな水晶のような物が見つかった。


 その日も夕方、日が落ちるまで、その作業を行い合計7個の水晶みたいな物を探しあてて、今後は、前と違った場所に、目印なる物と一緒に埋めた。日が落ちてから、家に戻り、この話は、他人に絶対に話さないと家族で約束した。


 その後、父のイワンは、1944年にロシアと日本の戦争に駆り出された。その後の日本軍とロシア軍のカムチャッカの戦いで、あっけなく戦死してしまった。その後、スターリンも亡くなり1946年、母のマリアとレフ、ベロニカ、エミリアは、極寒の地オイミャコンを離れることにした。


 イワンの古くからの友人で毛皮商人ユーリの家族とトラックに乗って、ひたすら南下した。夏のシベリアは、昼間は、暑く、ヤブ蚊、ブヨなど多く、トラックの長旅は、困難を極めた。2週間後、ヤクーツク到着し、そこを南下してネヴェルから東へ海の方向へ向かった。


 一週間後ハバロフスクへ到着し、そこから南下を続けて二週間、ウラジオストクの港にでた。そのウラジオストクの郊外にユーリと共に大きな家を借りて住むことにした。家の中を間仕切って、その小さい方の一画をマリア一家が住居として使わせてもらった。


 その後、ユーリは、ウラジオストクの町中の大きな毛皮屋を探しては雇ってくれる様に頼み込んだ。しかし、なかなか簡単には雇ってくれない、あきらめかけた時に、ある毛皮屋を見つけ、そこの主人セルゲイとじっくり話をした。


 セルゲイが、じっとユーリの顔をじっと見ながら考えて、じゃー俺の試験に合格したら雇ってやろうと言った。そして、倉庫から4つの毛皮を出してきた。どれも、あまり上等ではない熊の毛皮だった。


 その後、熊の毛皮のベスト「600ルーブル」、ハーフコート「1000ルーブル」、帽子「200ルーブル」、マフラー「400ルーブル」の合計で2200ルーブルが、仕入れ値だと伝えた。これら全部を売って利益を俺に渡すなら、売ってやると言った。


 もし赤字や売れ残りが、でたら、それで不合格で、雇わないという条件で、テストを受けるかと、聞いてきた。もちろん、そのテストを受けると言い2200ルーブルを払って買い取った。ユーリーは、その毛皮は直感で高いと思った。


 うまく工夫をして売らないと、そんなに簡単に利益が出ない事を悟っていた。自宅に帰り作戦を立てたのだが、もし自分が、お客だったら、間違いなく買わないであろうB級品をどうやって売るか、考えあぐねていた。


 そんな時に隣に住むマリアと妹のベロニカが裁縫上手で、綺麗な刺繍の服を作って、売っていたのを思い出した。そこでマリアに、どうやって高く見せたら良いか、相談を持ちかけた。するとベロニカと2人で、3日いただければ、きれいな刺繍をつけて見せますと語った。


 そして、毛皮商品を全て、持っていった。3日目の晩、刺繍加工し終わり、マリアが商品を持ってきた。帽子の内側に、綺麗な刺繍の布を当て、ベストとハーフコートの前あわせの所に、縦長の刺繍入りの布をつけた。


 マフラーには目印になるような美しい刺繍の布を外から見えない様にうまくつけてきた。早速、翌日、町に出て町の1流ホテルの近くで、金持ちそうな夫婦や旅行客に売って回った。やはり思ったとおり、刺繍の美しさをみて、その日のうちに全商品が売れた。

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