極北のダイヤモンド

ハリマオ65

第1話:ソ連邦の発足とスターリン粛正

 1914年に勃発した「第1次世界大戦」は世界を巻き込む大戦に発展、各国総力戦に突入してロシアの国内産業は、停滞し、物価高騰と生活必需品の不足に見舞われてしまった。その後、1917年11月7日に、レーニンによるロシア革命がおこり、帝政ロシアが終わりを告げた。


 スターリンは、1912年から、レーニンの仲間のボリシェヴィキ達の活動に加わり、機関誌プラウダの編集に当たる。革命後は人民委員会議「ソヴィエト政権の内閣に当たる」民族人民委員となりレーニンの片腕として次第に、その地位を築いていった。


 1922年にロシア共産党の書記長となる。1924年のレーニンの死後、共産党の主導権をめぐってトロツキーと激しく対立するようになった。その後、トロッキー達を排除し、1929年までには党権力を握り、スターリン政権をつくりあげた。


 1929年、資本主義世界では世界恐慌が起きドイツ・イタリア・日本などのファシズム国家が台頭、一方の先進的な帝国主義諸国はブロック経済を形成し自国の利益を守ろうとした。そして世界中が混迷を深め、混沌とした暗黒の時代を迎えた。


 その頃、スターリンがソ連に政権を樹立した。彼は、第一次五ヶ年計画で、政府主導の農業事業の集団化「コルホーズ」を進めて合理化と統制を強化し、脆弱「ぜいじゃく」な工業力を強化すべく工業重点化政策を推進した。


 結果として帝政時代からの課題であった農業国から工業国への転身を果たし、ソ連が世界第2位の経済を有する基盤を作り出した。一方で急速な経済構造の改革は飢饉などの形で国民に犠牲を強いた。


 これに、反対派に対する厳しい弾圧も合わさって多数の犠牲者を出すことになった。政府主導の農業事業の集団化による農業政策の混乱によって深刻な食糧不足が発生し1932年から1933年の飢饉へと繋がった。


 反対派への弾圧は、グラーグ「収容所」に収監された者だけで100万名以上。これを免れた数百万人もシベリアなどの僻地に追放処分を受けた。強権支配は、大粛清「だいしゅくせい」と呼ばれた。


 その後、大規模な反対派摘発で、頂点に達し、軍内の将官を含めて、数十万名が、処刑あるいは、追放された。多くの人を罪人に仕立て上げて大規模に、厳しく、取り締まって不正を正す行動をとった。


 この小説の主人公であるイワンとマリアも、その大粛清の犠牲者になった。そして、モスクワ郊外の村で野良仕事から帰る途中、KGB「ソ連国家保安委員会」の検問で多くの村人と共に国家反逆罪を言い渡され、極北の地、シベリアのオイミャコンへの追放処分を受けた。


 その後、イワン達と同じ様にして、シベリア送りになった多くの男達の手で、大きな2階建てのアパートを建て、室内にトイレも作った。世界一寒い地域なので、9月から5月までは、薪や石炭で、常に、暖炉をたいて過ごしていた。たどり着いた先は、世界一寒いと言われる、現在のサハ共和国のオイミャコン。


 シベリア・オイミャコンの冬は、マイナス50度と寒く、水道も凍るので使えない。そのため、水は川から運んでくるしかないる。洗濯物は。屋外に干すと、すぐに凍り、数分経つと服の表面に水分が吹き出し氷のかたまりになる。それを払い落とせば終わり、見事に乾いているという具合だ。


 また、常に車のエンジンをかけっぱなしにしていないと止まってしまう。そして、再び、車のエンジンが、かからなくなってしまう。しかし、夏は暑く7~8月は、30度以上になる。つまり、年間の気温差は、100度近くになる世界で最も過酷な住環境の地域と言える。


 しかし、住人に長寿の人が多い。その理由は、病原菌やウイルスも冷たすぎて、死滅してしまう。冗談の様な事が、成り立つ程の厳しい環境だった。仕事と言えば、ただ、毎日、毎日、ひたすら土を掘り返し、採掘した岩石を運ぶだけだ。


 その岩石を作業場に持っていくだけの単純作業。実は、その岩石の中から大きなダイヤが見つかる事があった。イワンとマリア夫婦の間に1935年、レフという男の子が誕生し、続いて1937年に女の子エミリヤが誕生した。

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