第32話:最終章・木下信夫が晴耕雨読へ

木谷建設に入社した佐藤君は、マンスリーマンションの成功で課長になり、

年収が、手当を含めると年収500万円を越え、喜んでいた。やがて2019年

を迎えた。


 そして、また豪ドル高になり100.5円となったところで950万ドルを全部

売却して、9.5億円を手に入れた。2020年を迎えた。


2020年8月開催の東京オリンピック、暑さを考慮し、9月からの開始となり、

パラリンピックがする終了する頃には11月になっていた。その頃、東京の介護

老人が増えすぎて、東京だけでは対応できなくなった。広さ15m2以上の民間の

賃貸施設を借り上げたり、東京都だけでは支払いきれない資金を国が肩代わりする

事で補助金を増額する事となった。


 そうして、信夫は稼働率が60%前後で低迷していたマンスリーマンションを

買い取る決意をして鬼怒川専務に電話したところ、渡りに船とばかりに、話に

乗ってきた。価格交渉をしたいと言い2人だけで会いたいと言われ、食事しながら

4施設で3億円でどうだと鬼怒川専務が言うので4年間の収益があるから2億円と

信夫が言うと、それ勘弁してくれと専務が言った。


 そこで従業員はどうするのですかと、信夫が聞くと、もちろん全員解雇と言うので、それは可哀想だと言い、以前投資した1億円を入れて1億円追加融資して従業員ごと買うと言うのはどうかと持ちかけた。従業員ごと買うと言うことは、退職金やその他の費用を全額持つと言うことですと付け加えた。


 厳しいなーと専務か言うと、木造3階建てで、部材は、アパートで使う安物じゃ

ないですか、1棟1億円と言いますが、原価は6-7掛けで6-7千万円でしょ。

4棟で、2億円、1棟5千万円なら、良い取引だと思いますがねと言った。専務が

ちょっと待てと空を仰いで、足元も見やがってと悔しがり、わかった、その代わり

即金で支払えというので1億円直ぐにSKSハウスの口座に振り込みますと言い、

ごちそうさまでしたと、信夫は部屋を出て行った。


 その姿を鬼怒川専務が苦虫をかみつぶした様な顔で見送った。信夫は銀行へ

行って1億円送金の手続きを取った。 翌日、信夫は、4つのマンスリーマンション

を回り事情を説明した。そしてマンスリーマンションをグループホームに衣替え

して、職員全員を雇うと宣言した。


 その後、友人の佐藤君に依頼して介護職員を募集してもらい、外国人を含めて

20人を揃えて介護補助員として、中高年の元気な方のパート・アルバイトを

募集し20人が集まった。やがて2021年となったが、新年の、めでたい時に、

木谷建設の木谷社長が心臓発作で亡くなったと連絡が入った。


 その後、父からも頼まれて信夫が木谷建設の社長に就任した。そこで4つの

マンスリーマンションに食堂や大浴場、手すり取り付けなどの工事を木谷建設に

発注して合計2億円で改修工事に入った。法律上、経理のことを専門家と契約

したりして木谷建設の従業員全員を1人も解雇せずに雇い続けることを宣言した。


 首都圏の老人施設のニーズが多いのを知って千葉県内の改修可能な寮、ホテル、

旅館、ゴルフ場のクラブハウスも含め、しらみつぶしに探して10施設が回収可能

だとわかり、信夫が7億円を投じて2021年中に改修工事をする事にした。

木谷建設の関連会社、SKSハウス、IFホームを通じ、格安優良な建築資材を

調達し、改修工事を終了した。


 その後、東京と国からも補助金をもらい、従業員の給料を払い、従業員と同じ

程度の収入しか入らないが信夫は木谷建設の名前を木下建設に変えて正式に

社長になった。


 その後、インターネットで外国人客用のマンスリーマンションのニーズ大きいの

を知って、木造3階建てのマンスリーマンションをSKSホームの鬼怒川専務に

格安で作らせ経営を始めた。落成式の日は曇りの日だったが、みんなで祝杯を

あげるときに、木下建設の船出を祝福してくれるように雲間から太陽の光が

差してきた。


 この時、何故か、信夫は、これで、やり残した事はないと清々しい気持ちで

引退を決意した。そして仕事が一段落した頃、建設会社の実務を全て、佐藤君に

任せ、木下建設社長に就任させた。


 社長退任後、木下信夫は建てたマンスリーマンションと安房小湊の家を行き

来して、釣りをしたり、本を読んだして、晴耕雨読の余生を送り、奥さんの

和美さんと仲良く、冬でも暖かい南房総で2人で暮らしたそうだ。(終了)

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海彦の挑戦 ハリマオ65 @ks3018yk

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