【二】
破邪丸の父・
管領とは「
少将は幼時より才気煥発。深遠と陰湿の波を乗りこなし、狡猾な公達らと堂々と渡りあった。彼の先達たる前管領・
私たち五人と忌み子の暗闘は、止むことなくずっとつづいている。周囲に
九歳となった破邪丸に、少将は
弾正は熱心に厳格に、破邪丸を教育する。その熱はしかし、破邪丸自身には伝わらない。武の鍛練のときには三郎が顕現し、文の講義には私が出ばるからだ。破邪丸と六郎は眠り、姫は文武に関心がない。次郎と忌み子は眠ることなく貪欲に、弾正の熱を吸収する。競いあうための智恵と力をつけつづけてゆく。
弾正の一子が、破邪丸の学友となる。「
子龍丸が
「子龍丸。おまえは武略で、若を支える者となるのだ」
弾正はくりかえし子龍丸に言い、「若、殿の真似はなさいますな。若は聖賢の道を歩まれませ」と私たちを諭す。権謀と帝王学を、弾正は私たちに教えない。次郎と忌み子は、それを少将のやりようから学びとる。この暗闘に真に必要となるのは、弾正が教えないことである。けれど弾正の教えは、破邪丸が生きてゆくためには身につけておかなければならないものばかりである。次郎も忌み子も、そこを分けて考えている。内面の暗闘を制するだけでなく、外界での生を成りたたせなければならない。少将の跡を継いで、管領として外界を支配するために。
三郎は純然に強さを求め、私は詩道に邁進する。姫と六郎は、俗世に関心がない。破邪丸はのうのうと生き、次郎と忌み子だけが同じ野心を持つ。
弾正は少将の
弾正の教えを乞うまでもなく、破邪丸は仁者である。賢いとは言いがたい。陰謀渦巻く世界を乗りきれやしない。そのあたりのことは、次郎にまかせれば問題ない。次郎もそのつもりでいて、忌み子との暗闘に傾注する。忌み子に体を奪われてしまっては、元も子もない。
開玉六年(一四八五)。十五歳となった破邪丸は元服。名を「
「
慶滋家の
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