影鏡
錫 蒔隆
【一】
兇兆と忌まれた片割れは殺されて川に流され、体はひとつになった。忌み子として死んだはずの片割れはしかし、生に執着した。魂として現世にのこって、生きのこった破邪丸に憑いて雌伏した。私たち五人は、そのときに生まれた。私たちは双児の魂ふたつの弟妹、いや......愛欲なき交わりのすえに生じた、観念の子らである。
破邪丸の体を奪わんとする忌み子から破邪丸を守るために、私たち五人は結託する。私たち五人は慶滋破邪丸という一個の肉体のうちにあって、たがいにたがいを識別する必要がある。だからそれぞれに、名が必要であった。そこに詩的装飾は必要ない。
原初からあった私たちの父たる主人格・破邪丸は、私たち六人の存在も暗闘も知らない。私たち五人を生みだすことで、忌み子からおのれを守る。私たち六人が体に顕現しているとき、彼は眠っている。なりゆきも辻褄も知らず、のうのうとすごす。私たち五人の存在意義は、それに尽きる。
無類の善人、底なしの愚者。
忌み子はその、破邪丸の心根を憎む。どうにかしてその純潔を
私たち五人のまとめ役たる第二の人格を、
次郎は私たち五人のなかで、一番の切れ者である。必要とあれば、残虐も非道も厭わない。その性質は破邪丸のそれからかけはなれ、忌み子のそれにもっとも近い。そうでなければ、忌み子と立ちまわることなどできない。毒を制するものは、毒でなければならない。
第三の人格を
第四の人格が
第五の人格は私たちのなかで、もっとも観念的ではないだろうか。
第六の人格を
「ほかの連中を見ろ。おまえの心なんざ、どうでもいいんだ。おまえを贄に、のうのうと生きつづけるんだ。おれの側につけ、わるいようにはせんから」
忌み子は六郎を
私と次郎と三郎と六郎とで忌み子を封殺しかけたとき、それを阻んだのも姫だった。「
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