第37話 藤原有人の才能と悪癖


 遭難者救出という使命を抱えた俺たちは、本来なら、すぐにでも岩の迷路へと足を踏み入れたい。


 ここまでに、時間があまりにも経ちすぎている。


 要救助者を放置するのは、すでに限界であった。


 ただし、『こういう時こそ、一歩立ち止まって正確に状況を把握すること』という、九谷さんの教えが、俺の中では生きている。


 俺たちは、自分たちをここへ運んできた、巨大滑り台へと、一旦足を戻した。


「ふむ、やはり跡があるな」


 鏡面さながらに磨かれた、滑り台の表面。


 ルシュフの言う通り、そこに曇ったような傷がついている。


 それは人間のお尻の幅にして、ちょうど二人分。


「有人と宮嶋さんが、地下にいるのはこれで決まりだ」


 どれほど濃厚でも、あくまで疑いに過ぎなかったものが、ここでようやく確定事項に変わった。


「天屋、言いにくいことなんだが……」


「どうした?」


「はっきり言うぞ。二人が遭難してから相当な時間が経過している。この岩迷路に中にだって幻魔獣はいるだろう。両名がすでにこの世の人でないことも、覚悟だけはしておけ」


 神妙な声で俺を諭すルシュフ。


「うーん、大丈夫だよ。きっと」


 対照的に、俺は軽い口調で言い返した。


「そ、その自信はどこから来る?」


「遭難しているのが、あの藤原有人だからさ」


 あの異常な才能を有した男子が、そうそう幻魔獣にやられるとも思われない。


「才能? ああ、そういえばさっきも言ってたな。才能とか悪癖とか」


 さすがに、この場に足を止めたまま、話しつづける訳にもいかない。


 俺たちは、とりあえず、岩の迷路へと足を踏み入れた。


 細い道のりは、左右に上下に、曲がりくねりながら、延々と続いている。


 道はいくつにも分かれ、また合流する。


 迷わないように赤剣で印を刻みながら、俺たちは奥へと進んでいった。


「それで、遭難者の才能というのは、どういうことなんだ?」


 周囲への警戒を怠らないまま、ルシュフが訊く。


「ああ。……この話をすると少し長くなるんだけど」


 藤原有人。


 彼の才能はその本質的部分に端を発する。


 そのため、正確な理解には、彼の過去語りが欠かせない。


「藤原って奴はあれだろ。ログハウスの中でやたら口八丁していた奴だろう。軽薄な人間と言う印象しか持ち合わせていないが……」


 ルシュフは、九谷さんの鞄の中から、歓談中の俺たちを、ちゃっかり観察していたらしい。


「ま、それも間違いではないんだけどね」


 ただし、厳密に正確とも言えない。


 あいつにも、なかなかややこしい生い立ちがあったのである。


 突然だが、有人の父の名前は藤原雄人たけひと


 世界で、総理大臣より有名な日本人、と称される大実業家である。


 牛広町にあった小さな家電修理屋を、一代で世界的な電機メーカーへと成長させた立役者。


 そして、そのFJ電機を中核とした、巨大企業群の総帥でもある。

 FJグループは、子供のお菓子から軍事兵器までを取り扱い、世界で百万人以上を雇用している。


 現在86歳の藤原雄人の風邪を引いただけで、各国の株式市場が大きく乱高下するほど、世界経済への影響力は大きい。


「そ、そんな凄い人間を父親に持つのか?」


「ああ。その藤原雄人の一人息子が有人で、将来のFJグループ総帥と言うわけだ」


「あいつがねえ。……実家が貧しかった俺にはうらやましい話だ。さぞかし幸福な幼少期を送ったんだろうなあ」


 ルシュフが妬むような眼になる。


「あいつの出自を知っている人はみんなそう言うんだけどね……」


 ところが実際はそんなにうらやましくもない。

「なんでだ? もしかして、巨大企業の跡継ぎとして、過酷な英才教育を施されたとか?」


「いや、そんなことはない。むしろ、徹底的に甘やかされて育った。その辺は、今のあいつを見りゃ分かるだろう」


「……そりゃそうか」


「問題は、有人を可愛がるあまり、父親に、組織の長としてふさわしくない行動が目立ち始めたことだ」


 当時子供だった俺の目から見ても、それはよく分かった。


「ああ、はいはい。そっちのパターンね」


 ルシュフが納得した様にうなずく。


「そう。そっちのパターンなんだ」


 子供を溺愛するあまり、傑物の人徳に陰りが生じる。


 そしてその隙が、周囲の人間に悪心を抱かせる。


 古今東西、いくらでもある話だった。


「むむ? 分かれ道だな」


 この時、岩の迷路を進む俺たちは、三叉路に差し掛かった。


「どの道にする?」


 現状で、有人につながるヒントらしいヒントは無い。


「勘で行くしかないな。……よし、こっち」


 ルシュフの選んだ左の道を、俺たちは突き進む。


「それで、さっきの話の続きだけど、有人の奴は、その恵まれすぎた身の上と、父親の度を超した愛情が災いして、子供の頃からトラブルに見舞われ続けた」


 有人に気に入られて、藤原雄人の覚えをよくしたい。


 有人を介して、父親に対して影響力を行使できないか?


 何でもいいから甘い汁を吸いたい。


 そんな、腹に一物抱えた大人たちが、あいつの周りに群がった。


 当然、問題が立て続けに起こる。


「子供に本気のおべっかを振るう大人の姿なんて、小学生の俺には、そりゃ不気味に映ったなあ……」


 でもまあ、そんな連中はまだかわいい方だった。


 ヤバかったのは、有人に対して明確な悪意をもった連中である。


「ライバル企業の連中とかか?」


「それもあったし、FJグループ内で、有人の父親の独裁に反対するグループということもあった。後はあれだね。お決まりの反社(会的勢力)」


 一番危なかったのは、有人が金目的の半グレ集団に誘拐されてしまった一件だろう。


 ちなみに、その時一緒にいた俺も、まとめてさらわれた被害者である。


「よ、よく、こうして無事でいられたな」


「そりゃあね。……犯人たちが、その時一緒に遊んでいた、志童と美月もセットで誘拐したからね」


 あの爆弾みたいな二人をさらった時点で、犯人たちの命運は尽きていたのだ。


「……誘拐犯に同情した俺は、どうかしてるのかな?」


「多分正常だよ。被害者の俺だって、多少憐みを感じたもんだ」


 志童が企み、美月が過激に実行する。


 当時の俺たちの一番ヤバいパターンに当たり、彼らは大やけどを負ってしまった。……比喩ではなく実際の症状で。


「ま、その話はさておき。ここからが本題だ。そんな剣吞な幼少期を過ごしたことで、有人は非常に臆病な性格に出来上がってしまった」


「けっこうふてぶてしそうに見えたけどな」


「一見するとね。でも、根っこの部分はそうじゃない。あいつは、枯れ尾花を見て、幽霊どころか宇宙怪獣と誤認するほどの臆病者だ」


「……ふむ」


「そして、その常軌を逸した臆病さが、あいつにある才能と悪癖をギフトすることになる」


「才能と悪癖ね。ま、長所と短所はコインの裏表だからな」


「その通り。それで、その才能というのは、ズバリ危機回避能力だ」


 自分に対する危険を鋭敏に感じ取り、それを避ける能力。


 あの志童が、有人のそれを『霊感』とまで称えていた。


『僕だってさ、危険を読み取る能力については人並み以上なつもりだよ。でも、有人とはまるで比較にならない。彼は最小限のヒントから答えを紡ぐ僕とは、レベルが違うんだ』


 ノーヒントで、完全な答えと解決法を導いてしまう彼の能力に、志童は並々ならぬ敬意を払っていた。


 もっとも、

『……使う人間がもう少しまともだったら、この世の中をもう少し住みやすくできただろうにね。本当に惜しまれるよ』


 と言う発言から察するに、使用者自体は尊敬されなかったようである。


「あの病気みたいに頭のいい倉木がそう言ったのか」


 ルシュフも、やっと事の重大さに気付く。


「だから、俺は有人の無事については、ほとんど心配をしていないんだよ。だって、そもそも考えても見てくれ」


 ここまでの道のりだって、大概だったじゃないか。


 あの泥口マッディ・マウスだらけの森を、無事歩ききった。


 迷夢宮に迷い込むも、あの小さな穴を正確に見つけて土巨人から逃れる。


 俺たちが死にかけた絶叫スライダーを、無傷で滑り切っている。


「い、言われてみれば確かにな。随分しぶとい人間だとはうすうす感じていたが」


「ただ、そっちの方はそれでいいとしても、もう一つの方が問題なんだ」


「才能と対になってる、悪癖という奴か」


 俺は、無言でうなずいた。


「あれさえなければねえ。あいつも、もう少しまともな奴なんだけども……」


 美月をはじめとした、数々の友人たちから、憎悪を一身に集めることもなかったろうに。


「簡潔に言うと、自らの保身を優先するあまり、非人間的な行動に走ってしまう」


「……?」


 ルシュフが愛らしく首をかしげた。


 危うく、再度貪りつきそうになってしまう。


「正直、よく意味が分からんな。要は、自分可愛さの余り、修羅場でみっともない行動を取るってことか? だとしたら、それを悪癖と呼ぶのは可哀そうだぞ。人間も悪魔も、今わの際に綺麗でいることなんて難しいもんだ」


 生死の境界が職場のルシュフは、土壇場における生物の醜さについて寛容だった。


「その点は俺も同感だ」


 命の危機に醜くあがくことは、良い悪いで、くくれるものではない。


「だろう」


「でもさ、物事には限度と言うものがあってね……」


「?」


「あいつの醜さは、限界をあまりにも超越しすぎているんだよ」


「……?」


 ルシュフが、今度は首を逆方向に傾けた。


「うーん。俺にはやっぱりピンと来な――」


 ィィィィィィィィ


「「!!?」」


 知らぬ間に緩みかけていた緊張が、一気に最大限まで張りつめた。


 イィィィィィィィ


「げ、幻魔獣のいななきか?」


「分からん。だが、気を抜くな」


 セェイィィィィ


 周囲の岩盤がわんわんと反響して、音源はとても分からない。


 ただ、音が少しずつ大きくなっていることだけは確実だ。


 音の輪郭も鮮明になりだす。


 リィヨウセェェェイィィィ


「んん!?」


 よく聴けば耳慣れた声の気も?


『おおーい、リョウセーイ!』


 俺とルシュフが顔を見合わせる。


「有人の声だ。間違いない」


 俺たちは、声のした方向へ駆け出した。


 所どころ細くなった通路を、肩を狭めて、スピードを落とさず通り過ぎる。


「おい、有人! 俺はここだぞ!」


『ああ、よかった。さっきのはやっぱり良星の声だった』


『本当ね。本当に天屋くんが来てくれたのね』


 宮嶋さんの声もした。


 二人とも無事でいてくれた。


 安堵感が高揚と混じって、俺はさらに走る速度を上げる。


 細道のあまり、時々、素肌を岩壁がこすり上げるが、そんなのは気にもならない。


「近いぞ、もうすぐそこだ」


 ルシュフの言葉通り、俺たちは順調に接近を続けた。


 だが、そんな俺たちの前に大きな障害が立ちはだかる。


 分厚い一枚の岩盤だった。


「くそ。どうにかならないか?」


 声の聞こえ方からして、この岩盤のすぐ向こうに、確実に二人がいる。


 しかし、向こう側へと続くルートがまるで見当たらない。


『ああ、すぐそこに良星がいるっていうのに』


 岩盤越しに、有人の涙声が響いた。


「とりあえず、岩盤に沿って同じ方向に移動してみよう。運がよければ抜け道が見つかるかもしれない」


 ルシュフの提案を、口を岩盤に押し当てて、向こう側の二人に伝える。


『わ、分かったわ。じゃあ、私たちは岩盤に向かって右に進むから』


 岩肌に耳を触れさせて、正確に声を聞き取った。


「それなら、俺たちは向かって左に行く」


 岩盤を挟んで、俺たちは並走をはじめる。


 岩盤は想像以上の長さで、どこまでいっても途切れる様子が無い。


「ん?」


 俺とルシュフの前方に、奇妙なものが見え出した。


「光……か?」


 この薄暗い洞窟の中にあって、まばゆい光点が小さく確認できる。


「地下で光とは妙な話だな」


 ルシュフの声にも警戒感がにじむ。


 俺たちはさらに走る。


 有人と宮嶋さんの足音が鮮明になりだしたことから、いくらかは岩盤が薄くなっているのかもしれない。


 そのことは、俺たちの意識の中で、いつの間にか優先順位が二番目である。


 今の一番の気がかりは、どんどんと輝きを増し、いまでは地下に沈んだ太陽のようになっている光源のことだった。


『あった! 岩盤があそこで途切れている!』


 有人が歓喜の声を上げた。


 同時に、二人が猛ダッシュする足音。


「おい、まて人間ども。前方に妙な光がある。一旦停まって――」


 ルシュフの進言は手遅れであった。


「きゃああああ」


 宮嶋さんの甲高い絶叫が、空気のみを伝って、クリアに響いた。


「ええい、クソ」


「慎重に様子を見たかったけど、仕方ないな」


 俺たちは光に向かって全力疾走する。


 ついに、俺たちの視界全てがまばゆい光芒につつまれた。


「……う、うぐっ」


 薄闇に慣れた目が、明るさに順応するのに、少し時間を必要とする。


 この間、敵が何もしてこなかったことは、純粋に幸運だったと言えよう。


 敵とはもちろん、幻魔獣である。


「こ、これは!」


 厚い岩盤が途切れた先にあったものは、広大な地底湖であった。


 地底湖の真上の岩には大きな裂け目が入っており、そこから地上の光が直に入ってきている。


 光が、湖面に乱反射することで、俺たちの目をくらませる程強烈な輝きとなっていたのだ。


 そして、その巨大な湖は、湿度を好む泥口マッディ・マウスどもの、絶好の巣になっていた。


「た、助けてええ」


 湖のほとりで、マッディ・マウス共に囲まれて、へたり込んだ宮嶋さんを発見する。


「ゲゲゲ」


「グゲゲゲ」


 突然降ってきたご馳走に、マッディ・マウス共は、汚い歓声を上げていた。


「助けて! 有人!」


 彼女は、俺たちの存在にまだ気づいてなく、同道していた男子に向かって救難の声を出した。


「ふふ、ふふふふ」


 有人が笑った。


 自分が好意を寄せている女性の窮地に、彼は頬を緩めているのである。


「なんだ? 恐怖でパニックになったのか」


 ルシュフがそのような疑いを抱いたが、俺は、長年の経験から、それが見当はずれだと気づいた。


(いかん! 有人バカの悪い癖がまた出ている)


 有人は、冷酷な眼差しを、おそらくは秘密の交際をしているであろう、女子に向けた。


「俺が助ける? 君を? ふふふ、バカ言っちゃいけない」


 救助を懇願するものを、はるか上から見下す。


 人間が決してやってはならないことが、こうも簡単に行われた。


「どうして俺がそんなことをしなくちゃならない? この状況で俺がするべきことは何もないんだ。それは明白だろう」


「?」


 ルシュフは、いぶかし気な目で、観察するように有人を見る。


「俺に君を助ける能力は無い。それは俺が一番よく知っているし、この場では二番目に君が知っている。そう、君は知っているんだ。それでも、俺に助けを求める。恥ずかしいとは思わないのかい?」


「な、何を言っているの、有人?」


「君は俺をめるつもりなんだ。俺が助けに行こうものなら、その手がアリジゴクのように動いて、素早く俺を引きずり込むつもりなんだ。君は俺を怪物どもに差し出して、引き換えに自分だけ助かる腹積もりなんだ。ひひひひ、その手に乗るものかい。ひははは」


 大笑いで手を叩く有人を、宮嶋さんは、恐怖の目で見た。


「非国民め。恥を知れ! 死に際は綺麗にすべしという日本の素晴らしき風習が、君には決定的に欠如している」


「ど、どうしちゃったの、有人?」


 ぽろぽろと、涙が宮嶋さんの目から零れた。


「どうして私にそんなひどいことを言うの? どうして私がそんなひどいことをすると思うの?」


「いひひひ。どうしてかって? 決まり切ったことを。そんなのは簡単なことさ。もし俺が君の立場だったら、間違いなくそうするからだよ」


 なんら悪びれる様子もなく聞く、藤原有人は言ってのけた。


 言葉を失う宮嶋さん。


 この間も、真珠のような涙が、彼女の瞳を飾りつづけた。


「おうおう、美しいねえ。だが、女性の涙と言うのは飾りじゃない。それは恐るべき兵器だ。男の心を惑わし、良心に訴えかける危険物だよ。だが、俺はダマされないぞ。俺が仏心を出したが最後、君は邪悪な本性をむき出しにするんだ。いひひひひ」


「……」


 宮嶋さんは、もはや何の言葉も発することなく、虚ろな目で、恋人だった男子を見ていた。


「なんということだ! こんなレベルのクソが人間界にはいたとは……」


 ルシュフの声からは、人類全体に対する怒りが感じられた。


「……」


 俺は、同族として、いまにも消え去りたい気持ちでいっぱいであった。


「悪い奴じゃあないんだ。有人は、けして悪人じゃないんだよ」


 同じ人間として、友人代表として、必死の弁明を行う。


「ただ、ちょっと、窮地における自己表現の方法を、著しく間違えているだけなんだ」


「あれは表現力の問題じゃあない。知的生命体として致命的な欠陥だ。魂が腐っているんだ」


 ルシュフにぴしゃりと言われると、


「そ、そうかもしれません」


 と、俺は顔をうつむかせた。


「「「ゲェエエエエ!」」」


 痺れを切らしたマッディ・マウスたちが、ついに宮嶋さんに飛びかかった。


「ひひひ。さすがの俺も人間が食われるところは正視できやしない」


 そう言って、有人が惨状に背を向ける。


「……もういいかな? 幻魔獣の方々、きちんと残さず食べてくれただろうか? もし、中途半端に原形をとどめた部分があったりしたら、トラウマになっちゃうよ」


 言いつつ、有人はこちらに向き直った。


「……げげっ!!」


 彼が目にしたもの。


 それは当然、素早く幻魔獣どもを駆逐し、彼女を救い出した、俺とルシュフの姿だった。


「「「「――――」」」」


 魂まで凍えるような静寂が場を満たすのは、避けようがない。


 全員が身じろぎ一つしない空間。


 その中で一人、激しい変化を起こしはじめる人がいた。


「………ぐぐぐぐ」


 宮嶋さんだ。


 悲嘆にくれていた少女の顔が、ゆっくりと夜叉のものへと変貌していく。


 正義も理も彼女にある。


 怒りの炎を妨げるものは何もありはしない。


 当然、俺にも止めるつもりはない。


「ふじわらあああああ!!」


 地面にへたり込んだ状態から、一気に最高速に達した肉体が、正当な復讐に走

る。


「ひ、ひいいい、ど、どうか命ばかりは」


 命乞いをする有人はあっという間に、岩の地面に組み付される。


 ドスン ゴズン


 鈍い打撃音が、地底湖のある風景に、いつまでも木霊するのだった。

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二色の魔封士 アリムラA @larala

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