水の星のプリンセス
結城藍人
水の星のプリンセス
「参ったなあ」
俺は自分の船の上で途方に暮れていた。周り一面、見渡す限りの海。そりゃ当然だ。ここは惑星アクアリス。海陸比が九十九対一という水の惑星なんだから。
よりにもよって、目的地とは言えこんな星に不時着しないといけなくなった運命を呪いたくなる。一応「銀河連邦」に所属しているとはいえ、保護観察惑星。つまり惑星の文明度が恒星間航行レベルに到達しておらず、原住民に対する過度の干渉が禁止されている星なのだ。もちろん
せっかく小さいとはいえ宇宙船を手に入れて運送業者として独立したばかりだというのに、その肝心の船をいきなり壊す羽目になるとは。全長百メートル、二千トン級の高速武装貨客船「オウル」号。それが俺の愛船の名前だ。中古だが、元は連邦軍の艦隊随伴型駆逐艦だったものが民間放出されたのを改装しているので宇宙空間での加速力は非常に高い上、ワープ能力も民間船にしてはハイレベルだ。軍艦だった頃の武装はもちろん外されているが、民間の警備会社や傭兵会社が持てる装備で再武装してあり、一応口径十センチのタキオン・ビーム砲と亜光速ミサイルくらいは積んでいる。治安のいい銀河系中枢星域の定期航路ならともかく、渦状肢先端部付近の辺境航路を飛ぶ貨客船なら宇宙海賊対策に一定以上の武装は必要だ。
その紡錘形の優美な船体の一部、右舷船尾方向に大きな損傷があるのは、宇宙海賊の十二センチタキオン・ビーム砲が防御スクリーンを貫通したのを喰らってしまったためだ。その海賊船は粉々に吹き飛ばしてやったけどな。どうやら、今回の積み荷を狙ってきたらしい。
積み荷は、今この星で流行している疫病の治療薬の材料になる植物の種とその治療薬を作る精製装置だ。種のエキスを抽出精製してしまうと酸化が進んで半日と効果が持たないらしく、現地で精製する必要があるんで俺が材料と精製装置の両方を急送することになったワケだ。いや、多く流通する種類の薬ならきちんと酸化防止したカプセルになったりするんだろうが、レアな病気らしくて、きちんと薬として作る方が高くつくので、より安い精製装置レンタルの方を選んだらしい。輸送の依頼料もそんなに高くはなかった。
それでも人命に関わる仕事だから普通なら
自動修復装置が強化セラミック樹脂を吹き付けて内側の穴をふさいでいるから、この傷から海水は入ってこないし、元が大気圏内空戦や潜水戦も想定して作られた軍艦だからこうして海に浮くこともできるものの、長いことこうしていたくはない。外装以外の主立った損傷は
救難信号は発信しているのだが、この星の宇宙港の管制官からは連絡が無い。もしかしたら自動の誘導装置しかない無人港かもしれない。
……そうだとすると最悪だ。恒星間通信の原理は船をワープさせるのと同じ超空間歪曲だから、それを行える
いや、自動装置があるなら救難信号を受信すれば自動的に他星系へ中継してくれるはずだから、待っていれば航宙保安庁か銀河
長期航行に備えて食料は積んであるし、蒸留装置があるから、これだけ水がある星なら渇きの心配もいらない。日常生活に必要な機器は
いやまあ、初仕事を受注した運送業者としては、期限までに荷物を届けることが最優先。幸い、既に目的地であるこの
とりあえず壊れかけてた
そう思ったとき、フッと気配というか、視線というか、そんな物を感じて振り返る。
「「あっ!?」」
驚きの声は二つ。俺の声と、彼女の声。
水面から顔を出していたのは、長い金髪を海に流したとびっきりの美少女だった。いや、これで男の娘だったりした日には目も当てられないが、声からも女の子だろうと思える。
「あなたは、他の星から来た方ですね?」
きれいな連邦標準語での問いかけが来る。言葉は通じるようだ。保護観察惑星とは言っても、原住民が自ら連邦の事を学ぶことは禁止されていない。彼女は、きっと他の星や銀河連邦に興味があるに違いない。
「あ、はい、病気の治療薬の材料と精製機器を届けに来ました。俺……いや、私はオウル高速輸送社の社長兼船長、ハヤト・トーゴーと申します」
よく分からないが、こんな美少女(推定)が悪人なワケがない! と言うわけで、勝手に地元民の代表と見なして丁寧に名乗る。よしんば一般市民Aだったところで、どこで評判が
「まあ、やはり薬を届けに来てくださった方でしたのね。私は依頼をしたアンドレ三世の娘でエリアルと申します。皆、首を長くして待っております。ご案内いたしますので、お薬の材料と機械を持ってきていただけませんか?」
嬉しそうに答える美少女。何とこの子は依頼人の娘だったようだ。丁寧な態度をとっておいて正解だったな。案内してくれるならちょうどいい。
ん、待てよ? 仲介業者の話だと、依頼主ってのは確かこの星の王様だったはずだ。って事は、この子はこの星のお姫様なのか!
「お姫様直々のお出迎えとは恐縮です」
「あら、お気になさらないでくださいな。よその星の方だと、王政なんて古いとお考えではありませんの?」
「いやいや、王様がいる星も結構ありますよ」
慌てて頭を下げると、それが面白かったのか、彼女はコロコロと笑って答える。たしかに銀河連邦を構成する惑星には民主主義の星が多いが、惑星ごとの主権は尊重されるので王政が残っている星もたくさんある。
っと、こんな無駄話をしてる場合じゃないか。
「それでは、船に上がっていただけますか。搭載艇を出しますので」
そう言いながら、左腕の腕時計型情報通信端末――二十一世紀中頃に当時の
「上がれと言われましても……」
「あ、すみません、右の方にある
「ああ、これは足場だったんですね」
船体の点検整備に使う
「ひれ!?」
彼女の下半身は、どう考えても魚の形状をしていて、まるで伝説の人魚のように大きなひれがひとつついているだけだったのだ!
「あ、そういえば他の星の方は常に足しか使わないのでしたね」
そう言いながら、梯子に手をかけた彼女が軽く何かを念じるような顔をすると、それと同時に彼女の下半身が姿を変え始める。全体を覆っていた鱗が小さくなると同時に数を減じて、上半身と同じような白い皮膚に吸収されていく。ひれだった部分は左右に分かれ、先端部から指が形成され、普通の足の形に変わっていく。
「私たちは魚類から進化した人類ですから、足をひれの形に変えることができるのです。むしろ、普段はひれの形で生活する事の方が多いですね」
そう言いながらも、しっかり足は使えるようで、
なるほど。よく考えてみれば、この星の人類も古代銀河帝国人の末裔なのだ。俺のような地球人と同じように。
銀河系には何百万もの居住可能惑星があり、それらの多くに「人類」が住んでいる。元は無人で、地球や、他の星から出た人類が植民した星もあるが、この星のように土着の人類が存在している惑星も多い。そして、それら諸惑星の人類は、ほとんど同じ姿をしているのだ。もちろん、皮膚の色などは違いが多い。それはそうだろう、地球人だって肌や目、髪の色なんか全然違う人々がいるんだから。
だが、外見で言うと、二足歩行して、四肢を持ち、指は五本、感覚器は頭部に集中しており頭頂部に髪があって、目と耳と鼻の穴は二つ、口はひとつで歯がある……というような特徴はほぼ同じなのだ。
そして、それらの「人類」は出自が違っても同じ形に進化しているのである。例えば、俺たち地球人はほ乳類、猿の進化種族だが、アルデバラン人は同じほ乳類でも牛からの進化種族なので頭に角の痕跡がある。アンタレス人なんかは同じ姿をしていても節足動物、
もちろん、これは
それだけの文明を誇った古代銀河帝国がなぜ滅びたのかは明らかになっていない。文明の痕跡として、ときどき超技術の産物である「遺産」が見つかることがあるが、古文書などはほとんど残されていないのだ。何か不可避の災厄でも襲いかかってきたのか、自然に衰退していったのかすら分からない。
しかし、これだけ多様な種族を元に「人類」を育成していったのは、そのうちどれかひとつでも生き残らせる事によって、自分たちの遺伝子を残したかったのだろうと推測されている。だから我ら「人類」は古代銀河帝国人の「末裔」と自認しているのだ。
その「人類」を作る最終調整段階で、彼等は外見の統一性以外にもひとつの仕掛けをしていった。いかなる星の、どのような生命形態から進化した種族であろうと、「人類」は二十三対四十六本の遺伝子を持ち、二つの性を持つ。「人類」である限り交配が可能なのだ。ほ乳類系の地球人と節足動物系のアンタレス人ですら交配可能なのである。地球人とアンタレス人の生物学者が両方とも頭を抱えているのだから、古代銀河帝国人の技術は凄いものなのだ。ちなみに生まれた子供の種族は、どちらか片親の方になるが、反対の親の形質を一部受け継ぐこともある。
しかし、外見の統一性や生殖可能という共通点があるからこそ、「人類」はお互いの文明や文化の違いを乗り越えて、統一政体である「銀河連邦」を結成できたのだ。もちろん、大半の人類は恒星間航法の開発に至る前に、自惑星内や自星系内での過酷な戦争を経験して、その反省から異星種族との平和的な共存を望むようになったものだし、そうした経験が少なかった種族の大半は最初から平和的な性格を持っていたという背景はあるにせよ。
だから、今の銀河系には一応恒星間戦争は無い。惑星破壊ミサイルが飛び交い、何億人も死ぬような戦争は既に過去のものだ。
しかし、人類の精神的進化はその程度であって、同じ人種同士による地域紛争だの内戦だのは存在するし、犯罪だっていつまでたっても無くならない。宇宙海賊だの星間マフィアだのもいれば、恒星間企業の暴走だの、連邦組織の腐敗だのも無くならない。だから、「戦争」こそ無いものの連邦軍は
そんなことをつらつらと考えていると、彼女が上甲板まで上がってきたので何気なくそちらを見たのだ、が……
「どうかなさい……?」
俺が硬直したのを見て、エリアルが不審そうに聞いてきたが、その声が途中で止まる。彼女自身も気がついてしまったのだろう。
海中にいたのだから、彼女は水着を着ていた。彼女の瞳の色と同じ、鮮やかなブルーのビキニをまとっている……上半身には。
先ほどまで、彼女の下半身は魚の形をしており、そこに衣類はまとっていなかった。そして、人体の変身能力があるからといって、衣類まで変形したり、空中からわき出してくるワケでは無い。
それが意味することは、つまり……
彼女の顔が火が付いたように紅潮する。いや、きっと俺の顔も同じような色になっているだろう。そして……
「きゃあぁぁぁぁぁっ!!!」
彼女の悲鳴と軽い破裂音と共に、俺の左頬には鮮やかな紅葉がくっきりと刻まれたのである。
これが、俺とエリアルの運命の出会いだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「何を考えているんですか?」
つっ、と白い指先が俺の頬をなでる。視線を移すと、はにかみながら微笑むエリアルの顔がある。
「いや、
そう答えると、エリアルの顔が、あの時のように赤らむ。
「あの時は、わたくしが悪かったのに叩いたりしてごめんなさい。あの頃は、めったに足なんて使ってなかったので、衣類の事はうっかり失念してたんです」
「今はもう慣れたろ」
「ええ、いろいろありましたからね。足を使うことにも、この船にも、すっかり慣れました」
そう、多くの事があったのだ。エリアルが素足で泳いできたのだから、目的地の王宮はほんの数キロ先の海底だった。そんな距離、万能搭載艇を使えば発進準備の時間の方が長いくらいの距離だったはず。
それが、いきなり襲ってきた宇宙海賊のステルス搭載艇から逃げるために空に飛び上がる羽目になって、数百キロの追いかけっこのあげくに相打ち。種と精製装置を背負って海中を泳ぐ羽目になった。海洋惑星であるアクアリスに行くことになった時点で、海中で生活できるようにとあらかじめ海中呼吸可能なように遺伝子改造を済ませていたのだが、そうしていなかったなら、その時点で詰みだっただろう。
さらに途中で襲ってきた、
何とかそれに成功して疫病も無事おさまったが、船の修理ができる救難船が来るのを待つ間に、今度は
長くも短くも感じる濃密な時間。その結果として、俺とエリアルの間には、切っても切れない深い絆が生まれた。そして、俺も
「これからは、ここがエリアルの、いや、俺たち一家の家なんだからな」
俺の船、オウル号の上甲板。初めてエリアルと出会った場所。
そして、これから二人で新しい家庭を作っていく家でもあり、仕事の場でもある。
さまざまな事件を経て、
幸いに、と言うべきか、オウル号は外見こそ以前と大して変わっていないものの、中身は魔改造と言ってもいいようなトンデモ宇宙船になっている。宇宙海賊から奪った「光学迷彩
その分
まあ、今はその船足を見せているワケでは無い。惑星上、それも海洋航行中では自慢の加速度もパルス・ワープ航法も見せようがない。海底神殿での結婚式が終わったばかりで、
そんな事を考えていると、遠くにうっすらと陸影が見えてきた。
「もう『聖地』が見えてきましたね」
「ああ。そう言えば、俺は来たことが無かったな」
「わたくしもです。ここは、結婚した者か医療関係者しか来てはいけないのです」
「そうなんだ?」
「ええ、この『聖地』で子孫を残せるようになった事が、わたくしたちアクアリス人がこの星で生き残る上で一番のアドバンテージになったのですから。それ以外の目的で立ち入る事は許されません」
「そうか、この星では陸上が一番安全な所なんだ」
「そういう事です」
「聖地」とは、この星に一パーセントしかない陸地の総称である。ほとんど海洋生物しか存在せず、空を飛ぶ鳥もいない
そして、生物にとって最も「安全」が必要なのは、妊娠、出産の時期に他ならない。
「アクアリスの歴史にも多くの戦乱がありました。しかし、どんな状況であろうと『聖地』を争いに巻き込む事だけは避けられてきました。敵対し、憎み合う者同士でも、『聖地』にいる時だけは決して争わない。この『聖地』こそがアクアリス人にとって最も大切な所だということを、誰もが理解しているからです」
そう語るエリアルの横顔に、黄金色の夕日が差す。この星の伝統的な婚礼衣装――水棲人らしく露出度は高いが色とりどりの布で多彩に装飾されている――を着たその姿は、いつにも増して清らかで、神々しかった。
そのエリアルが、こちらを振り返って、恥ずかしげな笑みを浮かべる。その顔が紅潮して見えるのは、夕日のせいだけではないはずだ。
「この『聖地』は愛の営みをする所です。やっと、あなたと愛し合うことができる……」
はにかみながら、そう口にしたエリアルに、俺はもう我慢できずに思わず抱きしめてしまい、誓いのキス以来の口づけをかわすのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「いい湯だった」
「お清めと言ってくださいな。この星では真水で水浴するのは聖なる儀式のひとつなのですから」
「ああ、悪い」
船を岸辺に停泊させ(
星中の新婚夫婦や、出産を計画している夫婦がやってくるので、「聖地」には宿泊施設が多い。エリアルはこの星の王女だし、俺は一応この星を救った英雄ということになってるので、最上級の宿泊施設が使える。宿泊施設にもランクがあって、最下級の施設なら食料は自炊になるが無料で使うこともできるので、貧乏だから子供が産めないということはない。
さて、聖なる儀式のひとつである水浴が終わったということは、次は新婚夫婦として、いや人類として、いやいや生物として最も大切な行為、子孫を残すという行為が待っているのだ!
俺も成人年齢には達しているが、まだ経験はない。
「エリアル……」
「なんでしょ……」
振り向いたところを抱き寄せ、優しく口づけを交わす。今までは唇だけだったが、初めて舌を絡ませてみた。ああ、これだけで、こんなにも気持ちがいいものなんだな。
「あん、慌てないでくださいな。そのための部屋は、あちらですわよ」
唇を離すと、エリアルが奥の部屋を指さして諭してきた。
「ゴメン、我慢できなくて」
「いいですわ。さあ、参りましょう」
その部屋には、ダブルどころかクイーンサイズの大きなベッドが置いてあった。そして、もうひとつ。床に赤ちゃん籠のようなものが置いてある。以前にエリアルの部屋でも見たことがある物だ。
これは本当に赤ちゃん籠であって、アクアリス人が生まれた時に最初に赤ちゃんを入れる籠なのである。この籠は産まれた時の記念品として持っている人も多いようで、エリアルもそのひとりなのだろう。親のものを再使用する事は無いようで、亡くなった時に棺に一緒に埋葬する事が多いようだ。
……確かに必要なものではあるが、使うのはまだ先なんじゃなかろうか?
そんな風に思いながら赤ちゃん籠を見ていると、エリアルが声をかけてくる。
「あら、そんなにじっくり見るなんて、気が早いですわね。でも、気持ちはわたくしも同じですわ。幸いにも、今日は排卵日ですから、きっと子供も無事に作れるはずです。それでは、もう始めましょうか」
「あ、ああ……」
振り向くと、浴衣のような形の水浴着をゆっくりと脱いでいるエリアルがいた。
初めて見る彼女の産まれたままの姿……いや、下の方は初対面の時に見てしまったのだが、胸を見るのは初めて……で!?
「そんなに、まじまじと見ないでくださいな」
「いや、その、胸」
「あまり大きくはないんですけど……」
「いや、大きいよ。形もいい。だけど、先っぽが……」
「え?」
初対面の時からビキニの水着からあふれんばかりに存在を主張していたその胸は、大きさも形も最高のものだと言っていいだろう。決して俺の欲目だけではないはずだ。
だが、その胸の先に、地球人ならあるはずの桜色の先端がついていないのだ!
「あ、そうでした。地球人はほ乳類で、子供に胸から母乳をあげるから形が違うのでしたね」
おう、何てこったい! アクアリス人は魚類系だから母乳をあげないんだ!!
「産まれた子が地球人だった場合はどうすればいいのでしょう?」
「ああ、いや、大丈夫だ。地球人でも母乳の出が悪い母親のために、ほ乳瓶も粉ミルクもある」
「そうですか! それなら安心ですね」
そう。そんな事はささいな事だ。胸なんてどうでもイイ! 大事なのはエリアルと愛し合う事なんだ!!
そう思って、俺も水浴着を脱いでエリアルに向き直る。すると、頬を染めたエリアルが今度は彼女からキスをしてきてからささやいた。
「それじゃあ、さっそく始めますね。これは親にも見せないこと。恥ずかしいけど、愛するあなただけにしか見せないんですからね」
そして、例の赤ちゃん籠にまたがるようにして腰を下ろす。
お、おおおお、M字開脚ですかっ!? これはいきなり大胆なポーズっ!!
俺のボーイも張り切っておっきしちゃいますよ!
「あん、早いですわ。もうちょっと待ってください」
「あ、ゴメン」
思わず襲いかかりそうになった俺を軽くたしなめるエリアル。いかんいかん、優しくしようと誓ったばかりじゃないか。焦るな、俺、今夜はまだ先が長いんだ。
「でも、早くしたいのも分かりますわ。それではいきますよ。うーんっ!!」
……いや、ちょっと待って、エリアル、なんで顔真っ赤にして力んでるの?
あ、俺の
第一、赤ちゃん籠が汚れちゃうじゃないか。それとも、そういう物を穢すプレイがアクアリス人にはあるんだろうか?
そんな事を思っている俺の目の前で、エリアルの下腹部が軽く膨れる。え?
ぽこん!
そんな音と共に、彼女の秘所からは、直径五センチほどの透き通ったピンク色の美しい宝玉のようなものが産まれ出ていた。ただ、宝石のように硬くはなさそうで、ゼリー状にプヨプヨしている。中心部には、濃い赤色の小さな玉があって、目玉のようにも見える。
彼女から産まれた美しい玉は、部屋の明かりを反射してキラキラと輝きながら赤ちゃん籠の中心に鎮座していた。
「こ、これは!?」
「初めて見ましたか? これが、私たちアクアリス人の卵です」
そう言うと、エリアルは俺が今まで見た中でも最高に素敵な笑顔で俺に呼びかけてきた。
「さあ、あなたの精をこの子にかけてあげてくださいな」
水の星のプリンセス 結城藍人 @aito-yu-ki
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