グッド・ヴァイブス

小説や漫画においてしばしば現れるのが、突飛と思われる組み合わせだ。
大抵それは可愛い女の子と特殊なものの抱き合わせだったりする。
そういった作品がヒットするのは、一発ネタに終わらず、テーマ性や描写といった骨子が強固だからである。
この作品はポジティブな意味でそういう作品と並べられるべきだと思う。

フリースタイルバトルなどを発端としてヒップホップブームと言われて久しい現代。
文章表現のみの小説でファンタジーとフリースタイルラップを融合させている。
ライミングやヴァイブス、ディスを含めた音の上の会話の描写。
アンダーグラウンドではなくファンタジー世界という馴染みやすい舞台への置換。
ヒップホップの持つカウンターカルチャーとしての側面が貴族対サキュバスと辺境貴族の構図からにじみ出る。
この作品がハッピーエンドで終わったなら、それはラッパー達のメイクマネーの成就に等しいのだろう。

退屈を打ち壊すヴァイブスのライフル
ライムする怪物たちの勝負を見届ける

それがサキュバス・ザ・ラッパーなのだろう。