森の賢者~婚約者から貰ったブローチが起こす奇跡(?)~

ゆなか

身知らずの森

「……くっ!囲まれた……!!」


 目の前には餓えた【黒狼】の大群がいる。


 鋭く尖った牙の見える大きな口元から、長い舌をだらしなく出し、間もなく自分達の餌になるであろう僕を……息も荒くギラギラと光る瞳で見ている。


【黒狼】は、基本的に単独での狩りはしない。例え、分け前が減ったとしても確実に獲物を仕留める為だ。

 群れの中に自らを置き、連携プレイを取りながら獲物を狩る厄介な魔獣……。

 僕がこの森の中で一番出会いたくなかった魔獣ヤツである。


 僕はギリッと奥歯を噛み締めながら前をしっかりと見据え、大木を背にジリジリと後退するしかなかった。

 一触即発。一瞬でも気を抜いたら命取りになる。黒狼の大群は一斉に僕へと襲い掛かってくるだろう……。


 ごめん……マリー。

『無事に帰る』って君と約束したけど、守れないかもしれない……。


 こんな最悪の状態だというのに、僕の心に浮かぶのは愛しいあの子の笑顔だ。

 好奇心いっぱいのキラキラした綺麗な瞳でニッコリと笑うマリー。

 僕はギュッと胸元のブローチを自らの手の内に握り締めた。



 ******


【身知らずの森】

 その名前の指す通り、森の中に入った者の身の安全など全く保証される事のない、獰猛で危険な魔獣がうようよいる危険な森である。


 現在、僕はそんな危険な場所に一人で居る。

 ……どうしてこんな危ない森に居るのか。

 それは僕の家の特殊な事情が関係している。


 僕は【ルキア・アーネスト】十六歳。

 と言えば、代々王宮に召し抱えられる程に優秀な薬師を輩出している有名な家系である。平民であった祖先が数々の功績を称えられ、侯爵位を与えられるまでに成長をした特別な家。

 僕はそのの長男だ。残念な事に他に兄弟はおらず、一人っ子である。

 白銀色の髪に碧色の瞳という組み合わせを持つ僕は、アーネストの後継者にのみに現れるという配色を有していた。


 アーネスト家の後継者は、十六歳になった年に【身知らずの森】へ入り、貴重な薬草を持ち帰るというが存在する。

 貴重な薬草を見分ける力や、魔獣達に出会っても一人で臨機応変に対処出来るか……等の能力を見極める為だ。表向きは。


 ……だが、真実は違う。

 

 確かに、適応能力はとても大事である。

 しかしそれだけならば、生死を分ける身知らずの森に入らずとも身に付ける事は可能だろう。なのにわざわざその生死を分ける様な危険な環境に自らの身体を置くのは……全てこの血の中に眠るアーネストの血を甦らせる為だ。

 極限に削られた体力と精神力。過酷な状況に置かれる事によって覚醒される能力。それを解放するのが本当の目的なのだ。

 能力を覚醒させなければ、特別な薬を作り出す力は生涯使えず、アーネスト家を継ぐ事は出来ない。僕は今、試練の真っ只中にいるのだ……。


 こんな僕には、幼い頃に親同士が決めた婚約者がいる。

『マリー・ガーネット』十六歳。

 僕と同い年の彼女は、金色の長く艶やかな髪をしっかりめの縦ロールに巻き、少しつり目がちのクリッと大きな愛らしい青い瞳を持つ伯爵令嬢である。


 マリーは少し変わった子で……伯爵令嬢だというのにも関わらず、自ら厨房に立って料理やお菓子作りをする。

 この間は、新作のという食べ物を勉強中の僕に差し入れてくれた。

 蒸した米の間に甘辛く味付けした肉や野菜を挟み、それを大きめの海苔で包んだ四角い食べ物。

『こうすると可愛いんですのよ』と、そう言ってマリーが切って見せてくれたおにぎらずの断面は、食べるのが惜しいと思う程に色鮮やかな配列をしていて、とても芸術的で綺麗だった。


 ……今でこそ普通に食しているが、そもそも『米』は今まで家畜の食料だったし、『海苔』は海岸に打ち上げられた黒くねっとりとした気味の悪いゴミでしかなかった。それらを食べられる様に改良したのは、当時九歳だったマリーである。

 当時の彼女のずば抜けた行動力には……鈍器で殴られた様な衝撃を受けた。

を令嬢が食べると言うのか!』と……。


 しかし、米はその苗を水の張った畑に植えれば勝手に育つし、海苔は海に大量にある。マリーのお陰で、食料資源の乏しかったこの国の事情は一気に改善され、マリーは王から直々に感謝状を渡されていた。

『褒美は何が良いのか?』と聞かれたマリーは、何故か大量の大豆を所望していたな……。そういえばアレはどうしたのだろうか?


 ……そんなマリーと僕が婚約したのは五歳の時。

 初対面の彼女の第一印象は『甘やかされて育ったワガママな女の子』。

 当時のマリーは偉ぶった幼稚な発言で周囲の大人達を振り回していた。

 顔は可愛くて好みだったのに、性格が残念だな子だな……と思ったのを今でも覚えている。

 所詮、貴族同士の政略結婚なんてそんなものだ。子供は相手を選べない。

 顔は好みなのだから、いつか少しでも愛が芽生えれば良いだろう、そう割り切って婚約を受け入れる事にした。


 そこから少し時が流れ……僕達が九歳になった頃。

 幼稚でワガママだったマリーの性格が今までとは真逆にガラリと変わったのだ。それも突然だ。以前のマリーを知っている僕からすれば、まるで別人に生まれ変わったかの様に思えた。


『ここは………?えっ…ちょっと待って!?マリー・ガーネットって……あのゲームに出て来る性悪な悪役令嬢じゃない!!……詰んだ。はい、詰んだ。処刑ルート決定……って、マジデスカー……』

 ある朝、目覚めたマリーは虚空を仰ぎながらしくしくと涙を流し、意味不明な事を口走っていたと、マリーの侍女が教えてくれた。


 ……マリーの中で何が起きたのか、僕には理解が出来なかったが、今までの様にワガママを言って、周りを困らせる事がなくなったのはとても良いと思う。

 代わりに……僕を見るマリーの瞳が怯えている事に気付いた時は少し傷付いた。

 怖がらせる様な事は何もしてないのに、だ。

 まあ、それからは使える手札を全て使って彼女の信頼を勝ち取ったけどね。


 そして、十六歳。元々の可愛らしさに磨きがかかり、愛らしくも美しい女性に成長したマリーは、料理の腕だけでなく手先の作業もとても器用だったらしい。

 令嬢達の嗜みである刺繍はプロのお針子の様に上手かったが、中でも彼女が一番得意だったのはだった。

 花や鳥の他に……【仏像】というこの世界にはいない神なる者の人型まで彫りだしたマリー。『仏像を見ていると心の穢れが祓われる気がする』らしい。

 ……相変わらず少し変わっている婚約者殿である。

 核心を突く様な大人びた発言をするかと思いきや……突然、突拍子もない行動を取る破天荒な令嬢。


 最近の破天荒な行動といえば……。

『暑いから海で泳ぎましょう』と言うマリーに連れられて、海に向かったまでは良かったのだが……。いざ泳ごうとした時の彼女の服装は……僕の今までの生涯の中で一番困った事だと言っても過言ではないだろう。

 申し訳程度しかない僅かな布が、マリーの出る所は出て、引き締まった魅力的な身体を隠せるはずもなく……。

 またそんな彼女の身体を思いがけず目の当たりにしてしまった僕は……自らの理性と戦った。マリーに嫌われたくないから、それはもう必死に。

 多感時期の少年の理性を小悪魔に試されているかの気分だった……。

 本人に全くその気がないのは分かってるから余計に……。


 僕は黙って、マリーの身体にタオルを巻き付けた。

 本当は今すぐに誰の目にも届かないどこかに閉じ込めてしまいたかった。

 僕の反応に『ただの水着なのに……』そう不満そうな顔をしたマリーだが、『僕だけのマリーを他の誰にも見せないで』そう耳元で囁いたら、真っ赤な顔をして何度も大きく頷いてくれた。

 ……良かった。そこで拒否されていたら、僕は君を本当に閉じ込めたかもしれなかったからね。無邪気で純真な僕の可愛いマリー?



 マリーは、僕が身知らずの森に入る事を最後まで誰よりも心配してくれていた人だった。そして、別れ際に涙ながらに『一緒に行く事が出来ないのなら、せめてこれを……』と、ある鳥を型どったブローチをくれた。

 それは僕の知らない……今まで見た事もない鳥だった。

『これは?』

『これはフクロウです。【不苦労】。ルキア様の旅路が無事に終わります様に……。何かあっても身を守ってくれる様にと、まじないを掛けてあります。これを一緒に行けない私の代わりに連れて行って下さい……』

『ありがとう』

 僕はマリーの額にチュッと軽く口付けた後に、自ら左の胸元にフクロウのブローチを付けた。



 *****


 ここに来るまでに、今まで必死に剣の稽古をしてきたのだが……流石にこの数は倒せない。

 僕の周りは軽く二十匹はいるであろう黒狼達にジリジリと包囲を狭まれてきている。


 ……僕の人生はこれまでか。

 眉間にシワを寄せながらグッとフクロウのブローチを握り締めた時…………。


『もしも……困った時には、こう唱えてね』

 不意に彼女の言葉が頭の中に浮かんだ。


 ……マリーがどうしたかったのか……何をくれたのか僕には分からない。

 だが、この状況だ。使える手は何でも使う。

 マリーの元に帰る為に……!僕は彼女を信じる!!

 

 マリーの言っていた事は確か……。

 ……フクロウのブローチを握って、そして…………。

「……メ、メタモルフォーゼ!」

 僕がそう唱えた瞬間。辺りを目映い光が包み込んだ。

 僕自身も目を開けている事が出来ずに、本当は開けていないといけない瞼を閉じてしまった。それ程までに目映い光だったのだ。


 ……?

 光が収まったのを感じた僕は……恐る恐る瞳を開けた。


 するとどうだろう。今まで僕を取り囲んでいた黒狼の大群は全てその場に倒れていた。

 ……どうやら気絶しているみたいだが……一体何が起きたのだろう?


 思いがけない事態に困惑しながらも、一先ず命の危険が去った事に安堵した僕は握り締めていたフクロウのブローチを見下ろし……絶句した。

 困惑しながらも黒狼達を起こさない様に、そっとその場を抜け出した僕は、ここに来る途中にあった泉まで急いで戻った。


 **


 泉の畔に立ち、自らの身体を水面に映した僕は……また絶句した。


 ……っ!!


 眼下に映っているのは、この森には相応しくない白やピンク等の色鮮やかな色彩だった。胸元には白やピンクのリボンやレースの付いたフリル。パニエが幾重にも重ねられ、ふんわりと膨らんだ膝上という微妙なラインで途切れたスカート。その直ぐ下にある膝上のピンク色ロングブーツ。

 その手には、先端に星の形をしたステッキの様な物を持っていた。

 先程から動く度に目の端に映っていた白銀色の物は……僕の髪か!!

 背中まで伸びた髪は、両耳の上辺りで左右それぞれに結ばれ、リボンまで付いてている……。


 僕の髪は肩に付くか付かないかの長さだったし、服装は黒いシャツにグレーの胴当等の動きやすい、旅人のする様な格好だったはずなのに……これは……。


「あははははっ!」

 僕はここが【身知らずの森】の中だというのにも拘わらず、両手で顔を覆いながら大声で思いっきり笑ってしまった。


 全く……マリーの考える事は相変わらず破天荒過ぎる。

 何だ、この格好は。危機的な状況で、どうして女装をしなければならないのか。

 先程までの緊迫した状況から解放されたせいなのか、可笑しくて堪らない。

 ……マリーはいつもこうだ。こんな風に僕の悩みや憂い事なんか一瞬で吹き飛ばしてしまうんだ。



 泉には僕の大きな笑い声に釣られた魔物達が続々と泉へと集まって来るのが見える。ゴブリンやオークにオーガ、トロール、それに先程の黒狼の大群もいる。

 状況的には、先程よりも更に悪化している。間違いなく最悪の状況。


 ……だというのに僕の心は凪いでいた。

 これからどうしたら良いのか、胸元のブローチが教えてくれるのだ。

 マリーに貰った時は、木に留っているかの様に羽を休めていたフクロウのブローチが、今は飛び立つ寸前の様に大きく羽を広げている。


『そう。ステッキを構えて、唱えるの!』

 幼い時のマリーの様な声が、心に直接語り掛けてくる。

「 星の力を秘めしフクロウよ、真の姿を我の前に示せ。ルンルンルーーン!!」


 ステッキを構えながら呪文を唱えると、目の前に居た沢山の魔物達は雄叫びを上げる隙もなく、あっという間に黒い煙となり霧散して行った。



 …………。

 色々と突っ込み所が満載である。

 何だあの呪文は……。『ルンルンルーーン!!』って……。

 くっ……。くくくっ。

 片膝を地面についた僕は暫くの間、その場で笑い続けた。


 気が付くと、先程までの鮮やかな色彩から地味な色の元の服装に戻っていた。


 あー。可笑しい。

 ……でも、アレのお陰で助かった。


 絶対に能力を覚醒させてマリーの元に帰ろう。と、僕は改めて誓った。

 そして、帰ったら直ぐにマリーにブローチを渡して変身してもらおう。

 あの服装は、羞恥心に瞳を滲ませたマリーにとても良く似合う。

 可愛いマリーを抱き締めながら……色々と堪能しよう。そうしよう。


 だから、待っていてね。愛しのマリー。

 僕は君が何者でも構わない。こんなにも君なしではいられない身体にした責任は取ってもらうからね?

 

 僕は微笑みを浮かべながら泉を後にした。



 *******


「ルキア様……大丈夫かな?」

 マリーは自室のソファーに深く座りながら、ボーッと天井を仰いでいた。


 本来ならば、令嬢がこんな風にぼんやりしているのは、はしたない行為なのだが、『室内には誰も居ないから良いよね』とマリーは大して気にしてはいない。


 それよりも思う事は、マリーの大好きな彼の事である。


「……でも!あのフクロウのブローチがあれば大丈夫だよね!!」


 ……マリーは転生者である。それもの。

 転生前のマリーは【桜井さくらい 万里彩まりあ】という平凡な二十四歳のOLだった。帰宅時に道路に飛び出した猫を助けてそのまま車にはねられて死んだはずの万里彩が目覚めたのは……万里彩が生前ハマっていた乙女ゲーム【賢者の森】に良く似ていた世界の中であった。

 

 フクロウをモチーフとした宝をヒロインと攻略対象者達が力を合わせながら集めて行くストーリーで、ラスボス攻略の切り札がフクロウのブローチなのだ。ヒロインが魔法少女に変身して倒す。

 そんな【森の賢者】に出てくる悪役令嬢の『マリー・ガーネット』に転生してしまった万里彩だが……。


『ここは………?えっ…ちょっと待って!?マリー・ガーネットって……あのゲームに出て来る性悪な悪役令嬢じゃない!!……詰んだ。はい、詰んだ。処刑ルート決定……って、マジデスカー……』万里彩は朝、目覚めた瞬間に全てを理解し、号泣した。


 目覚める寸前まで見ていた夢の中には神様がいた。

 その神様は、『万里彩が助けた猫は実は自分の娘だった』と謝罪をした上で、その為に死んでしまった万里彩にお詫びの意味を込めて、万能な能力と共に万里彩の大好きだった世界に転生させてくれると約束してくれたのだ。


 それなのに……まさか自分がヒロインではなく、いずれ断罪をされて死ぬ運命にある悪役令嬢に転生させられるだなんて誰が思うだろうか?

 万里彩は号泣しながら神を恨んだ。


 しかし、転生してしまったものは仕方がない。

 それならば、少しでも自分の人生を変えようと万里彩が動き出した時に彼……【ルキア・アーネスト】が現れた。


 ルキアは万里彩の一番の押しキャラだった。

 メインの攻略対象者であるルキアは、万里彩の好みを全て寄せ集めたキャラクターであり、一目で恋に落ちた。

 生前の万里彩の給料は殆どをルキアに捧げたと言っても良い。

 そんなルキアが目の前に現れた時、万里彩はまた神様を恨んだ。


 ルキアの婚約者であるマリーに転生させてくれたのは良いが……マリーはルキアに嫌われていて、最後にはヒロインを選んでマリーを断罪する人物なのだ。


 会いたかったけど……会いたくなかった。

 万里彩はつい、ルキアから瞳を逸らしてしまった。


 なのに……どうだろう。

 万里彩の失礼な態度に気分を害した素振りも見せず、ルキアはそれから毎日の様に万里彩の……マリーの元に通って来る様になったではないか。

 それには、ただただ驚くしかなかった。


 しかもルキアはただ尋ねて来るだけではない。

 ある日は花を……。またある日には本を……と、まるでマリーの気を引くかの様な行動と態度を取ってくれるのだ。

 ルキアの意図が分からずに困惑したマリーは、ある日思い切って尋ねてみる事にした。

『……どうしてルキア様は私なんかの所に通って下さるのですか?』と。

 すると、ルキアは『僕は君にとても興味があるんだ。だから、僕の事を怖がらずに見て欲しいな』と、少し困った様な顔でそう言ったのだ。

 マリーはその顔を見てキュンとしてしまったのだ。

 好みの顔と恋心は怖い。見事にマリーが作っていた心の壁を壊してしまったのだから……。


 この日からマリーは自分の考え方を変えた。

 断罪されない様にするのは勿論だが、せっかく大好きなルキアが目の前に……しかも今ならまだ婚約者として自分の前にいるのだから、彼を振り向かせられる様に頑張ってみよう、と。

 それでもヒロインに取られてしまう様なら……失恋の旅にでも出よう、と。


 開き直ったマリーはこれまでに自由奔放に色んな事をしてきた。

 お米も見つけたし、海苔も見つけた。

 今は王様に貰った大量の大豆から、醤油や味噌を造っている最中である。

 マリーは転生したこの世界で人生を謳歌していた。


 しかし、十六歳の今になるまでマリーに接するルキアの態度は変わらないし、そろそろ出会っていてもおかしくないヒロインの存在を感じた事もない。


 寧ろ……ルキアの態度がだんだんと自分に甘くなってくるのを感じているこの頃である。その度にマリーが悶絶しそうになっているのは秘密だ。



 そうこうしている間に、ルキアの試練の日が来てしまった……。


 ルキアが向かわなければならないのは【身知らずの森】である。

 ゲームの中のルキアが瀕死の状態で帰って来た……魔の森。

 帰って来たルキアは怪我が酷く、確か一ヶ月は目覚めなかった。


 ……そんなのは嫌だ。

 マリーは、ゲームの序盤に出てくるはずのフクロウのブローチを自らのチート力で作り出した。全てはルキアが無事に覚醒し、怪我なく生きて戻る為に。


 そして、ルキアは約束してくれたのだ。『無事に帰る』と。

 だから、マリーは心配はしてもルキアの事を信じていた。



「ルキア様の魔法少女姿……見たいな。絶対可愛いもん。美少女だもん。お願いしたら私にも見せてくれるかな?」

 マリーはルキアの魔法少女姿を想像して無邪気に微笑んだ。



 マリーはまだ知らない。

 無事に帰ったルキアによって、自らの方が変身をさせられ……羞恥に顔を赤らめ、瞳を潤ませながら懇願するまで愛を囁き続けられる事を…………。




 完。

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