第十二話: 平穏な一幕

 



『秘蔵品』



 店頭には並べない品物のことを、商人の間では秘蔵品と呼ぶ。商人たちの間で使われている通称であり、一般人の間では『取り扱っている商品の中で、最も高価な物』を示す言葉として、広く認知されている。


 何を秘蔵品として取り扱うかは、特に決まりはない。また、わざわざ秘蔵品を用意する決まりもない。とはいえ、使えるモノは何でも使うのが商人というもの。


 中には変わり物を秘蔵品として扱っている商人も居るが、往々にして、『秘蔵品は商人が扱う商品の中でも一番の優れもの』というのが、商人たちの間では通例となっていた。


 その優れ物が、どのような形で商人の手に渡るかは様々だ。


 それぞれの人脈と伝手を頼りに収集した掘り出し物であったり、高名な人から代金の変わりとして譲り受けた品であったりと、手に入れること事態が面倒なことだったりするのだが、秘蔵品を持ちたがる商人は意外と多い。


 それは単純にコレクション的な意味合いも含まれているが、それだけではない。秘蔵品は、商人としての力を示すステータスシンボルの役割も持っているからである。


 言ってしまえば、価値の高い秘蔵品はそのまま商人の箔を表すと同時に、それだけの商運を持つということを示すことが出来る指標代わりなのである。


 ……とはいえ、その秘蔵品は確かに商品としての価値が高いのは事実だが、誰しもがそれを欲しているというわけではない。


 購入できる金があっても趣味に合わなければ意味はないし、そもそも興味がなければ買おうとすら思わないのが常だ。


 おまけに、金持ちというやつは、だいたいにして目が肥えていたり拘りが強かったりするので、意外と財布の紐は固かったりする。


 そして、金持ちに続いて財布の紐が固いのは……意外にも、探究者や狩猟者たちだったりするのである。






 ……大通りに立ち並ぶ露店から、少しばかり離れた所に立ち並ぶ露店の群れ。そこは、いわゆる荒事に従事している人たちを対象とした商品を取り扱っている露店ばかりが連ねる一角であった。


 その立ち並ぶ露店の一つ。普段なら顔やら腕やらに傷跡を作った男やら女やらで、それなりに賑わっているであろう場所には……マリーたちが、店の主人と顔を突き合わせていた。


 大通りの露店から、店をハシゴすることしばらく。コレはという武具になかなか巡り合えないマリーたちは、根気強く8件目となる露店にて、8度目となる作業を行っていた。


 露店の中には、様々な武具が我が物顔で場所を占領していた。店の中央付近にある大きな壺には、剣や杖などがドカッと無造作に差し込まれている。



 一目で、分かる。本日のセール品というやつなのだろう。



 そのどれもが大量生産……とは言い過ぎだが、一目で安物だと分かる粗末なものばかりだ。いわゆる練習用、売れれば儲けもの程度の気持ちなのかもかもしれない。


 他にも入って目につくのが、組み立て式の柵に吊り下げられている様々な防具類。ところどころ修繕の跡が見受けられる当たり、おそらくは中古品だ。そういった訳ありが用意されているのも、露店ならではの光景であった。


 そんな狭苦しい店の奥には、揉み手と笑みを崩す気配がない店主と、荷物が入った袋を背負った竜人と……鏡の前でポーズをしている、マリーの姿があった。



「実にお似合いですよ。お値段も相場から考えれば、お手頃かと……」



 立派な髭を生やした痩せ形の店主は、そうマリーへと笑みを向けた。



「んん~~」



 鏡を前にポーズを決めていたマリーは、考え込むように唸り声をあげる。その両手には透明感のある青色に輝くナックル・サックが取り付けられていて、業物であることが一目でうかがい知れるものであった。


 それは、『ハフナン』という名前が付いているナックル・サックの一種だ。


 強度に優れていると同時に軽く、同じ材質で作られた鋭い刃が取り付けられているのが特徴だ。ナックル・サックの中では不動の地位を築いている逸品である。



「ん~、なんだろうなあ、なんかしっくりこないんだよなあ」



 ……しかし、そんな名品も、マリーのお目金には適わなかった。軽くジャブを行いながら付け心地を確認していたマリーは、ため息と共にハフナンを両手から外した。



「悪いな。期待させるだけさせてすまねえけど、俺の手には合わないみたいだ」

「それは残念です。ですが、御気になさらずに。商品と馬が合わないことは、よくある話でございます」



 そう言いつつも、店主の顔には締まりのない笑みがあった。なぜならば、先ほどこの店主が出した秘蔵品の一つである『邪教者のドレス』を、マリーが購入したからであった。


 最初はこいつら金持ってんのか、みたいな冷たい眼差しを向けられたりもしたものだが、既に別の露店で2つ程装備を購入したからだろうか。3件目の露店に入った頃には、露店からの態度もけっこう柔らかくなっていた。


 ――ステータスシンボルである秘蔵品は、滅多な事では売れない。


 それは商人の箔であるからであり、やはり相応に値段が張る。なので、それが売れたとなれば、マリーたちは店側からしたら、滅多に来ない上客として扱いを変えるのは当然の帰結であった。


 おかげで、マリーたちがこの一角に来たときと比べれば、もはや別人ではないかと思ってしまう程に対応が違う。冷たい反応をされたのが夢だったかのような態度の変わりようである。


 ……まあ、マリーたちの見た目が見た目なので、冷やかしかと警戒されたのだろう。それはもう仕方がない話だと諦めているので、特に思うところはなかった。


 こうやって秘蔵品を見定めている露店の外には、声を掛ける為に今か今かと待ち構えている人たちの影がちらほらと見える。


 それらの大半は、別の露店の店主であり、自分たちの秘蔵品を買って貰おうと待っている人たちの影でもあった。


 金貨5枚(25万セクタ。一般月収5ヵ月分に相当)にもなる『邪教者のドレス』が売れたという話が耳に入れば、無理もないことである。まだ店の外で待っているだけ、節度というものを守っている方であった。


 ちなみに、『邪教者のドレス』はスタンダード・ドレスよりも高位のドレスに当たり、様々な恩恵を装備者に与える。東京でも中々お目に掛かることのない貴重な物である。



「それでは、こちらはどうでしょうか?」



 コツコツと、恰幅の良い女性が笑顔と共に装飾の施された箱を持って来た。店主を除いて彼女以外に店員らしき人が居ない所を見ると、奥さんだろうか。


 マリーがそちらへ目をやると、女性は小皺をにんまりと垂れ下げると、静かに箱を開いた。中には銀色に輝くナックル・サックが6つ、はめ込まれるようにして納められていた。


 全てが同じもののように見えるが、よくよく見れば微妙に大きさが違っている。どうやら、サイズ別に用意しているようだ。



「ハフナンには劣りますが、耐久性と強度に優れた逸品にございます。値段もハフナンよりも格安で、使い捨てるつもりでいるのでしたら、こちらがよろしいかと思われますが……」

「使い捨て……か。ちょっと付けて見ていいか?」

「ええ、構いませんよ……あ、お客様の手の大きさですと、こちらになると思いますよ」



 笑顔と共に差し出された一つを、マリーは試しに一つを装着してみる。


 そのまま、再び鏡を前に拳を振るう。魔力コントロールを行っている状態なので、その拳は常人の目にははっきりと捉えきれない速度だ。うっかり拳の前に顔を出そうものなら、悲劇的な事件が起きてしまうだろう。


 はた目からみれば、華奢な女の子が物騒な風切り音を出しながらジャブを行っているように見えるだろう……よくよく考えてみれば、凄まじく異様な光景である。


 びゅん、びゅん、と空気を切り裂く拳の風切り音が露店の中に響く……ピタリと動きを止めたマリーは、軽く息を吐いた。



(まあまあ、着け心地は悪くはねえ……けど、それだけかな)



 良い物であるのは事実だが、そこまで良いというわけでもない。ちょっとやそっとでは壊れないのは確かだろうけど、消耗品にするには些か出費が大きすぎる。


 これなら、壊れやすくとももっと安価なやつをストックしていた方が、まだ効率が良い。下手に高価な武具は、修繕費もバカにはならないからだ。


 使うところには金を掛けるべし、というのは探究者の鉄則なのだが、ケチるところはしっかりケチろというのも鉄則なのである。世知辛いようだが、お金は大事である。



「マリー」



 掛けられた声に、振り返る。そこには、先ほど奥さんから別の露店へと案内されていたサララの姿があった。


 サララはごく自然な動作でマリーの横に並ぶと、そっとその手を握りしめた。指と指を絡めた、いわゆる恋人繋ぎというやつである。


 ふふん、と何やら勝ち誇った顔でドラコに流し目を送っているが、当のドラコは眠そうに欠伸を零していた。あの後、別の露店にて売られていた果実を皮ごと3個も食べたから、お腹が膨れて眠いのだろう。



「……サララ、お前はもう良いやつが見つかったのか?」



 サララの空いている方の手には、何もない。俺と同じで難航しているのかなと思って尋ねると、サララは違うよ、と首を横に振った。



「もう買った、ところだよ。さすがに、こんな場所で持ち、歩くわけ、にもいかないから……と、御免、癖が出ちゃっているね」



 久しぶりに拝見するサララの癖に、マリーは微笑ましげに首を横に振る。サララのこの癖が出るのは、感情が高ぶっている時……今はつまり、喜ばしい結果だったからだ。



「良いのが買えたか?」



 返ってくる答えを想像しながら尋ねれば、思っていた以上の「うん!」笑顔で返事が返ってきた。



「『りゅらん亭』に運んでもらえるように頼んできたところだよ」

「へえ、何を買ったんだ?」

「『粛清の槍』だよ。まさかこっちにもあるとは思わなかったから、思わず予算全部出しちゃった」



 ――へえ。思わず、マリーは驚きに目を見開いた。


 『粛清の槍』と言えば、『遅毒槍』よりもランクが上の上位武器だ。槍方面は専門外なのでマリーには詳しくは分からないが、凄く高いとサララがため息を零していたのを思い出した。



「まあ、コレだと思った物をケチるよりはいいさ……ところで、サララだけか? イシュタリアたちもそっちに行ったはずだよな?」



 一着しかない『邪教者のドレス』をマリーが購入してしまったので、イシュタリアとナタリアは別の露店に装備を求めに行っているはずだ。


 土からその都度用意しているイシュタリアと、イシュタリアから受け取った武器で応戦するナタリアには必要がないだろうが、選ぶとしたら何を選んでくるのだろうか。いまいち、想像がつかない。



「私が見た時には、ドレスを選んでいたところだったよ……と、そうだ。マリー、実は話があるんだけど……」

「ん、なんだ?」



 ちょいちょい、とサララが露店の外へと手招きしている。驚いたように互いの顔を見合わせている商人たちの間から、あごにたっぷりの髭を蓄えた赤ら顔の男が、装飾が施された上等な箱を携えて店内に入ってきた。



「よう、姐さん、少し邪魔するよ」



 赤ら顔の男を見やった夫妻は、驚きに声をあげた。



「おやおや、赤ら顔が珍しいこった。お前さんがこんな時間に店を出しているなんざ、明日は雨でも降るのかねえ」

「そいつはひでぇぜ、姐さん。俺だって商人だからな……上客の匂いを嗅ぎつけることに掛けちゃあ、俺の右に出るやつはいねえ」

「あははは、そいつは違いない」



 親しそうに会話をする三人。どうやら、夫妻とこの赤ら顔の男は気の置けない間柄のようだ。ともすれば喧嘩を売っているような言葉をぶつけられても、笑って冗談だと思えるぐらいには仲が良いみたいだ。



「――っと、忘れていた。お前さんがマリーちゃんかい?」

「え、あ、ああ、そうだけど……」



 がはは、と豪快に笑っていた男から突然話を振られて、マリーは思わず声を詰まらせる。なんというか、肌に合わないタイプかもしれない……とマリーは思った。



「まだ何も買っちゃいねえよな?」



 素直に、マリーは頷く。若干身を引いているマリーを前に、男はマイペースにマリーの眼前に箱を差し出すと、ゆっくりとその蓋を開けた。



「――、お、おおお……」



 露わになった中身に……マリーは、圧巻のため息を吐いた。そこに収められていたのは、鮮やかな装飾が施された、白銀に輝くナックル・サックであった。


 普通のナックル・サックと違い、手の甲も装飾と魔術文字式が施された金属板で覆われている。それはもはや手甲と言っていい外見であった。


 ニヤリと、男の目が弧を描いた。マリーの興味を確定的に引きよせたことを確信できたからこその、笑みであった。



「俺が持っている秘蔵品の中では一番の代物……その名は『ファイバー』だ」

「ファイバー……」



 特殊な製法が使われているのだろう……外から差し込む光によって、その表面には七色の輝きが薄く反射しているのが分かる。



「『直撃した個所に衝撃の刃を打ち出す』という機能が備わっているらしい。刃を打ち出す度に魔力を消費するが、その威力は他の武器を大きく上回る。使いこなせば、それこそ無双の活躍が出来る逸品だぜ」

「……ちょっと、着けてみていいか?」

「もちろんだ。というか、是非試してみてくれ。この『ファイバー』は、普通のよりもかなり小さいサイズでな……見た所、マリーちゃんは平均よりかなり小さめだ。もしかしたら、装備出来るかもしれん」



 確かに、男が言うとおり、このファイバーのサイズは平均よりもかなり小さい。大人の女性には些か小さく……場合によっては、子供にしかつけられないのではないかと思ってしまう程のサイズだ。


 そのファイバーが……カチリと、音を立ててマリーの手を覆う。それを付けたまま、マリーは周囲に触れないように気を付けながら、軽く拳を振るう。


 十数秒程、マリーは具合を確かめる。そして、ふう、とマリーは息を吐いて『ファイバー』を男に手渡すと……ジッと男の目を見つめた。



「いくらだ?」

「箱代込みで、金貨8枚(40万セクタ、平均月収8か月分)といったところだ」

「安い、買った」

「お買い上げありがとうございます!」



 笑顔と共に頭を下げた男に、マリーも「こちらこそ、ありがとう」と頭を下げると、首から下げた袋を服の中から取り出した。


 じゃり、と重そうな音を立てたそれの口に手を突っ込むと、差し出された男の両手に、眩いばかりに輝く金貨を8枚乗せた。


 そして、男から手渡された『ファイバー』入りの箱をドラコに手渡しながら……ふと、マリーはサララを呼んだ。呼ばれた理由が分からず、不思議そうに首を傾げるサララを抱き寄せると……マリーは、茶褐色のその頬に、ちゅっ、と軽いキスをした。



「ありがとよ、サララ」

「……う、うん! 喜んでくれて、私も嬉しいよ!」



 呆然としていたサララの顔が、一気に赤くなる。それをニヤニヤと意地の悪い笑みで見ている店主たちから少しばかり離れた所にいたドラコは……閉じかけていた眼を、パチッと見開いた。


 ――直後、露店の外から強い風が吹き込んだ。


 ここ最近になって頻発している突風だが、今回の風はあまり強くないようだ。きゃあ、と大通りから悲鳴が聞こえてきたが、物騒な物音まではしなかった。


 他の店と違って、ここは武具などの重い物ばかりが置かれているおかげか、マリーたちや店主たちは、軽く近くにあるモノに手をつくだけで大丈夫であった。



「…………」



 そんなマリーたちを横目で見やってから、一人のそのそと外へと出る。来た時よりはいくらか人通りが少なくなった大通りの至る所では、転んだ人たちが愚痴を零しながら立ち上がろうとしていた。


 ドラコの身体にも、いくらか弱まった突風が叩きつけられる……のだが、強靭な竜人の身体には、そよ風にも等しい威力でしかない。風でなびく髪を手で押さえながら、ドラコはぼんやりと青空を見上げた。



「…………」



 そのままマリーたちに声を掛けられるまで、ドラコは空を眺めつづけた






 ……。


 ……。


 …………その後、少ししてイシュタリアが戻ってきた。彼女もまた、良い買い物が出来たようだ。



「いやあ、凄い風じゃったのう。これを担いでいなければ、危うく転んでおったところじゃ」



 自身よりも大きいサイズの木箱を背負い、艶のある黒髪をぼさぼさにした彼女は、周囲から奇異の視線を向けられていた……が、イシュタリアは全く気にしていないようであった。


 マリーの顔を見やったイシュタリアは、髪を手櫛で直しながらにっこりと笑顔を浮かべた。



「ふむ、その顔を見る限りじゃと、中々良い買い物をしたようじゃな」

「そういうお前は、どうなんだ?」



 マリーがそう尋ねると、イシュタリアは途端に笑顔を曇らせた。そして、不満ありありと言いたげな様子で「よっこらしょ」と木箱を下ろすと、手早く密封している荒縄を解き……蓋を開けた。



 そこには、両面刃の巨大な手斧が収められていた。刃の部分自体が普通のやつよりも3倍近いサイズで、柄の部分もそれに合わせて太い。


 黒光りする金属部分には魔術文字式が彫り込まれており、何かしらの力が働く作りになっているようだ。掴めるように持ち手の部分は細くなっているようだが、それが逆に斧の大きさを際立たせていた。


 マリーとサララ、その後ろから店主たちが顔を覗かせる。最初に口を開いたのは、赤ら顔の男であった。



「へえ、『斬鉄の斧』か。お嬢ちゃん、ずいぶんとごついやつを買ったんだな」



 ――『斬鉄の斧』。


 文字通り、鉄をも切り裂ける切れ味をコンセプトに設計された手斧だ。多少の技量を必要とするが、ある程度使い慣れている人であれば、容易く鉄を切り裂くことが出来る逸品である。



「仕方がなかろう。一番マシなのがこれしか無かったのじゃからな。『レディ・アックス』とかいう軟弱な斧を使うぐらいなら、コレの方がましじゃよ」



 『レディ・アックス』とは、言ってしまえば女性用の手斧である。軽量化の魔術文字式が活用されており、薪割り用の手斧よりは刃先が一回り大きいが……まあ、それだけだ。


 刃も片面だけで、片手で扱えるように設計されている。とはいえ、斧本体の重量を乗せて切るとなると、些か攻撃力に欠ける武器である。それを軟弱と評したイシュタリアは……まあ、間違ってはいなかった。



「お嬢ちゃん、こんなでけえのを扱えるのか? 見た所、背負えるぐらいはできているみたいだが、扱うとなると大変だぞ」



 赤ら顔の意見は、最もであった。しかし、それを言うには相手が悪かった。



「なあに、ぶんぶんと振り回すだけなら、これで十分なのじゃ」

「……なに?」

「振り回すだけなら、こういうのが一番じゃからな。これを小剣のように軽やかに扱えというのであれば面倒じゃが……一撃必殺……うむ、痺れるのじゃ」

「いや、俺が言いたいのはそこじゃなくて……」



 そこで、店主が男の肩を叩いた。振り返った男を見て、店主は苦笑と共に首を横に振った。


 同じく、男の耳に顔を近づけた奥さんの、『この子たち、この前キラー・ビーの蜜を持ち帰った人たちよ』という声が……思いっきり聞こえているのを、マリーたちは聞かなかったことにした。









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