第4話 ようやく始まる気配が漂う。あの時はそう思ってたんだ
「あぅーーーお腹すいたー‼︎」
生活費3万円。
それは1人のニート生活には十分な金額であった。
しかし、1人の足の消えた少女が消えた少女も養うとなるとはなしは
違う。
単純計算で2倍に増えた食費。
さらに女性を過酷な節制生活をさせる訳にはいかないという謎の正義感。
日用品を買うペースは何倍にも増え。
尽きた資金。
そう、今まさに生と死を行き来するほどの空腹に2人は悩まされていた…
「まったく…あんたの無計画さには本当に呆れるわ…」
「その言葉そっくりそのまま返してやりたいぜ」
いや…もうよそう。言い争うことにカロリーを消費することさえもったいない。
いや、考えかたを変えよう。
逆転の発想だ。
お金がないから空腹になる。だからお金を増やそうという発想自体が間違いだ。
貨幣のない国の生活を考えよう。
彼らはどうして生活出来ているのか。
人類の歴史を辿ると、古来は人類の生活に貨幣など必要なかったのだ。
そんな時代に思いを馳せる。
ーーと打開策が思い浮かんだ。
そう。狩猟生活。自給自足ライフ‼︎
ただ、虫も殺せぬ男に、狩など出来るはずもない。
というかそもそも外に出られない。
狩などできない。菜園を育てている時間はない 。
と。いうことは。
魚釣り。もしくは山菜を拾うしかない。
さっそく、Google先生にお聞きし、都内でも採取出来る野草をチェック。
我が家の穀潰しにリストを渡す。
もう歩くとこすら辛いと嘆くそいつを無理やり蹴り出し、
我が家の危機的状況を打破するように、一縷の願いを託した。
今度は方向音痴なあいつがちゃんと帰ってこれるように、
地図に我が家の印をはっきりと記して…
そして、最後のエネルギーを使い果たしたおれは、ベットで静かに
長い眠りについた…
荏胡麻の天ぷら。春菊のお浸し。野蒜の味噌ずけ。
春のこの時期に群生しているかは定かではない。
でもそれでいいのだ。夢なのだから。
夢の中では幸せな思いをさせてくれ。
せめて夢の中では…
夢の中では様々な山菜が豪華に食卓に並ぶ。
そんな夢のような光景が思い浮かんでいた。
うーー。
リストにあるものを入手して帰ってくる。
そんなお使いであるならば簡単であった。
入手先に心当たりがあるからだ。
食材ならば、スーパーに行けば良い。
衣類ならば、洋服屋に行けば良い。
では野草は?
そう言われたときに、心当たりがある人は相当な変わり者だろう。
単に、草が茂っているところに行けば、都合がよく、山菜が生えている
わけではないのだ。
しかも、山菜ごとに群生している場所が異なる。
水辺の近く、光の当たらない場所、コンクリートの隙間。
山菜を探せと言うなら、せめてリストにあるものが
どういった場所に生えているのかまで調べて欲しかった。
というか、それさえなくして見つけてこいなどというのは
無謀だ。あまりに無謀だ…
あの日の僕は、思い返してみれば幸せだったんだと思う @mtsor0bt
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