みんな大好き爆弾正

新巻へもん

逆転のカード

「どうやら勝負がついたようね。これで私の10連勝かしら」

 勝ち誇ったドヤ顔で幼馴染のミキが言う。


 俺達は向かい合ってセンゴク☆サモナーの勝負中。センゴク☆サモナーというのは1対1で対戦するカードゲームだ。自分のターンにコストを払い召喚したもので相手を攻撃し先に相手のライフをゼロにした方が勝ちというありがちなゲーム。ただ、名前の通り召喚するのが戦国武将というのがミソである。


 もともとは俺が先に始めて友達と遊んでいたのだが、幼馴染のミキが私も混ぜろと後からプレイしはじめた。なのに今ではミキの方が腕がいい。昔からこいつはいつもそうだ。幼稚園のときも、小学校のときも俺が遊んでいると絡んでくる。そしてその性格は男勝りな性格で負けず嫌いときていた。


 中学は別の学校に進んだこともあり一時期は疎遠になっていたが、この春に同じ高校に通うようになってからはまた元のような関係に戻っていた。


 で、俺の家のリビングで絶賛カードゲームの対戦中という訳である。年頃の女の子が胡坐をかいて真剣な表情でカードを見つめているというのはどうかと思う。スカートがめくれてその奥が見えそうで見えないというのは健全な男子高校生にとってはなかなか集中力を奪うには十分な光景だった。さらにカードのドローの為に少し俯き加減になるとこうシャツの間から素晴らしい谷間が……。ということで、先ほどから精神攻撃により連敗続き9連敗を喫していた。


 本人は気づいているのかいないのか、故意なのかそうじゃないのか、ニヤニヤと笑う表情からは伺い知れない。純粋に勝負ごとにのめり込んでいるだけのようにも見える。


 ミキははっきりいって見た目は可愛い。クラスでもミキに目をつけているのはいっぱいいる。まあ、猫を被っているときは性格も悪くない。要するにクラスの人気者である。そんなミキが自分で言うのもなんだが正直パッとしない俺とやたらにつるみたがるのは学校の七不思議の一つになっている。


 さて、今の局面だが……。ミキの側には、伊東義祐、相良義陽、肝付兼続、秋月種実とゆー小粒の武将が並んでいる。九州染めの速攻デッキだ。九州ブロックの武将はコストに対して攻撃力が高い。こちらには筒井順慶だけ。毎ターン、武将1体の攻撃宣言を無効化する特殊能力があるとはいえ、武将数の差でどうしようもない。


 おそらく最後のドローとなるだろう1枚を引く。来た。俺の切り札。戦国の雄、みんな大好き爆弾正、松永久秀のカードが手元に入った。場に出ているすべての国カードをタップして召喚力に変換する。これで召喚力6。コスト1の将軍暗殺カードを出して召喚力+3で差し引き8。


 ここでコスト6の松永久秀を召喚する。ミキの顔色が変わった。

「うそ。ここでそれ出すの。やーん」

 可愛い声を出しても無駄。松永久秀カードを破棄して、特殊能力「平蜘蛛爆破」を発動。これで双方全ての武将カードと国カードが破壊される。ケケケ。


 コスト2で赤井直正を召喚して攻撃。丹波の赤鬼は召喚ターンに即攻撃ができる。ミキの手札は1枚だけ。これなら押し切れるだろう。そして、予想通りこの勝負は俺が勝った。


 ミキはふくれっ面で自分のカードを回収しながら言った。

「ぶー。なんであの局面でエロジジイを……。まったく、スケベなヒロにはお似合いだけどね。さあ、もう一勝負よ」

 あ、やっぱりチラチラしてたのバレてたんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

みんな大好き爆弾正 新巻へもん @shakesama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説