森のフクロウさん

チビスケ

森のフクロウさん

ある所に、一面鮮やかな緑で覆われた土地がありました。そこには立派な木々や綺麗な湖があり、果物などが沢山実っていました。

このキレイな森には沢山の動物達が仲良く暮らしていました。


「リスさん達、今日もいい天気だね」


「やぁ、モグラさん。今日もお仕事ご苦労様」


リス達はみんなの為に木の高いところになっているきのみをただ集めていた。モグラは土を豊かにする為に地面を耕している。


「そういえば最近クマさんを見ないけどどうしたのかな? 」


「もう春になったのにまだお休みしてるのかな? 」


「クマさんならさっき川の方で見かけたわ」


草むらの向こうから白くて赤い目をした小さな動物が顔を出した。


「やぁ、ウサギさん。川ってことはお魚でも取りに行ったのかな? 」


「冬の間寝てばかりだったからお腹が空いているのかしら」


「クマさんにはいつもこの森を守ってもらっているから、僕たちで果物を沢山持って行ってあげよう! 」


リス達はクマへ持っていくための果物を沢山取りました。モグラやウサギはたった果物をまとめ、クマの元へと一緒に運びました。



「やぁ、クマさん。おはよう」


「やぁ、みんな。おはよう。俺に何か用かい?」


「クマさんがお腹空いてるんじゃないかと思って果物を取ってきたの」


そういうとリス達は先程取ったばかりの色とりどりの果物をクマの前へと差し出した。リスに続いてモグラ達も運んできた果物を渡した。


「こんなにたくさん......ありがとう! せっかく出しみんなで食べよう」


「ありがとう! 」


クマ達が果物へ手をかけようとしたその時、木々達がザワザワと音を立て始めた。まるで森全体が何か計画している様だった。


「なんだか怖いわ......」


「大丈夫だよ、ウサギさん。この森は俺が守るから! 」


ふと空を見上げると先程までは青く澄んでいた空がみるみるうちに黒色で染められていった。

空をよく見ると何かがうごめいていた。


「みんな、俺から離れないで! 」


「クマさん、あれ! 」


モグラが指をさした方向から黒い何かが沢山近づいてくる。黒い何かは大きな翼を羽ばたかせ、翼には真っ黒な羽が沢山生えていた。

その中でもひときわ大きな何かがクマ達に叫んだ。


「お前ら! 今日からこの森は俺たちカラスのナワバリだ! 従わないなら痛い間に合わせるぞ」


「誰がお前らなんかにこの森を渡すか! 」


突然現れたカラスを前にクマは堂々と言い放った。しかし大きなカラスはニヤリと笑い羽を振り下ろした。それを合図に空を覆っていたカラス達は一斉にクマへと襲いかかる。


「クマさん、気をつけて! 」


「大丈夫! このくらい、えいっ! 」


「いつまで続くかな? 」


襲いかかるカラス達になんとか抵抗するクマだったが、余りにも多くのカラスを前に次第に押されていく。


「このっ! 卑怯だぞ! 」


「なんとでも言え! 」


「仕方ない、ここは一度逃げよう! 」


リス達の掛け声に従い、クマ達とみんなでその場から逃げ去った。カラス達は追いかけることはせず、山積みにあった果物に一心不乱に食いついていた。




「クマさん、怪我は大丈夫? 」


「大丈夫、さっきはありがとうリスさん」


「でも、どうしよう。このままじゃあいつらにこの森が乗っ取られてしまうわ」


みんなで逃げたはいいがこの先どうしたらいいか分からない。このままではこの森が......みんなが悩んでいる間に、次第に太陽が沈み夜になっていった。

普段から静かな森がこの先の不安からかより一層静かに沈んでいた。

ふと静寂の中に、何か羽が羽ばたく様な音が聞こえる。


「奴ら、また襲ってくるのか!? 」


「クマさん、逃げなきゃ! 」


「俺はいいから、みんな逃げるんだ! 」


羽ばたく音はだんだんと近づいてくる。ウサギは震え、モグラは地面へと姿を隠した。

すると羽ばたく音は近くで止まり、静寂が戻ってきた。


「そこにいるのは誰だ! 」


クマが問いかけても返事はない。すると暗闇の向こうから丸い光が2つはっきりと見えてきた。


「私はこの森の監視者です。普段は眠っていますがこの危機を聞きつけやってきました」


「フクロウさん!? 」


リス達は語りかけてきたものの姿を見て叫んだ。普段はフクロウは眠っており起きている姿を誰も見たことがなかったからだ。


「皆さんはここで待っていなさい。私たちがすぐに解決します」


「私たちって......? 」


周りを見渡すと沢山のフクロウに囲まれていた。フクロウ達は静かに近寄っていてクマ達は全く気づかなかったのだ。

フクロウ達は勢いよく飛び立ち、カラスの方へと向かっていった。




カラス達は沢山の果物を食べたせいか、ぐっすりと眠っていた。何羽かは見張りのために起きている様だ。


「早く交代にならないかなぁ」


「まあこの森は食べ物が豊富そうだからいいじゃねぇか」


二羽のカラスに音もなく何かが襲いかかる。二羽のカラスは上から押さえつけられ、身動きが取れないようだ。


「こいつはなしやがれ! 」


「暗くて何も見えないぞ! 」


2人が騒いだせいか周りのカラス達が一斉に起き始めた。しかしカラス達は暗闇の中では目が見えません。

フクロウ達は夜でもはっきりと目が見えるため戸惑うカラス達を次々に抑えつけました。


「くそっ! いい加減にしろ! 」


「いい加減にするのはあなた達です。ここはみんなの森です。この森を荒らすものは私たちが決して許しません! 」


ひときわ大きなカラスがジタバタと暴れています。しかしフクロウは物ともせずにカラスを押さえ込みました。


「くそっ! こんな所でやられるわけには......」


「あなた達も生きるために一生懸命なのでしょう。ここにいる動物達も皆生きるために協力しながら頑張って生きてます。それを脅かすものは許しません」


「ならどうしたらいいんだ! 俺はこいつらのリーダーとして守らなきゃならないんだ! 」


「それなら、このカラス達だけでなく、この森を全部を守ってください。私たちは明るいうちは眠ってしまいます。その間私たちの代わりにみんなを守ってくれませんか? 」


「俺なんかが......俺たちなんかでいいのか。俺たちはどこへ行っても嫌われたばかりなんだぞ!? 」


「この森はみんなの森です。誰であろうと歓迎しますよ」


カラス達は静かになっていった。フクロウは押さえつけていた力を緩めカラス達を解放した。


「わかった。俺たちは今日からこの森を守る! 」


「ようこそ、私たちの森へ」


カラスとフクロウは抱き合いながら和解しました。

周りのカラス達も迎え入れられたことが嬉しいのかとても喜んでいます。




フクロウはクマ達に事情を説明しました。クマ達は最初困惑していましたが、カラス達が謝るのを見るとカラス達を心から歓迎しました。


「これからよろしくね、カラスさん! 」


「あぁ! 任せてくれ! 」


「では私たちはそろそろ眠りにつきます。皆さまおやすみなさい」


「「おやすみなさい」」


飛び去っていくフクロウに向けて全員で挨拶をした。フクロウは音もなく暗闇の中へと消えていった。









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