第1話タイタンの旅立ち 2の1

「起きて」

ぐっすり眠っているところをエンケラドスに起こされた。

「院長がごはん作ったから降りて来いって」

俺は、重い体を起こして、ゆっくりと階段を降りた。

院長に拾われて10年が経った。俺も16歳になり今年から高校に通う。地球という星にある高校だ。ここの高校を選んで、院長に伝えた時、猛反対された。理由は言ってくれなかった。理由もないのに反対しないでくれと、反論しているうちに、「勝手にしろ」といわれて、それ以来あまり話もしていない。

「高校に行く準備は出来ているのか。」

院長の言葉。これでも心配しているらしい。

「出来てるよ。さすがにあと3日後には入学式だし。」

「そうか」

いつも通りの会話。しかし、院長の言葉には寂しさがこもっているような気がする。

「ご飯食べたら行くの?」

ああ。寮は一週間前から開いてるらしいし、入学式初日に遅刻はゴメンだしな。」

「そう-----じゃあみんなで一緒におみおくりするよ」

エンケラドスは、一瞬悲しそうにしたがすぐにいつもの笑顔を取り戻した。

「いつ帰ってこれるの?」

顔は笑顔だが、いつもの元気がない。やっぱり悲しいのだと思う。

「いつだろう。近くの学校じゃないし、夏休みに何かあるかもしれないからな。」

全寮制なのは分かるが、長期休暇の予定は、学校の書類にも載ってなかった。

「まあ、出来るだけ帰って来れるようにするよ」

だから今は、こんなことしか言えなかった。

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タイタンの幼女 @reimano0403

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