3月25日──願い

「ああ、もうこんな貧乏な暮らしはイヤだ。神さま、どうかおれの願いを聞いてください!」


今夜は星々があまりにも美しかったので、おれは夜空に向かって神さまにお祈りを唱えていた。

すると、金色に輝く輪っかを頭の上に乗せた男が、するするとこちらへ降りてきた。

「お前の願い事を、ひとつだけ叶えてやろう」

とその男は言った。

ゆったりと身に纏った白いローブといい、頭に戴いた輪っかといい、威厳のある顔つきといい、どうやらこいつは本物の神さまに違いないぞ。

「あなたは神さまなんですか?」

と尋ねると、

「ああ、そうじゃよ⋯⋯」

と白い髭をいじりながら面倒くさそうに応えた。

なんだか少し機嫌が悪いようだけど、願い事を叶えてくれるのならなんだっていい。

おれは、

「全知全能の力が欲しい!」

という願い事を告げた。


神さまはホッとした表情をすると、自分の頭の上の輪っかをはずしておれの頭の上に乗せた──。


3月25日「神のお告げの祭日」

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Short Short CALENDAR 渋谷獏 @Baku-Shibutani

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