うんこ短編
肋家
第1話 渡る世間は鬼ばかり
「久しぶり〜!ごめんね待たせちゃって」
A子ちゃん久しぶり!僕も今来たとこだから大丈夫だよ。
「最近どう?就活。上手くいってる?」
こっちはまだ全然。取り敢えず企業説明会には行ってるけど。
「ふ〜ん。私もさっき合説行ってきたんだ〜。」
へーいいじゃん。人多かったでしょ。
「すごい多かった〜。もしもコレラが流行ってる世界だったら絶対開催されてなかったかも!」
それはまぁ、就職どころでは無いだろうしね。
「だよね〜。でももしコレラが大流行してて且つ誰もが病を受け入れ緩やかに死を待っているような状況だったなら、開催されてたと思うんだ。」
そうかな?
「そうだよ!それでさぁ、コレラって基本的には人の糞便や吐瀉物で汚れた食べ物や水から感染が広がるんだよね。」
うんうん。
「で、ヤバイ下痢や嘔吐を引き起こすっていうのが主な症状なんだけど。」
改めて聞くと感染経路と症状のシナジーが凄いね。
「うん。それでさぁ、もし世界中の人間がコレラにかかってて、コレラであることが常識である世界だったら、糞便を垂れ流すこともまた常識として扱われてたんじゃないのかなって。」
そうなのかな。
「そうだよ!でね、合説みたいな大きいイベントとかにも、例えば糞便を垂れ流すための水路のようなもの……『
垂れ場……。
「垂れ場。例えば企業ブースなんかで、人事や学生が座る椅子の真下とかに、一本の水路が通してあるの。流しそうめんの流し台を想像してもらえるとわかりやすいと思うんだけど。」
だいたい分かったよ。出すわけだ。話聞きながらブリブリと。
「そうそう、そういうこと。経営理念とか事業内容とか話してる最中にもブリブリ垂れる。垂れてることについてはノータッチで。全員が。」
「それが普通だから誰もその状況に疑問なんて持たないの。分かったようにうんうん頷いて話聞いてるだけ。」
恐ろしい集団心理だ。
「スーツなんかも垂れ専用に作られてるでしょうね。その世の衣服のケツ部分には必ず穴が空いている。」
「きっと
そこまで万人に刺さる性癖でも無いけどね。
「後は集めたきったないうんちを垂れ場から海や畑に流して、終わり!」
感染源それだろ絶対。
「福利厚生の話でも絶対にコレラについて触れる。不足しがちな水や塩分の支給とかしてくれる。学生はそれを聞いて、自分のコレラ型にマッチした企業を見つけるってわけ。」
もう、コレラの病状が血液型かなんかと一緒のカテゴリに分類されちゃってるんだ。
「A型のコレラは几帳面なのでちゃんとトイレで吐瀉排泄する。」
全型そうであってくれよ。
「これって結構良いことだと思うんだけど、どう思う?」
何をもって良いことだと判断したのかわからないけど、まずはコレラ菌が頑張ってくれないことには感染が広がりようもないからな。
でもそんなに多くの人が一斉に下痢したら、音とかうるさそうじゃない?
ビチビチビチビチそこら中から。
「その点は大丈夫。大抵の場合コレラによる下痢は『
そうかな。
「そうだよ!でもよーく耳をすましたら、シャリ…シャリシャリ…って小さな音が聞こえてくると思う。でも、都会の喧騒に揉まれて疲れ切った私達の耳には、とっても優しい音に聞こえると思うの。」
嫌だよそんなサウンドセラピー。
「まぁ全部冗談だけど、合説は絶対に行ったほうがいいよ!垂れ場は無いけどチャレ場(チャレンジの機会の場)はたくさんあるよ!よかったら明日の合説、B
へぇ、そんなに言うなら僕も行こうかな!じゃあ明日の9時頃に駅前で……ちょっと、ちょっと待って。僕の名前B作っていうの?
「え?何言ってるの?B作くんはB作くんでしょ?」
いやいや、B作って。B作ってそれはもう、アレじゃん。佐藤栄作にちなんで名付けられた、芸名のあの俳優じゃん。嫌だよそんなの。そっちがA子なんて糞モブの名前なんだからこっちもB太とかでいいじゃん。
「でも……それだとキミ、瑛太のパチモンになっちゃうんだよ?それでもいいの?」
いいよ、もうこの際。B作よりはいくらかいいよ。佐藤栄作のパチモンのパチモンになるくらいなら、瑛太のパチモンやりますわ。パチモンの段階1個減るもん。それならいいわ。いやよくはないけど。
じゃあ僕もう行くね。これからバンドの練習あるから。
「えっB太くんバンドやってたの?!カッコいい〜何てバンド?」
『おやじバンド』だけど。
「B作じゃねぇか。」
ベースとボーカル担当やってます。
「B作じゃねぇか。」
さっきからうるさいな〜1秒でも早く消えてほしい。トイレその後に。
「B作じゃねぇか。」
〜B作END〜
うんこ短編 肋家 @AbaLunch
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。うんこ短編の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます