きみの心模様を読んでもらう

 広い円形の書庫、その中央でリドルは所在なく立ち尽くしていた。こうして遠目にみると体格がいい。女にしては高身長のアルルより頭ひとつはゆうに高いだろう。


「辞書はどこらへんにあるの」

「どこだったかなあ」

「覚えてねえのか。書庫の主なら管理くらいしろってんだ」


 見かねてラビがおずおずと手を上げた。


「わたしが本の管理をしましょうか。書誌学なら修めていますから」


 リドルとアルルは目をぱちくりとして、あうんの呼吸でたがいの手を打ち合う。


「さすがは有望株の新人だね。この子を見出すあたしの目もさすが」

「では時間があるときにでも頼もうかな」

「はい」


 これだけ広いのだ。分類から配架まで腕が鳴ること間違いなし。実は試してみたい魔術の構文もある。図書検索の体系をうまく組み立てることができれば文献の場所と関連する目ぼしい参考図書を提示することもできるようになるだろう。


「腕の鳴らし甲斐があります。草案は近日中に見繕ってみせましょう」

「お手柔らかにね」


 アルルとラビが辞書を探しているあいだ、リドルは瞑目して天を仰いでいた。いくつか古い辞書を携えていくと、探偵は神妙の面持ちのまま腕を組んでいる。


「どれにする」

「リンディスさんに選んでもらおう。この辞書はきみの心模様を読んでもらうためのものだから」


「わたしを読む?」

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