触るものがみんな擬人化萌えキャラに!

楠樹 暖

触るものがみんな擬人化萌えキャラに!

 異世界に転移するときに、神様からひとつチート能力がもらえることになった。

 萌えキャラが好きなボクは【触るものがみんな擬人化萌えキャラになる能力】をもらった。


 異世界に着いたのでさっそく能力を試してみよう。

 ちょうど猫が歩いている。

「おいで、おいで」

 ニャーンと猫がすり寄ってきた。

 抱きかかえて能力発動!

 ぽわんと猫が少女の姿へと変化。

 猫耳少女がメイド服で「ご奉仕するニャン」と猫招きしている。

 神様ありがとう! ボクに素晴らしい能力をくれて!!


 その後も犬だろうが、猿だろうが、キジだろうが、どんな動物をも萌えキャラに変えることができた。

 ポニーテールやツインテール、ツンデレ、ヤンデレ、眼鏡っ娘。

 みんなボクを慕ってくれるハーレム状態。

 ピロリン!

 レベルが上がって、能力のできることが増えた。

 動物だけでなく、非生物も萌えキャラにできるようになった。

 剣や盾などの武具を触ると萌えキャラに変化!

 ショートソードはロリ少女、ロングソードはお姉さん系。

 元の形の特徴を持った美少女へと姿を変えた。

 剣の萌えキャラはモンスターと戦ってくれるし、盾の萌えキャラはボクを守ってくれる。

 こうしてどんどんと仲間を増やしていき、異世界生活を満喫!


 ――かと思いきや、問題発生。

 レベルが上がって能力が高まると、頼んでもないのに触るだけで擬人化萌えキャラに変わってしまうようになった。

 フォークを触ればフォークの萌えキャラ。

 スプーンを触ればスプーンの萌えキャラ。

 食事を口へ運ぶことができない。

 困った、どうしよう……。

 直接料理を掴もうとしたら……。

 ぽわん!

 料理の擬人化萌えキャラが生まれてしまった。

 パンの萌えキャラ、肉の萌えキャラ、果物の萌えキャラ、等々。

「私を食べて」と言われても、さすがにちょっと……。

 このまま餓死してしまうのかな……。

    ・

    ・

    ・

「はい、あーんして」

 スプーンの萌えキャラがスープを口に運んでくれた。

 そうか!

 自分で触ることはできなくても、他人に運んでもらえばいいのか!

 ナイフの萌えキャラが料理を切り分け、フォークの萌えキャラが口へ運んでくれる。

 これはこれでいいジャン!

 一時は死を意識したけど、これでもう安心!

 心機一転、これでまた異世界生活を満喫できる。

 ボクは自分の両頬を両手でぴしゃんと叩いて気合いを入れた。

 ぽわん!

 その瞬間、ボクはボクの擬人化萌えキャラ(少女)に姿を変えた。


(了)


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