第5話 休憩しよう

 僕は、ずっと気になっていた。

 それに、さっき言ってた「あかりを殺すために僕を来させたわけじゃない」という言葉。あれは一体。


 そんな中、あかりの父親とレイラさんは、すぐさま僕を取り出し、別の肉体に移そうとしてくれた。そして、いまそれ待ちのために僕はあかりのクマのぬいぐるみの中いる。嫌すぎる。

 だけど、僕はそのおかげで、ずっとあかりの傍にいることができた。

「あかり。」

「なによ、今忙しいわ。」

 あかりは、ゲームに夢中になっている。前よりも少し痩せたようだ。もう手首の血管がうっすらと見える。僕はすこし、あかりが死んでしまうことを考え、怖くなった。


 この前、レイラさんに僕は父親の肉体なのに、なぜ僕という自我が生まれたのかと、聞いてみた。

 その答えは、

「きっとあかりが愛しているからよ。」

 それだけだった。

 そうなると、まるで「家族」にこだわっていた僕がピエロだ。

 今でもわからない。「家族」ってなんなんだ。いびつすぎるこのあかりの家族は、なにをしたいのだろう。

 きっと、その気持ちを感じ取ったのだろう。あかりは言った。

「パパが言ってた」

「……なんて?」

「私とままにずっと会いたかったって。どんなに離れてても、どんなに辛いことがあったとしても、2人がいると思ったから黙って耐えてたよ。あかりに私がみちるくんから出ようとしたのを抑えられているとは思わなかったけどって。」

「そうなんだ。」

 家族は、どうやら何があっても、どこにいても、思い合うものらしい。あかりの声は、すこし父親をかばうように話していた。あかりがいいなら、僕はもう何も言わないようにした。

「そいえば、なんでパパが出てくるの抑えてたの?」

「ん?告白出来てなかったからよ。」

「それだけ?」

「うん。告白したら、みちるにかけてる魔法が強くなるかなって思ったから。」

 ちょっとまて。

 僕にかけた魔法ってなんだ。

「おい、勝手に魔法かけてたのかよ。」

「大した魔法じゃないよ。」

「そうゆう問題じゃない。」

 はぁ。つくづく、めちゃくちゃだ。親も子も。

 まぁ、あかりがいいならいいんだけど。僕には、あかりしかいないんだから。

「んふふ。」

 彼女は、あのチョコの日と同じように上目遣いでニヤリとしている。

「なんだよ。」

「なーんでもなーい。」

 そうゆうところも、可愛いなと思ってしまう僕はきっと一生彼女に勝てないと思った。

「あかりはさ、」

「うん?」

「なんの魔法かけてるの?僕に。」


 かちゃかちゃとゲーム機のボタンを押す音が聞こえる。ゲームをしながら答える。

「んー……愛かな!!」

 にこりとくまの人形の僕に向かって笑いかけた。プレイしていたゲームの画面がWINNERになっている。


 僕は、今の僕の立ち位置が今わからない。「家族」なのか、「愛人」なのか。はたまた、「ぬいぐるみ」なのか。


 どれにせよ、もうすぐ死ぬ君と君に生かされているかもしれない僕は、どことなくふたりぼっちなのだ。

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