第2話 私は誰ですか。

 あかりとキスするのはチョコの件で2回目だ。初めの1回は、出会った時だ。僕は物心着いた時からひとりぼっちだった。

 どこかもわからない、たくさんの人が周りを歩いていた。赤や黄、青など綺麗な浴衣を来た人や、腕に模様がある人、様々な人がいた。電柱には灯りが入った袋がたくさん吊るされており、「夏蝉祭り」と書かれていた。だから、ここがどうやらそれらしいことはわかった。しかし、このあっつくて、おなかが減ってる状況から私は混乱していた。それに、私とと同じくらいの背丈の男の子や女の子達は、必ず大人と歩いているのに、私はひとりぼっちだった。

 笑顔の人でいっぱいだった。綺麗でつやつやした丸くて赤い宝石のささった棒を持っている子が気になったから近寄ってみた。その子は私と同じくらいの背丈だった。

 その子は私に気がつくと、言った。

「なんだお前。」

 私は、その言葉の意味がわからなかった。

 でも、私はその赤い宝石が欲しかった。だから、右手をその子にさし出してみた。

「りんご飴が欲しいのか?」

 なにか聞かれたようだったから、とりあえず目をその赤い宝石からその子に移してみた。すると

 ドンッ

「だれがやるかよー!びんぼーめ!」

 私は尻もちをついて転んだ。

 びっくりしたけれど、なにか悪い事だったのかと思い謝ろうと顔を上げた。すると、その子の周りには、また自分と同じくらいの背丈の男の子が2人増えていた。

「なんだこいつー。」

「びんぼーにんじゃね。」

「なんかいえよー。」

「ぎゃははは!!」

 怖かった。私を見るその黒い目が。欲しかった宝石の赤色までもドロドロに黒く見えてきて、怖く感じた。私はそこにいたくなくて、走ってその場を逃げた。


 気がつくと河原にいた。息ぎれがして、ひどく汗まみれだった。

 川の音が、やけに落ち着いた。

 汗が気持ち悪くて、洗うために川辺に座り込み、足を水につけてみた。

 パシャリ。

 気持ちよかった。どこからか、リーリーと音が鳴っていた。両足を上下に動かしてみた。

 パシャパシャ。

 水の涼しい音が響く。安心した。


 さっきの黒いのは、何だったのか。

 考えてみたが、また怖くなるからすぐに考えるのをやめた。

 一体、ここはどこなんだろう。

 私は、なんなのだろうか。

 なんとなく、上を向いてみた。すると、茶色の大きな瞳をらんらんと輝かせた顔が私を見下ろしていた。


「だれ?」

「!?!?」

 僕は驚き、飛び跳ねて川の方に逃げようと、バシャン!と大きな音が響いた。しかし、川の中は足場がヌメヌメしておりすぐに転んだ。私は前のめりに転んだ。


 ばしゃーーーーーん


 とはならなかった。なぜか私は浮いていた。

「!……?????」

「危ないわね!そっちは深いから行ったら死ぬわよ。」


 ふよふよと川辺に浮かんで私はその子の隣に落ちた。

 何が起きたのかわからなかった。

 浮いてた。そうゆう顔をしていたらしい。彼女は言った。

「……あなた、しゃべれないの?」

 さっきの赤い宝石の子とは違う言葉で、私はその言葉の意味が理解出来た。だから答えた。

「ここは、どこですか?私は、気がついたらいました。そして、先程は浮いてました。何故なんですか?あなたは誰ですか?」

 必死だった。この人しか今頼れる人はいないと思ったから。その子は言った。

「なんだ、しゃべれるじゃないの。でも……記憶ないみたいね。そう……。」

 その子は、何やら考えているようだ。顔が険しい。

「????……た、助けてください。怖い思いをしました。私は赤い宝石が欲しかっただけなのに、怖い思いをしました。そして、私には今よくわからない、あなたの言っていること。」

「はーー、わかったわかった。落ち着きなさいよ。」

「浮いてたのはなんなんですか。私は一体、どうしたのでしょうか?」

「だーー!うるさいわね。」

「それに……うわっ」


 むぐっ


 その子の指が手招きをしたと思ったら、私はその子の近くに立っていた。驚いた瞬間に彼女の唇に私の口を塞がれた。

 あたたかな感触に気を取られたのか、私は、なぜかほっとしてしまった。前から知っているかのようなそのぬくもりに。

「……」

「……あなた割とイケメンね。」

「イケ……?」

「あなたは今日から私の家族よ。」

「かぞく?」

「そうよ。」

 かぞくとは、なにかわからなかった。

「かぞくって何ですか?」

「ええ、それも忘れたの……はぁ。まあいいわ。それより私は今から仕事があるの。手伝って。」

「!?」

 その子に聞きたいことは山ほどあったが、その子はすたすたと川の上を歩いていた。

 私は、その子が川の上を歩いてるのにまた驚き、言葉を失った。

「あなたも歩けるわよ。いらっしゃい。」

「むっ、無理です!」

「いいから来い!」

 その子は手招き荒くした。すると、私はその子の元へ吹っ飛んだ。しかし、ばしゃーーーんとはならず、川の上で転んだ。有り得ない。

「わけがわからないです……。」

「さ!今から花火をあげるわ!」

 私ははなびという言葉もわからなかったが、聞いても無駄だと感じて黙って聞いていた。

「あなたな私の足を抑えてて。私が吹っ飛ばないように。それくらいはできるでしょう。」

「抑えればいいんですね。」

「そうよ。後ろからね。お尻触ったら怒るわよ。」

「……?わかりました。」

 私には、わからないことだらけだった。しかし、その子がなにやらブツブツと唱え、両手の平を空に向けた瞬間、その全てがどうでも良くなった。

 空には、大きな大きなキラキラとした花が咲いていたから。

「わぁぁ!なんて、綺麗なんだ!」

「うふふ。私の魔法だもの。そりゃそうよ。」

 私は、とても嬉しかった。空が綺麗で、その子が笑ってるのを見て、胸があたたかくなった。そして、その笑顔を私は見覚えがあった。だから、この子なら私のことを知っているような気がした。

「あの、私は誰なんですか?」

その子は、私を見て、んーーーと唸り声をあげた。しかし、考えることをやめたみたいだ。私を見て満面の笑顔で言った。

「あなたは、みちるよ!」

「?みちる?」

「星みちるね!私の家族よ」

「かぞく……そうですか。」

「かぞく」何回もそうこの子は言ってくれた。きっと、いい意味なのだろうと思った。「でも、家族だけど私、みちるのこと好きになっちゃいそう!あはは!」

僕は意味はよくわからないが、その子は笑ってたから、いい意味だと思い、それ以上は聞かなかった。

 その子はその「はなび」という魔法を何回かやった後、その子の「かぞく」が来て、私も一緒に連れていってくれた。私はそこで最初に「かぞく」は何人もいると知った。

そして、「かぞく」は私を見て、なぜか腹を抱えて笑っていた。

「5歳のくせに、イケメンすぎだろ!」と。



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