9.4:キービジュアルで盛り立てる!

 2021年の覇権ゲームと言える、ウマ娘ですが。

 ゲーム版のキービジュアルも一味違いました。


 キービジュアルとは、ソフトやコンテンツを象徴する画像のこと。

 本の表紙とか、ソフトパッケージの表面とか、ホームページの一番上の画像とか、山手線にある駅の看板――で、使われている大きなイラストのことですね。


 昨今のソーシャルゲームのキービジュアルというと、製作サイドの推しが増える傾向があるせいか、とかくキャラクターが多く載っていることが多い。


 しかしこの連載で、口が酸っぱくなるほど述べてきましたが。

 情報量が多くなると、人は脳で一度に処理しきれず、拒絶の反応が出るとされます。


 しかし、さすがは2021年の覇権タイトルことウマ娘。

 特に、1年目のメインビジュアルでは構図の工夫により、この問題を回避していました。


 では、画像の実物をご覧ください。

 と、言いたいところですが、無断転載になってしまうので、【ウマ娘 キービジュアル】などで、検索をかけてご確認ください。m(_ _)m

 ウマ娘たちが全員、正面を向いてこちらに走ってきている画像です。




 結論から述べると、1年目のウマ娘のキービジュアルは、

 【どこから見ればいいか、視線の誘導が非常にうまく行われている】

 イラストとなります。


 全体は、横に3列(+α)にウマ娘たちが配置された形となっていますが。

 まず、はじめに注目するとしたら、誰しもが最前列の3人。

 特にセンターにいるスペシャルウィークとなるでしょうか。


 1列目:トウカイテイオー、スペシャルウィーク、サイレンススズカ


 この3人は、アニメ1期と2期の主人公格。

 作品の顔となるキャラクターに、先んじて視線が注がれる構図になっています。


 続いて、目を引くのは1列目に続いて、キャラクターが大きく描かれている2列目。

 そして、3列目へと続くでしょうか。


 3列目になるとキャラが6人も並び、やや目移りしやすくなっています。

 しかし中央に、ダイワスカーレットとウオッカのペアが激しく競いながら並んでいますので、「あ、ここから見ればいいのね」とみている人の脳を誘導できます。


 最後方にオチとして、負け組みのハルウララがいるのも目立ちますね。



 このようにウマ娘(1年目)のキービジュアルは、


 ・キャラが大きい1列目→それよりやや小さい2列目→さらに小さい3列目


 という風に前からキャラのサイズを変え、また、


 ・センター正面にいるスペシャルウィーク

 ・3列目の中央で競っているウオッカとダイワスカーレット

 ・最後尾から涙目で追いかけるハルウララ


 というように、注目ポイントを適宜配置していることで、

 【キャラクター多いけど、どこから見てけばいいの?】問題をさりげなく、解決している――ガイドしているわけです。


 なお、3列目には、キャラクターが6人いますが。

 マジックナンバー7±2と並んで、マジックナンバー4±1という法則が知られています。

 マジックナンバー4±1は「人が一度に情報を処理できるのは、3~5個まで」という説。

 こちらの法則を採用すると、6人は多すぎるわけです。


 しかし、ウマ娘のキービジュアルは、中央に明らかに争っているウオッカ&ダイワスカーレットのペアを置くことで、


 ・中央のウオッカ、ダイワスカーレット

 ・右のアグネスタキオン、ライスシャワー

 ・左のナイスネイチャ、ウイニングチケット


 の2ペア×3組に分けることに成功。

 この連載で『2.2:【記憶力の秘密】 チャンク』にて触れたチャンクのテクニックによって、情報量6ではなく情報量3に落とし込むことに成功しています。


『2.2:【記憶力の秘密】 チャンク』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888713584/episodes/1177354054888713903


 無論、言うまでもなく情報量は少ない方が、人は見やすくなります。


 このようにウマ娘の1年目のキービジュアルは、グラフィックの美麗さだけでなく、設計の緻密さによって――クオリティが頭一つ抜けた良イラストであったと私は思います。










 まあ、余談となりますが、現行(2年目)のキービジュアルは、見やすさという点では1年目に譲るかも。


 正面にいるキタサンブラック(の胸の谷間)にばかり目を奪われますが、次にどこに視点を移せばいいのか分からない。

 

 キャラ数が1.5倍になっているので、見づらさに拍車が…。(※1)(※2)

 より、たくさんのキャラクターを露出したいという都合があったのでしょうか。



(※1)

 あくまでこれは勘であって、根拠は全くないのですが。

 当初の予定ではキャラクター数はもっと少なくデザインされていたのかなぁ、という気が若干します。3~4列目がまるっと無かったとか。あるいはもっと間引かれていたとか。

 各方面から、「このキャラも入れてよ」と頼まれ収集がつかなくなったのかなぁ。


(※2)

 これだけのキャラクターを登場させたいのであれば、キービジュアルを2種類作って、そぜぞれに分配して配置しても良かったかもしれませんね。

 ビジュアルAは、スタート時。ビジュアルBは、ゴール直前。

 ビジュアルAにマチカネタンホイザがいる位置に、ビジュアルBではマチカネフクキタルがいるとか。AとBを対比して観ると新しい発見がある感じだと面白いと思います。


 イベント会場にて――通路の右にビジュアルA、通路の左にビジュアルB。

というように、キービジュアルが2枚あるからできる映える演出がありますしね。

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