8.8:将来のアイドルコンテンツはこうなる!? 卒業編
二次元作品に登場するアイドルは飽きられやすく、人気の延命にはグループで売り出すのが有効である。と、述べたのが中編までのあらまし。
ここからは、アイドル単体ではなくグループで売り出すにあたって、どんな方法や長所があるのか、より詳細に考えてみましょう。
もっとも、具体的なメリットについては、『1.2:【艦これに学ぶ】 キャラクターの配置、愛宕編』でも取り上げたわけですが、
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888713584/episodes/1177354054888713719
簡単にまとめると、以下のような5つに集約されると思います。
●1:好きが伝播する
推しのアイドルと、一緒になって活動する(場合によっては共通の魅力をもつ)キャラが存在すると聞いたら、ユーザは、新しい娘にも興味が惹かれずにはいられません。
●2:ファンアートがはかどる(3P編)
萌えゲーユーザは、似た者同士のヒロインをセットにして、男女の仲を深めるシチュエーションを、とても好みます。Pixivなどのお絵かきサイトの題材になるなど、コンテンツ外での盛り上がりの原動力となります。(※1)
●3:ファンアートがはかどる(ボケとツッコミ)
日本の伝統芸能『漫才』に、ボケとツッコミがあるように、違う性格を持つ者同士が、チームを組むことは、面白い話や、シチュエーションを生む土壌を作るのに、とても有効です。
●4:コンプリートしたくなる
AとBとがセット商品であり、Aが手に入れば、Bもなんとかして手に入れたくなるのが、人情というもの。コンプリートするというモチベーションが、ゲームの熱中度や、関連グッズを買い集める動機となります。
●5:キャラクターを記憶しやすくなる
大勢のキャラクターが登場する場合、チャンクというグループを作って登場人物を整理することで、コンテンツの分かりやすさに繋がります。
などなど。こうやってキャラを組み合わせて、表現できるシチュエーションが増やせれば。あるいは、多くのキャラが愛されるように興味を引ければ、中編で述べた、人気の延命作用の一助になります。
翻って、↑のような長所を活かすには、アイドルグループのメンバーに共通点を持たせること。また、『ボケとツッコミ』『ライバル関係』『お姉さまと妹分』といった、面白い相互関係、幅広い交友関係や、ユニット全体のテーマを仕込んでおくことが肝要です。(※2)
ただ、メンバーに同じコスチュームを着せただけでは、アイドルグループとしての魅力を引き出すのは難しいのです。
せっかくですから、幾つか架空の具体例を挙げてみましょう。
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■アキバ系アイドル■
3人とも、いわゆるオタク属性のアイドルユニット。
秋葉原や、即売会の商業ブース、ゲームショーなどに出演して、色んなトラブルに巻き込まれがちである。
・ゲーマー娘:格ゲーからFPS、オタスラングまでなんでもござれ。ゲーム好きであれば、異性とも気取らずフランクに話せる→スキがあるっぽく見える。
性格はサバサバしているけど、体はオトナ。他のメンバーがどちらかというと消極的なため、彼女が引っ張る。
同人作家娘とゲームの趣味があう一方、ガチなエロネタを振られると、内心恥じらってしまう。(が、見栄を張って平気なフリをする)
・コスプレ娘:普段はおとなしい眼鏡っ娘だけど、コスプレするときだけは大胆になれる。また、アイドル衣装もコスプレの一環。
アイドルデビューする前から、こっそりyoutuberとして活動していた。
・同人作家娘:趣味で同人作家としても活動。美少女もボーイズラブもいける。引きこもり体質で、妄想を活かせる同人活動中以外は、働きたくないらしい。
同人の在庫がめっちゃ余ってお金に困っている時に、スカウトマンに声をかけられたので、それに乗っかった。印刷代稼げるし、取材にもなるし。
同人作家としての自分と、アイドルとしての自分は切り分けたいらしく、同人を描いているアイドルだとバレそうになると、めっちゃ恥じらってめっちゃ切れる。
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■イケメンアイドルとその取り巻き■
王子様のようにカッコいいセンターの娘と、その取り巻き2人で構成されたユニット。全員、同じ学園出身の現役女学生。
イケメンアイドルが、取り巻きらをサポートする姿を見せることで、イケメンアイドルの性格の良さが簡単に表現できるという仕組み。(※3)
・イケメンアイドル:成績優秀、スポーツ万能。
後輩の面倒見もよく、学園での人気ナンバーワン。
かつては2年生ながら学園内のある委員会の長を務め、生徒会長にも推薦されかけたが、さすがにアイドルとの両立はこれ以上は不可能だ、と辞退した。
ちょっと男性的でサバサバしているが、それも人気の秘訣。
身もふたもない言い方をすれば、シャニマスのあの娘っぽい感じ。
・取り巻きA:イケメンアイドルの秘書的な立ち位置。
「美しいお姉さまに見とれるのは当然デスが、おさわりは厳禁デス!」と、マネージャー兼ボディガードを自認してアイドル活動に勝手に同行。
その際、彼女自身もかわいかったので、スカウトされた。
これで公然とそばにいられると、まんざらでもないご様子。
「お姉さまの魅力を、余すことなく全世界にお届けしますデスよ!」
イケメンアイドルの一つ下の学年で、かつては本当に委員会の書記をしていた。
行動理念の95%位が、『お姉さまのため』で占められている。
・取り巻きB:イケメンアイドルの秘書的な立ち位置。
おどおど系。学園に入学したてのころ、イケメンアイドルに助けられ、以後の虜に。
取り巻きAとともに、イケメンアイドルが委員長を務める委員の書記をつとめ、アイドル活動にも同行していた。
→かわいかったので、アイドルにスカウトされる。
緊張のためステージでよく失敗するが、お姉さまによく助けられている。
→ますます、惚の字に。
せめて、このアイドルユニットを成功させて、恩返しをしようと思っている。
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■バブみアイドルユニット■
アイドル全員がバブみ(癒しや母性を感じるキャラ、特に年下系に対して使われる言葉)を感じさせる、パーソナリティをもつユニット。
『全員がオレのことを甘やかしてくれるぜ!』みたいな夢のハーレムシチュエーションをファンに抱かせてくれる。
・巫女さん:実家が神社の現役巫女さんアイドル。
ユニットの中では最もお姉さんで、バストも大きいが、せいぜい16~17歳程度の見た目。平均身長と同じか、やや小さい程度の背丈に収まっている。
神様に仕える娘らしく、ご奉仕の精神がたっぷり。
実家の神社がアイドル活動に反対しそうだが、そもそも巫女さんの歴史は芸能とかかわりが深く、祭っている柱も芸能を司る女神様(アメノウズメ)なのでOKらしい。
ラブライブのあの娘に、方向性が近いか?
・ボーイッシュ娘:母性たっぷりなのに、少年っぽいというギャップ。
小柄なうえ、スレンダーな体形で、よく男の子と間違われる。
人懐っこく、遊ぶのが大好きな反面、困った人を見逃せない性分。
「~~君はしょうがないなぁ」と、だいたい何でも許してくれる。
趣味は耳かきをすること。気持ちよさそうにしてくれるのが堪らないらしい。
・正統派バブみ娘:妹風のアイドル。
やや控えめだが、なんでも一生懸命で、炊事洗濯が得意。
マネージャーや事務所の社長さんが喜んでくれるなら、アイドル活動もがんばるよ。
人に尽くしたいけどそこまで手が器用ではないボーイッシュ娘に、料理や手芸を教えていたりする。
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■変身ヒロインアニメ コラボアイドル■
変身ヒロインアニメの公式コスプレイヤーとして、選ばれた3人。
何らかの理由があってソロでは売れなかったアイドルが事務所の垣根を越えて、集められた。つまり問題児ばかり。
最初はチームワークもなくバラバラ。でも経験を積んでいくうちに……という形で、成長物語を組み立てやすそうなユニット。
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■スポーツアイドル■
メンバー全員が何らかのスポーツが得意なユニット。
ステージ中の飛び散る汗、大胆なパフォーマンス、健康美が期待できますね。
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■アクエリアスアイドル■
水がモチーフのユニット。
もちろん、水着グラビアの仕事が多い。
『沖縄出身の娘』『水泳部の娘』はよしとして、『みずがめ座生まれの娘』って何よ? こじつけかよ! というツッコミ待ちのユニット。
・沖縄出身の娘:褐色肌の海人
・水泳部の娘:同じく褐色肌(競泳水着の跡つき)
・みずがめ座生まれの娘:こじつけの設定を自分でも気にしており、取材陣に突っ込まれた際、とっさに『水星で生まれたから』と答えてしまったため、宇宙人属性も加わりキャラ付けの大渋滞状態に。自分でもキャラを見失いかけている。
ただし、ユニットの中で最もスタイルが良く、人当たりも良い常識人。
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■ワンワンアイドル■
人懐っこい、色んなタイプの犬系女の子ルが集まったユニット。
匂いフェチとか、スポーツ大好きとか。
ユニット共通のコスチュームは犬耳つき。
なんか、シートン学園のアニメ見てたら、思いついた。
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■にゃんにゃんアイドル■
上記のワンワンアイドルと同期、かつネタ被りのアイドル。
つまりは、ライバル。
・ワンワンアイドルに敵対心むき出しの娘:好戦的で猫というよりもはや虎
・ワンワンと仲良くしたい娘
・気まぐれな娘:自分がトップアイドルになるのが当然なので、眼中にない。いかにも猫っぽい性格。気まぐれな一方、媚びたりするのは上手い。←わからせてやりたい属性
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などなど。以上、徒然なるままに、アイデアを出してみました。
アイドル単独として見れば、前例もある一般的なものですが、こうしてグループユニットとしてキャラを交わらせれば、ユーザーもふんだんに想像の翼を羽ばたかせることができるのではないでしょうか。
また、この手法は、AKB48などの実在のアイドルユニットでは不可能なことです。
仮に『バブみアイドルユニット』を計画して、それに適した女性アイドルを果たして集めることができるでしょうか?
そんな都合よくはいきませんよね。
まさに、ここまで徹底したグループ間でのコーディネイトは、フィクションであるからこそできること。二次元作品ならでは技なのです。
なお、ここで上げた設定を全て、コンテンツ上で表現し尽す必要はありません。
特にソーシャルゲームでは、『コンプガチャ規制』の影響で――特定のキャラを集めると見られるようなイベントを実装するのは、難しくなっていますし。
しかし、使われなかった設定は、無駄にはなりません。
ゲーム上での再現から漏れた設定は、二次著作のグッズや、ファンアートの恰好のネタ――コンテンツ外での盛り上がりの種になるのですから。(※4)
(※1)
薄い本も作りやすくなります。
(※2)
こうやって、ユーザーの興味を誘導するという観点が、エモいシナリオやキャラクターを設計するのにとても重要であると、私は考えます。
(※3)
『面倒見のいい先輩』という性格にするのであれば、このように面倒を見られる対象(この場合は、取り巻きAとB)も設定するのが肝心。
キャラクターの性格というのは、他のキャラと絡むことによって、表現できるものだからです。
(※4)
例、艦これの姉妹艦。
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