8.7:将来のアイドルコンテンツはこうなる!? 中編
2007年当時、1年間ほどフリーターをやっていた私は、バイト先がある秋葉原に毎日、通っていました。
と、勤め先に行く道すがらに、たびたび、珍しいものを見かけました。
新作ゲームの発売日でもないのに、とあるお店の前で、コミケを彷彿とする行列が連日のように形成されていたのです。
それが、全国区で人気者になる直前のAKB48の専用ライブハウス――。
ドン・キホーテの8Fにある、『AKB48劇場』への入場待機列であったことを知ったのは、後日のことでした。
お茶の間の人気者になる前から、AKB48はコアなファンを獲得していたわけですが、でも、なぜ連日、ファンは同じ劇場に駆けつけたのでしょうか。
●理由1:アナログだから見るたびに変わる
AKB48のショーステージは、当然ながら現実世界で行われます。
出演するのはロボットではなく、生身の人間であるため、1週間連続で同じプログラムを歌っても、どの日もまったく同じという風にはなりません。
だから、AKB48のショーは訪れるたびに、違った感動があります。
ある日、歌っている途中で、推しアイドルと目があった。
推しアイドルが、ちょっとしたミスをした。
でも、その時の恥じらう表情がカワイイ。//
また、遠くの立ち見席で観た時と、最前列で観られた時とでは、同じステージショーでも抱く感慨はまったく異なることでしょう。
AKB48劇場に通うファンにとって、一度とて同じステージはないのです。
だから、1人の推しアイドルだけを応援していても、飽きない。
毎日、あの娘の違う表情がみられるからです。
対して、ゲームやアニメの中のアイドルはどうでしょうか?
『誕生日に起動すると、特別なメッセージが流れる』
といったサプライズは仕込めるものの、原則、朝・昼・夜、いつ見てもグラフィックデータであれば、見た目は変化しません。(変わったら、そりゃバグかホラーだよ?)
●理由2:どのアイドルを推しても、常に最新作が楽しめる
仮に10人のアイドルグループが劇場に出演した場合、センターかどうかの違いはあるものの、10人全員に出番が与えられます。
そして、『理由1:アナログだから見るたびに変わる』で述べたように、現実世界に在籍するアイドルだから、1度として同じショーステージはない。
つまり、アイドルA推しでも、アイドルB推しでも、アイドルC推しでも、アイドルD推しでも、アイドルE推しでも、アイドルF推しでも、アイドルG推しでも、アイドルH推しでも、アイドルI推しでも、アイドルJ推しでも――出演日に劇場に行けば、最新の彼女たちのパフォーマンスが観られるわけです。
また、ソロデビュー作とかなら別ですが、新曲をリリースすると、所属アイドルが全員歌っているわけですから、どのアイドルを推していても『推しの新作』として楽しめます。
対して、二次元の作品だとここまで高頻度で、新作は提供できません。
ガチャが前提のソーシャルゲームなどが顕著で、たとえお気に入りのキャラができたとしても、彼・彼女の新しいバージョンが実装されるのは、よくて数か月に一度。
つまり、現実のアイドルを応援するのであれば、推しの新作が常に楽しめるから、飽きずに追える。金銭的に買い支えたければ、TVや劇場に出演するたびに観に行けば良い。
対して、二次元作品に登場するアイドルは、イラストや声を制作するのに時を取られます。
手段や頻度が限られるため、(金銭的な意味も含めて)応援したくてもなかなか機会に恵まれないのです。(※1)
●理由3:小回りがきく。柔軟にサプライズができる
今ではなくなってしまいましたが、かつて、秋葉原にあるAKB48劇場にはカフェが併設されており、AKB48のメンバーが不定期に給仕をするというサービスがあったそうです。
お気に入りの推しアイドルが、自分が頼んだ料理を持ってきてくれたとしたら、忘れられないサプライズになりますよね。
現実世界だとアイドルの予定が空いてさえいれば、こういうサプライズが仕掛けられる。
意外性があるから、飽きずに応援が続けられます。(※2)
二次全作品のキャラクターは、残念ながらこのような柔軟性を持ちません。
なぜなら、イラストや声を用意するのに時間がかかって……(以下略)
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などと、もっともらしく理由を並べてきましたが。
現実のアイドルだと、出会うたびに万華鏡を覗くように新しい表情を見られるけど、二次元作品の登場人物はそうはいかない。
だから、ゲームやアニメなどの二次原作品において、仮に推しキャラが1人できたとしても、飽きられるのはすごく早いぜ。というシンプルな現実が存在します。(※3)
別にこれは、アイドルものに限ったことではありません。
放送期間が1クール(※4)のTVアニメ内で、ヒロインがpixivなどのお絵かきサイトで話題になったとしても、放送が終わることには人気に陰りが見えている。
なんて、例は残念ながら枚挙にいとまがありません。
だからこそ、二次元のキャラクターはチームで売り出すべきなのです。
推しキャラを1人だけでなく、2人や3人持ってもらった方がいい。
1人より、2人や3人の方が、提供できる情報が多いから飽きられにくい。
他のキャラとの絡みを見せることにより、より多くのシチュエーションが表現できて、キャラクター人気の寿命を延ばすことができるからです。
(※1)
二次元作品でも、キャラクターが歌っているという風のソロシングルや、アイドルユニットの楽曲が発売されることもありますが――それが継続的に可能なほどの資本力のあるプロジェクトが、どれだけあるのか、という生々しい問題があります。
(※2)
他にも、かつては劇場の横にグッズ売り場や、【握手券】【サイン色紙】が当たるガチャが設置されていたそうです。劇場に飽きずに通える工夫がいくつもなされていました。
(※3)
人気の延命策として、ソーシャルゲームでは、何十時間もかけてキャラを進化させることで、ようやく新しいイラストが見られるようにしたり。
そもそも、お目当てのキャラの新作が、なかなかガチャで当たらないようにしたり。という力業で、ユーザーをゲームに引きとめているのが現状です。
忍耐をユーザーに求めているわけで、健全かと問われたらそうではなないと言わざるをえないでしょう。
(※4) 1クール
3か月分の放送期間。12~13話程度。
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