第140話 また来週に

 俺がお粥を食べ終わった数十分後、優奈と美優が起きたらしくこちらへとやって来た。



「陽一くん!だ、大丈夫!?」

「お兄ちゃん!もう動いていいんですか!?」



 2人は、俺の姿を見るなり鬼気迫る表情で尋ねてきた。

 俺は、そんな2人に圧倒されつつもしっかりと答えた。



「う、うん、大丈夫だよ。2人とも、心配かけてごめんね。」



 俺がそう言うと2人は、安堵の息を吐いた。



「もう、本当に心配したんだから。」

「本当です。そもそもどうしてまた過去のことを知ろうと思ったんですか?こうなることは分かってましたよね?」

「うっ……ま、まぁ、色々とあるんだよ。」



 本人を目の前にして説明するのは少し恥ずかしいので答えを濁すように答えた。

 すると、少しの間美優にジト目で見られてしまったがすぐにため息をついていつもの雰囲気に戻った。



「まぁ、答えたくないことを無理やり聞きはしませんが……これ以上は無茶しないでください。」

「ああ、もう当分の間やめておく。」



 さすがにこれからはもっと慎重に行くべきだと思っている。



「それで私たちがいない間はどんなお話をされていたんですか?」

「ん?あ、ああ……」



 俺は、2人に今度みんなで料理を作ることになったと伝えた。

 予想通り美優は、俺と料理出来ると喜んでいる。



「優奈もいいか?俺たちの面倒を見てもらうことになるが……」

「うん、もちろん大丈夫だよ。……それに、陽一くんと一緒に料理してみたかったから……嬉しい。」

「っ!」



 小さな声でそう言った優奈の表情はたしかに嬉しそうだった。まぁ、俺は、ドキリとさせられてしまったが。



「ふふっ、みんなの参加が決まった事だしいつしましょうか?」

「来週の土曜日がいいです!」



 美優が手を挙げそう言った。



「ん?確か次の土曜日って美優の誕生日だったよな?」

「っ!し、知ってたんですか!?」

「お義母さんから聞いてたんだ。まぁ、美優には正直凄く助けて貰ってるからな。なにか恩返しとしてプレゼント出来たらなって思って。」

「お、お兄ちゃん……嬉しいです!」



 美優は、瞳をキラキラと輝かせ両手を胸の前で組んで喜んだ。



「だからこそ、私はプレゼントとしてお兄ちゃんと一緒に料理がしたいです!」

「そ、そんなのでいいのか?」

「はい!他2人がいるのは少々嫌ですが……」



 美優は、そう言いながらチラチラと静香と優奈を一瞬だけ見た。



「そ、そう言うなって。きっとみんなでした方が楽しいし美味しいものも作れるぞ。」

「お兄ちゃんと2人きりの方が絶対に楽しいと思うのですが……まぁ、美味しいものを作れる自信はないので仕方ありません。」



 俺は、美優のその言葉を聞いてホッと安堵の息を吐いた。

 この3人、いつ喧嘩になるか分からないからな。



「陽一くん……」



 俺がそんなことを思っていると優奈が俺の袖を引っ張て俺の耳元に口を寄せてきて小声で話しかけてきた。



「そろそろ帰らないと。」



 優奈の手にはスマホがあり恐らく優奈のお母さんである七海さんに帰ってきなさいと言われたんだろう。

 時間も21時を超えていた。



「ああ、そうだな。」



 俺は、優奈に短くそう返してお義母さんたちの方を向いた。



「すいません、そろそろ俺たちは帰ります。」

「えー!?お兄ちゃん、もう帰っちゃうんですか!?」



 俺の言葉にすぐに反応したのは美優だった。もちろんものすごく不満たっぷりな表情だった。



「あら、今日はもう遅いし泊まっていったら?」



 そう提案を出してきたのはお義母さんだ。

 その提案に美優はうんうんと頷いている。

 だが、隣にいる優奈は少し困ったような表情をしていた。まぁ、さすがに急に泊まりになるなんてなったら七海さんが心配するだろう。



「すいません、親に何も言ってないので急に泊まることは出来ません。」



 俺は、そう言ってキッパリと断った。

 まぁ、実際俺の場合は親に今から言っても「あ、そう。」だけ言われて終わりだろうが。麗華は、絶対に怒ってくるけど。



「う〜ん……まぁ、確かに良く考えればそうね。それに陽一くんは今日は居心地のいいところで眠った方がいいわよね。」

「むぅ……残念ですけどお兄ちゃんの体調はものすごく心配なのでこれ以上わがままを言うのは止めておきます。」



 美優は、確かにすごく残念そうな表情で項垂れている。でも、ちゃんとわがままを自重してくれたからな。



「あっ!それじゃ、来週はお泊まりしていきませんか?」

「来週か………」



 一応来週の予定を頭の中で考えてみるも何も思いつかないので暇だ。



「まぁ、俺は、大丈夫だけど………」



 俺は、そう言いながら優奈と静香の方を見てみる。



「私は、お母さんに事前に伝えたら大丈夫だと思う。」

「私もちゃんと連絡すればいいと思うわ。」

「なら決まりですね!」



 美優は、2人の答えを聞いて手をパンと叩いて嬉しそうにそう言った。

 お義母さんとお義父さんも嬉しそうにしている。



「それじゃ、来週は朝早くから集まってみんなで何を作るか決めて買い物などに行きましょう!」



 美優は、来週のことが余程楽しみなのかもう計画を立て始めている。

 ははっ、こう見るとやっぱり小さい子どもなんだなって思う。

 その後、来週の予定を軽く話した。それを終えた静香は家の人に迎えに来てもらって帰っていった。

 俺と優奈も園江さんの車で送ってもらった。

 その車の中で俺と優奈は少し話し明日も会うことが決まった。

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許嫁が幼女はさすがに無理があります 白狼 @mojidaishoukan

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