臆病者

@megarove-17

第1話

『臆病者』


プロローグ


「死にたい」

言葉が口から飛びだした。


私の頭上にはカラッと晴れた空


私の足元には先程の雨で溜まった水溜り


私の向かいには隣で口をあんぐりと開け、コンビニ弁当の唐揚げを箸から落とした茶髪メイクのクラスメイト


私の膝には湯気を立てているスープジャー


─おま、何言い出すん?

ほら見てみクラスメイトドン引きやんけ...

友人候補がまた消えんで...


と私の脳内で妄想関西人が騒ぎ立てる。

しかし彼の前提が既に間違えている。

彼女は友人候補でも何でもない。

スープあっつ

ただ授業で組まされたクラスメイトなうえに彼女はいじめをして今ハブられているヤバい子だ。

陰キャ度100%に近い私が友達候補に選ぶわけないだろう。

お、スープ冷めてきた。

それに世界って素晴らしいと言いたくなるようないい天気に死にたいって言い出す人間と友達になりたいと思うやつはいないだろう。

スープうめぇ。

と、思考が回っていたところで彼女は冷静になったらしい。

まず、落とした唐揚げをなんとかしようと考えたらしく、

「...3秒ルールでこの唐揚げたべれるかな?」

と言いながら都会の雨で作られた水溜まりにハマった唐揚げに箸を近づける。

流石に人間としての尊厳を失いそうな彼女をほっとく訳には行かない。

私は彼女の手を掴む。

彼女は死にたいと言ってから動いてなかった私が手首を掴んだ事に吃驚したのか体を震わした。

「...や、やめと、といた方が、い、いいんじゃ、あ、な、いかな...」

語尾はどことなく萎んでしまう。

話すのが下手な私はなんの反応もしない彼女に不安になってきた。

でも彼女は太陽のような笑顔を向けて

「ちゃんと話せるんじゃん!」

と笑った。

そして

「あんたも死にたいんだね。実は私もなの。」

そう言って彼女は秘密めいた顔で笑った。

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