第6話

翌日もやっぱり雨だった。


さぁて、ダンジョンに行ってみるかな。

まずは日帰りでいいな。

ついでにギルドで買取の素材も確認してからダンジョンへ向かうか。


シスナから歩いて約1時間、大きな川のほとりにトンネルのような洞窟にダンジョンはあった。

入り口にはギルドの職員の小屋がある。

ダンジョンに入るにはココで受付を済ませなければならない。万が一ダンジョン内で行方不明になった時に確認が取れるようにするためだ。

「おう、兄さんカード出して。」

「はい、お願いします。」


「あいよ、確認できた。ルーキーのEランクか。カードに履歴がないからダンジョンは初めてのようだな。」


「はい。シスナで先輩達から20階でやめとけってアドバイスはもらってるので今日は半分の10階で戻る予定です。」


「そこまでしっかり考えてるなら、何も言わねぇ。焦らず無事に帰って来い。」


軽いやりとりを済ませて、洞窟の中へ進んでいく。


ダンジョンの中は基本明るい。

壁がほのかに光を出しているからだ。

ダンジョン最深部の核の魔力で動いているらしいが詳しい事は分かっていない。長年の研究の対象になっているようだが最深部の核の存在も誰も見た事が無いのだ。

故に、現在の結論は

【ダンジョンとはそうゆうモノらしい】

ということ。


あと、ダンジョン内の沢山のモンスターがいるが決して外には出てこない。

そして倒したモンスターは一部の素材だけを残して消えてしまう。

モンスターの消えた部分をダンジョンが吸収してまたモンスターを発生させているらしい。コレも詳しい事は分かっていない。


そしてこの世界は家畜の生産があまり盛んでは無いので、ダンジョンは良好の狩場になっている。


(とりあえずは、半分の5階を目指して行こうか。油断は禁物でいく。)


しばらくは一本道が続き、二股に分かれた。

まずは右に行ってみるか。


すると奥から体長1メートルちょっとの黒い影が2体出てきた。棍棒を持ったゴブリンだ。

ショートソードを構えて迎撃する。

さすがにこの辺りは楽勝だ。あっという間に2匹とも胴切りにした。

すると耳と棍棒だけを残してゴブリンが光に包まれ地面に吸い込まれるように消えた。


(なるほどね、ダンジョンではこんな感じでやっていくんだな。とりあえず邪魔だから…)

討伐証明の耳と棍棒2つをアイテムボックスに片付ける。頭で大きな袋をイメージして手をかざすと黒い空間が出来るのでそこに投げ入れる。

入れると目の前にゲームでよくある半透明なディスプレイが現れマス目の中に棍棒とゴブリンの耳のアイコンが並ぶ。


整理が不要なのでコレは便利だ。講習でもあったが空間魔法は失伝して久しい物で、空間魔法応用のアイテムボックス持ちは数がかなり少ない。しかもハジメの容量はマス目を見る限り相当の量だ。無闇に人前では出さないようにして普段は背中の袋で偽装している。


何度かの戦闘を終えて向かう先に下に降りる階段が現れた。階段はモンスターが近づけないので一種のセーフティゾーンにもなってる。

ゆっくりと階段を降りて2階を進む。


二階からは積み上げられたような石壁に様になってやはり壁は明るかった。

それでも出現するのはゴブリンやコボルトがほとんどだった。

二階から四階まで順調に進みいよいよ五階への階段というところで、昨日の女神の言葉が頭をよぎった。


(今の所順調だけど、昨日のあれは俗に言うフラグってヤツだったのかな?)


なんて事を考えながら階段を降りたら踏み外したのか、急に足元の感覚が無くなった。

勢いよく下に向かって落ちていく。派手に尻餅をついてようやく地面の感覚があった。



(あぁ、ケツ痛てぇ。なんだよいきなり。)


先ほどまで明るかったダンジョンのはずが灯りがほとんどついてない。

微かに遠くに灯りが漏れている所がある。


「何処だココ?とりあえずあの先に見える灯りの所まで行くか。」

左手はどうやら壁のようで壁伝いに歩いていく。よく見えないが足元はどうやら石畳のような感じがある。

少し歩いてたどり着いた灯りが漏れていた所には扉があった。


「なんか頑丈そうな扉だな。取手がないから押せばイイのか?」


(思ったより重たい扉だな!んぐぐぐ、はぁはぁもう少しで開くか?)

最後の方は肩でタックルする様に押し込んで扉を開けた。ハジメは扉の中の光に目が眩んだ。

2、3分経っただろうか、ようやくハジメの目が慣れてきた。

綺麗な蒼いテーブルが光っていた。

テーブルまで行くと一枚のタブレットみたいな板が光っている。

恐るおそるタップしてみるとメロディーが流れ画面からホログラムなのか小さな人間が現れた。


『よくこの部屋を見つけてくれた。もう待ちすぎて誰も来ないかと諦めかけてた所だ。私の名前は…忘れてしまった。些細な事だ気にするな。コレはプログラムなので一方的に話す。まずはこの部屋の所有権は君に移ったから好きに使うと良い。』

(使っていいと言われても…)


『まぁいきなり言われても困るだろう。簡単に部屋にある道具の使い方をまとめておいたからこのプログラムの後に検索してみてくれ。私が召喚される前の世界の生活様式を再現したモノでとても便利だ。


説明を要約すると半地下の2階建になっていて上は寝室とトイレ風呂が地下は研究スペースだったようだ。二階は後でゆっくり見ておこう。

まずは下の研究スペースを見るか。


リビングの半地下の階段を降りて部屋に入る。沢山の本棚と机と床に怪しい魔法陣が僅かに光っている。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

冒険記(仮) @masa5813

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ