第四話 隣の席のあの子

やっとのことで、新学期の挨拶が終わって時計の針は午前の11時を指していた。

そろそろ終わるころだろう。校長のわけのわからない話をただ黙って聞き、そろそろ桜の季節だとか、新学年のどうのこうのだとか、意味があるのだろうか、老人ってのは話が長いうえに、同じことを何度も繰り返す。だから、いやなんだ。

まあ、そんなこんなで、再び教室に帰ってきたわけであって、みんなもぐったりとつかれているようだった。

やっちゃん先生がみんなの様子をうかがって心配そうにしているのが視界の隅に入った、僕と目が合ったやっちゃん先生がにこっと微笑んでくれた。

僕も愛想笑いで返す。

やっちゃん先生がよしっと小声を出し、出席簿をとんと鳴らした。

「み、みんな、今日はこれで終わりです!明日から気を引き締めてがんばっていこう!!」

「はーい」

「よっしゃあ!」

教室に飛び交う、協調性がある声。

そして、ガヤガヤとかえろうぜー、モールいこっ、だとか、仲間同士で帰る姿が目に入っていく。

もちろん僕もとっとと帰るつもりだった。

彼女に声をかけられるまでは、

「あ、あのさ、」

帰る用意をしていたところ、彼女に声をかけられた。

(最悪だ、、全く、)

幸い、彼女の周りの奴らは先に帰っていたので、そこだけは

考慮したうえで声をかけてくれたのだろうか。

だが、、

いやな予感がムカデのように走る。

「なにかな?」

僕は、自分でもわかるくらいひきっつった顔で返す。

「前にさ!陸上、やってたよね?」

彼女は僕のひきっつった顔なんか気にもしないできらきらとした目で

僕に問いかけた。

「、まあね、」

僕の喉に何かが詰まったように、声が出しにくかった、。

「いやあ!私の友達がさあ!かずっちと同じ中学だったらしくてさー!前に陸上やってて超はやい!みたいなことを言ってて。でも高校は陸上やってないからなんでなのかなあみたいな」

ちょっと早口で、また冗談めかして彼女は笑いながら、僕に話していた。

それを今聞くか、、とか以前にまだまだ初対面の相手にそんなに踏み入ろうとするその神経がおかしい、

「あはは、まあいろいろあって。」

僕はいつも通り、なるべく笑うように答えた。

(これ以上聞かないでほしい、早く終われ、もうやめてくれ)

「えー!ってまあ。そりゃいろいろあるよね!でも、足速いのにもったいないなあ」

彼女がしょぼんとした顔でつぶやいた。

「、続けてなかったんだ、。」

僕には何を言ってるかわからなかったけど、彼女がなにか知っていることだけはわかった、。

「ゆうー、かえろおー」

彼女はハッと気が付いたように手をたたいた。

「ま、じゃあ!!またあしたね!」

勢いよく立ち上がり、少しヤンキーじみたグループの子たちにまじち教室を後にした、

彼女は何かを知っている、、最悪だ。

せっかく、中学の地元から結構離れた高校を選んだのにな、。


僕の居場所はどこにもない。






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これは、僕と私の物語 個性 @sakura8794

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