第12話 そんな事するくらいなら、モンスターにする方がマシだよっ!
「うぅ……、うっく……」
暗闇の中、薄気味悪いというか気持ち悪いと言うかそんなような声が木霊する。断じて、化け物の声ではない。
声の主は…………ライル。
ボクの隣で、ライルは激泣きしていた。
「…………」
ボクは黙ってライルを見つめる。ライルはブツブツと、何かを呟いた。
「この…オレが…あんな……あんな……っく!」
そしてまた泣く。さっき起こった出来事が、余程悔しかったようだ。そう、さっきの出来事。それは宝箱の罠に簡単に引っかかってしまったこと。
盗賊なのに、あんな罠に……。
それが余程悔しいみたいだ。……うん、わかるよ。悔しいよね?けどさ、そんなに泣くことなくないかな?20歳の青年がさ、こんなことで激泣きするなんてあんまないよね?
みっともなく涙を流すライルを、ボクは直視することが出来なくてそろりと、視線を外した。
「うぅ………うぅ…」
中々泣き止まないライル。いい加減に泣き止まないと、そろそろある人が怒りそうだよ…。ボクはそのある人に目線を向ける。
「……………(怒)」
案の定、かなりの怒りのオーラを感じた。このオーラのお陰で、モンスターも近寄れないぐらいな怒り。
「うぅ…うっ、うっ……」
「……………っ」
「うっ、うっぐ……」
まだ泣き止まないライル。
もうダメだな………怒りMAXだよ………あのお方は…。ボクが目線を逸らしたと同時に、あるお方の怒鳴り声。
「いい加減にしなさいよっ!あんた!!」
今にも攻撃魔法をぶつけような程の勢いで、あるお方=レイラさんが怒鳴り声をあげた。
地面を踏みつけながら、レイラさんはライルに言葉をぶつける。
「うじうじうじうじ!ウザイのよ!あんた!!」
「うっせー!てめぇに、オレの繊細かつ純粋な男心がわかんねーだろーよっ!」
「そんなウジ虫みたいな男心なんかわかるもんですか!」
「うんだとー!てめぇー!!聞き捨てならねぇー!この鬼女!」
涙と鼻水を垂らしながら怒鳴るライルに、はっきり言って迫力はない。それとは対照的に、レイラさんの顔は般若のお面のような顔だった。
……この場合、どっちが直視できる顔なんだろうか?ボクはそんなくだらない事を考えた。そんなボクの横で、ぼそりと呟くメシアさん。
「ウジ虫男と鬼女の戦いですわね。どちらがより化け物に近いのかしら?」
「メ、メシアさん、それ、なんか言い方が嫌です」
いつもの無表情な顔で言うもんだから、余計と嫌な感じがする。仮にも仲間なんですから、フォローぐらい欲しいです……。ボクの言葉に少し黙って考え事をしだしたメシアさん。ふと、視線をレイラさんとライルに向けた。
「私にいい考えがありますわ」
じっと、ライルを見ながらメシアさんが言った。
「アスカさんがキスをしてくれるみたいですよ」
その言葉聞いた途端、ライルの顔がとても輝いた。洞窟内を照らすライトアップより輝いている。
「えっ!?」
顔を真っ赤にさせながら、嬉しそうに驚くライル。
「ええっ!?」
ボクはというと、メシアさんの言葉に顔を青ざめた。そしてボクは顎が外れるんではないかと言うくらい口をあけた。その後……叫ぶ…。
「なっ、――――――――――――――っ!!??」
ボクが混乱する頭で、メシアさん、ライルを交互に見る。メシアさんの顔はあいも変わらずの無表情。ライルは…………ボクが思わず殴りたくなるような顔。
「な、な、な、っ!!何言っちゃってんですか!?」
「あら、いい考えね」
メシアさんの言葉に、レイラさんが賛成する。ボクは、断固拒否。
「いい考えじゃないです!なんでボクがキス……っ!」
今度はボクが泣きたくなった。なんで男のボクが男のライルに、キスしないといけないんだよー!!
「アスカ……オレはお前がキ、キ、キスしてくれるなら…泣き止むぜ」
目元を涙で濡らしながら、顔を真っ赤にさせボクに言うライル。
………本気でなんかヤダ………。
「ボクは絶対イヤです――――――――――っ!!」
洞窟内で、ボクの叫びが木霊した。
勇者なの!? 紫斬武 @kanazashi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。勇者なの!?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます