第11話 盗賊なのに!?盗賊なのに!?なんでそんなのにひっかかってんの!?
「はー、はー、はー………」
せわしないボクらの息遣い。兎に角全力で逃げまくった。もちろん囲まれたモンスターからだ。
…………って、前回もこんな感じで始まらなかったっけ?
案の定、ライルは涼しい顔で立っている。ああ、なんか見覚えがあるよ。ボクがそんな事を思っていると、メシアさんが水晶玉を見ながら口を開いた。
「この先に、宝箱がありますわ」
そう言った瞬間、瞬時に反応したのはライルとレイラさん。
「何!?」
「何ですって!?」
こう言う瞬間を見ると、似たもの同士って感じに思えるよね。そんな事を言ったら、即否定されそうだけど。
「全は急げよ!行くわよ、宝箱まで!」
「あったりめぇーだろ!」
ガシっとばかりにライルとレイラさんが手を合わせ、顔を見合わせるとすぐさま宝箱があるであろう方向に顔を向け、風の如く走り去って行った。ボクは横にいるメシアさんに顔を向ける。
「とりあえず、ボクらも行きましょうか」
「ええ、そうですわね」
メシアさんの頷きを確認してから、ボクは歩き出した。
目の前には宝箱。
な~んの変哲も無い宝箱。
レイラさんが、瞳を輝かせながら宝箱に駆け寄ろうとすると、いつになく真剣な口調でライルが叫んだ。
「レイラ!ちょい待て!」
レイラさんの肩を掴み、グイッと後ろに引っ張る。どうしたんだろう、ライル……。ボクが疑問に思っていると、その謎は直ぐに解けた。
レイラさんを引っ張った後、ライルが地面に手を置いて何かを探すような仕草をした。しばらくして、カチっという音がしたと思ったら宝箱の方に矢が飛んでいった。
「やっぱな、罠がありやがった」
ライルが膝の砂をはらって立ち上がる。
「これで、宝箱まではいけるぜ」
そして振り返りニヤッと笑った。ボクは思わず拍手した。
「す、すっごい!ライル」
ほんの少しだけ、ボクはライルを尊敬した。やっぱ、腐っても盗賊なんだね!
「アスカ……んなに誉めんなよ……、テレるじゃねぇーか」
「でも、本当に凄いよ!ね?レイラさん、メシアさん」
そう言ってボクがレイラさん達の方を見ると、すでに宝箱の方へと駆け寄っていた。まったくもって、ライルの活躍は無視。…………なんか、可哀想になってきたよ………。ライルの方を見ると、怒りMAXのようで………。青筋を立てながら、レイラさん達の方へ怒鳴りながら走って行った。
「レイラ!てめぇ!オレの活躍だぞ!オレの許可なしに開けんなよ!!」
そんなライルを、ボクは追いかける。ライルがレイラさんに開けるなと言っているが、まったく持って無視をするレイラさんは、宝箱に手をかけた。………かけたが………開かなかった。
「あ、開かないんですか?」
ボクがレイラさんに声をかけると、ギラついた瞳をしながらライルに言った。
「ライル、さっさと開けなさいよ」
宝箱を指差しながら、レイラさんが命令口調で話す。ライルは不機嫌そうな顔をした。
「その言い草、マジムカツク」
「何よ、じゃああんたは宝箱の中身が欲しくないわけ!?」
「んだと!んなこと一言も言ってねぇーだろーがっ!」
またもや始まってしまった喧嘩に、ボクは大きく溜め息をつく。溜め息を吐きながらも、やっぱりほっとけなくて止めに入った。
「こんな所に来てまで喧嘩は止めましょう!ライル、鍵かかってるみたいだし、開けてくれないかな?」
ボクが言うと、瞳を輝かせながらライルは首が折れるんじゃないかってぐらい首を縦に振った。傍から見ると、犬のようだ。
「おう!アスカが言うなら仕方がねぇーな!任せとけよ!こんな鍵なんて、魔王を倒すぐらいに簡単だぜ!」
「え!?それって本当に簡単な事!?」
「おう!」
「ええ!?そんなに元気に返事しちゃって、本当に大丈夫なの!?」
ボクの言葉に、うんうん頷くライルが懐から長細い針金をだし、宝箱の解除にかかった。
ああ、良かった…。無事に事が進められそうだよ。
カチャカチャ。
静まり返った洞窟の中で、カチャカチャと鍵を開けようとする音が木霊する。
カチャカチャ。
カチャ…カチャチャ……。
カチャ…カチャ………………………カチャン!
しばらくすると、鍵の開く音が聞こえた。ライルの方を見ると、くるっと首だけをこちらに向けた。針金を口に咥えながら、口を端を上げて笑った。
「完了だぜ」
「やったわ!早く開けるわよ!」
すぐさま反応したレイラさんが、ライルの方に駆け寄っていく。ボクも一緒になって駆け寄った。
「……開けるぜ……」
ライルが宝箱に手をかけながら言った。その言葉に、ボクは頷く。
うわ~…ドキドキしてきたよっ!
ドキドキとする心臓を抑えながら、ボクはゆっくりと宝箱が開けられていくのを見ていた。
そして開けられる宝箱。
中から出てきたのは…………。
「………っなっ!!!!」
ぼん!!!
…………中から出てきたのは……よくビックリ箱からでてくるような舌を出したオモチャ。
その舌には文字が書いてあった。ボクはその文字を読む。
「……ば~ぁ~か?……ば、馬鹿?」
そうこれは………本物の宝箱ではなく……偽物だった……。と、盗賊なのに、こんなのに引っかかっちゃたよ……。その場の空気が一気に冷めたのは、言うまでもない。しばらく、ボクらは振動で跳ね続けるオモチャを見続けていた。
そしてついでに言うならば、メシアさんが宝箱の場所についてからで一言もしゃべっていないこれだから無口なキャラでダメなんだよね……。
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