第10話 ボクの特技ってそれなの!?もっとまともな特技が欲しいよ!!
「はー、はー、はー………」
せわしないボクらの息遣い。兎に角全力で逃げまくった。もちろん囲まれたモンスターからだ。
「まさか、あんなに沢山いるとはなー」
涼しい顔をして言うのは、ライル。ボクと違ってまったく疲れた顔をしていない。
なんか、ちょっと見直したかも…。
ボクがそんな事を思っていると、涼しい顔をしているライルに気づいたレイラさんが、ライルに顔を向けながら言った。
「あ、あんた……つ、疲れて…ないわけ?」
ゆっくり息を整えるレイラさん。ライルは伸びをしながら、レイラさんの問いかけに答える。
「オレ、盗賊修行で体力には自信があんだよ。師匠に結構走らされたぜ?千キロとか」
「え?!せ、千キロも!?」
ボクが驚いて声を上げると、にっこり笑ってライルが答える。
「おう、他には海のど真ん中に落とされて島まで泳がされたり、洞窟の中に入れられて、ライトアップの魔法が使えるようになるまで閉じ込められたり、まあ、色々とな」
壮絶のライルの生い立ちに、ボクは絶句する。
「この辺は、生ぬるい方だけどよ」
しかも付け加えるように言うライル。………盗賊の修行って奥が深いんだな……。
「あんた、だから打たれ強いのね」
怪訝な瞳を向けながらレイラさんが言った。メシアさんが付け加えるように言葉を発する。
「ライルさんの体力は私たちの中で、ダントツですわ」
水晶玉を見つめながらメシアさんが言った。…あの水晶玉ってそんな機能までついてるんですね…。
「なんだか、皆さん色々な特技があってすごいですね。ボクなんてなんにも出来ないですよ」
溜め息まじりに言えば、ライルが真剣な顔をしてボクの肩を掴んだ。余りにも真剣な瞳に、ボクは唾を飲み込む。
「アスカもすんげー特技!あるじゃねぇーかっ!」
「え?ボクに?……あったっけ…?」
今まで生きてきた中での経緯をボクは頭の中で巡らせる。けれども皆のように凄い特技があるとは思えない。ボクはわからず、ライルに瞳を向けた。
「ほら、今、使ってんだろ?アスカの特技を…」
い、今使ってる?え?ボク特技使ってんの!?本当に解らず、ボクはライルに聞いた。
「ねぇ?ボクの特技って何?」
ボクの問いかけに、はりきって答えるライル。
「相手を魅了するなんて、最大の特技じゃねぇーかっ!!」
洞窟の中、ライルの言葉が木霊した。
み……魅了………。
ボクが呆然とその場に立ち尽くしていると、ライルは真っ赤な顔をしながらボクから顔を逸らす。
「その濡れたような瞳、ふっくらとした唇、桃のように染まった頬、何もかも!魅了するなんてすっげー特技だろ!」
ライルの言葉に、ボクは怖い!の一言につきる。
「ねぇ?!それって特技?!特技なの!?絶対に違うと思うよ!それに、ボクはそんな特技いらないし!」
「何言ってやがるんだ!?立派な特技じゃねぇーかっ!」
「絶対!特技なんて認めないよ!!」
ボクとライルが大声を出しながら言い争っていると、レイラさんとメシアさんが話しかけてくる。
「お話しているところで、恐縮なのですが」
「また、モンスターに囲まれてるわよ?」
二人の言葉に、ボクらは周りをみると………。
「ぐるるるるっ」
………言った通り、モンスターに囲まれていた。もちろん、ボクらは………。
「逃げましょう!!」
こんだけのモンスターにはかないっこないので、全力で逃げ出した。あーあ、またこんな所で終わるんだ……。そんな考えをしながら、ボクらは走り続けた。
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