第9話 暗闇って言ったらやっぱアレなんだね?やる人…いるんだ…
薄暗い洞窟の中、とある二人の会話。
「アスカ…」
「……何?」
妙に真剣な声を出すライル。ボクは間を少し置いてから答えた。
「アスカ、怖かったらオレの手を握ってていいからなっ?」
ボクはライルのその言葉に、はっきりと答える。
「ライル、君がボクの手に掴まってんだけど?」
薄暗い洞窟の中、ライルはボクの手をギュウギュウ握りながら言った。言葉と行動が伴っていないライル。
「あら、ライル。あんた怖いの?」
ボクらの前を歩いていたレイラさんが、意地悪そうな笑みを浮かべてライルに言った。ああ……、挑発しないで下さい。
「こ、怖かねぇーよ!アスカが怖がってんだ!」
案の定、誘いに乗ったライル。そしてなんでボクの所為にするかな?間違ってるし…。
「…ライル、そんなこと言うならボクの手を離して」
ボクが手を振り払おうとすると、ガシッとばかりに手を握られる。ライルの方に顔を向けると、涙目になりながら必死になってボクの手を掴んでいた。
「嫌だ!オレはアスカと手を繋いでいたい!アスカの、アスカの温もりを感じていたいんだ――――――っ!!」
「はぁ!?温もりって……なんか気持ち悪いよ!」
大の大人が涙を流しながら、ボクの手を必死になって握る構図にボクの方こそ涙を流したくなった。ライルは怖くてボクの手を握っているのか、それともただ、たんにボクの手を握りたいから怖い素振りを見せているのか。それすらもうどうでも良くて。ただ、コレだけは確実に言える……。
「離せってば!ライル!!」
ぶんぶん狭い洞窟の中で手を振るが、一向に離す素振りを見せない。
「ほんと、笑えるわ~!」
ボクらのやり取りを見て、レイラさんが大笑い。
「笑うんじゃねぇーよ!」
ボクの手を握りながらレイラさんにつっかかっても、説得力ないよ!
「皆さん、落ち着きましょう」
そんな時、メシアさんの静止の声。ボクらは声のした方を振り返りながら……悲鳴を上げた。
「メ、メシアさ……わ――――――――――――――――っ!!」
「ど、どうしたアス……おわ――――――――――――――っ!!」
「な、なに?そんな手に……きゃ―――――――――――――っ!!」
先程まで黙っていたメシアさんがボクらに声をかける。しかもただ、声をかけただけではなく…。メシアさんの登場の仕方に、ボクらは悲鳴を上げた。
よく、あるよね?
薄暗い闇の中で、懐中電灯を顔に当てて脅かす奴。一人はいると思うんだ。で、それをやったのがメシアさん。何処から取り出したのか、懐中電灯を自分の顔に向けてボクらにゆっくりと歩み寄って来ながら言う。
「皆さん、落ち着きましょう。モンスターが気づいてしまいますわ」
「きゃーきゃー!!」
懐中電灯に光を当てた状態で、レイラさんに落ち着くよう言う。しかし、未だレイラさんは悲鳴を上げつづける。
「ライルさんも、落ち着きましょう」
「わーわー!よ、寄るんじゃねぇー!悪霊!!」
うわ…それは言い過ぎだって……。
「アスカさん私、何か変でしょうか?」
「……うん、思いっきり。とりあえず、懐中電灯を顔に当てるのは止めて地面に当てましょう」
ボクの言葉に素直に応じたメシアさんが、顔から懐中電灯を退けて地面に当てる。
「皆さんも、もう大丈夫ですから…」
とりあえず、ボクはライルとレイラさんを落ち着かせる事に専念した。暫くたって、どうにか落ち着きを取り戻した二人。
「それで、どうしましょうか?コレだけの暗闇だったら、モンスターの居場所も解らないと思うんですけど」
懐中電灯を真ん中に置き、それを囲うような形でボクらは地面に座って緊急会議をしだした。まさかコレほどまでに暗いとは思わなくて……。松明、買っておけば良かったな…。
「オレ、ライトアップの魔法使えるぜ」
そんな時、ライルの言葉。その言葉に、ボクはライルの方に顔を向けた。
「つ、使えるの?」
「おお、使えるぜ。なんせ盗賊だからな。どんな暗闇でも対処出来るように師匠に習ったんだよ」
そう言ったライルに、レイラさんの鉄拳がライルの頭にヒットした。
「いっ!!な、何すんだよ!」
「何すんだよ!じゃないわよ!使えるなら最初から使いなさいよ!」
た、確かに…。なんで使わなかったんだろう。ボクが疑問に思っていると、ライルの言葉によって直ぐ解消される。
「暗闇だったら、アスカと手が繋げるかもしれないだろ!案の定、繋げたしな!」
爽やかな笑顔で答えたライル。
ボクは思いっきり呆れた。
レイラさんも呆れ顔。
「もう、なんでもいいや…。ライル、魔法を唱えてよ」
「おう!任せとけって!」
立ち上がったライルが、ライトアップの魔法を唱えると光に包まれた洞窟内部が見た………と思ったら………。
「………モンスターに囲まれていますわね?どういたしますか?アスカさん」
暗闇から一変して光が伴った洞窟。そしてその光によって見たくないモンスターの群れが見えてしまったボクら。
とりあえず、ここは……。
「逃げましょう!!」
ボクの声が引き金になって、皆が走り出した。
ほんと、散々だよ!!
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