「また会いに来たよ」

～if～ 愛娘へ

　拝啓、木々の緑、日ごとに色めく季節となりました。お元気でしょうか。

　お手紙ありがとう。僕は元気にやっているよ。

　まずは卒業おめでとう。高校生活はどうでしたか？　楽しかった？

　春は本当に大きくなったね。宣言してる時の立ち姿は立派だったよ。凛々しい姿はお母さん譲りかな？　少し勝気なところも二人共似ていて可愛いなって思います(なんて言ってるのがバレたら葉菜には怒られそうだけれども)。

　高校といえば、僕は卒業が危うくて色んな人に助けてもらったな。予備校に合格報告に行ったときに葉菜にも怒られたな(笑)懐かしい。もうあれから何年だ……30年近いのか。そりゃあ葉菜の顔に皺も増えるわけだ。あ、怒られたくないからこれは言わないでね。秘密ってことにしといて。

　さて、高校を卒業してこれから春は背負わなければならない事が増えていきます。責任だとかそういうね。まだあと２年の間は学生ではあるけれど今までみたいに守ってはもらえないよ。だからいくつか僕と約束をして欲しいことがあります。

　一つ目。きっと優しい春のことだから友達は沢山いるんだろう。高校で出来た友達、進学先でこれから出来る友達。ちゃんと大切にしてください。彼氏とばっかり遊んで友達を蔑ろにしてはいけないよ。一生の友達もきっと今仲良くしている人の中にいるかもしれないから。友達を大切に出来ないやつは愛する人も大切には出来ません。なので大切にしてください。

　二つ目。やらない後悔をするくらいならやった後悔してください。僕はやりたかったけど出来なかったことが沢山あります。どうせならやってから後悔すれば良かったなぁって思うんだ。春にはそんな思いはしてほしくないんだな。約束だよ。

　三つ目。さみしがり屋なお母さんの為に少しは実家に帰ってくること。きっと成人して就職したら一人暮らししたり彼氏と同居したりするんじゃないかな。そうするとあの大きな家に葉菜は一人だ。普段強がってるけどああ見えてかなりさみしがり屋なんだよ。なんだかんだ春がいないと泣いてたりするからね。休みの度に帰ってこいとは言わないけど少なくとも半年に一回くらい帰ってあげて欲しい。

　四つ目。自分の信念を貫くこと。時には柔軟な思考も大切だけれど、自分を支えている根の部分はブレちゃいけない。ちゃんとやりたい事をやる為に自分の中で大切に思うことを第一にすること。

　五つ目。僕より長く生きること。これは絶対。早死にしようだなんて考えるんじゃないよ。きっと大変な職業だろうし沢山ストレスを抱えるだろう。だからって早くに死んでしまえばやりたいことも出来ないうちに人生が終わってしまう。やらない後悔が増えてしまうよ。娘の泣き顔はあまり見たくない。勿論葉菜の泣き顔もあまり見たくないけれども。

　僕は家族には笑っていてほしい。二人の笑顔を見ることが僕の幸せです。いつかきっとまた会えると思っています。なのでその時に僕に楽しかったことを沢山語れるように準備していてください。ずっと笑顔になれるような、そんな幸せを掴んでください。

　遠くから見守ってるから安心してください。いつか会えることを楽しみにしています、まだしばらくは来ちゃ駄目だよ。これも約束かな(笑)

　ではお元気で。君たちの人生に幸あれ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　敬具

　　　　　　　　　　　　　　　浅井（あさい） 青空（はるたか）